師走の新橋演舞場を絢爛に彩る新作歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』が話題です。モンキー・パンチ氏による「ルパン三世」シリーズを原作に、片岡愛之助さん演ずる怪盗ルパン三世とその仲間たちが秘宝を巡ってしのぎを削り合う痛快なオリジナル作品。本作で石川五右衛門を演じる尾上松也さんへのインタビュー3回目の今回は、松也さんの素顔に迫るQ&Aを一問一答形式でお届けいたします!

歌舞伎俳優の尾上松也さん
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尾上松也さん
(おのえ・まつや)1985年、東京都出身。屋号は音羽屋。5歳で父・六代目尾上松助の襲名披露にて、二代目尾上松也として『伽羅先代荻』の鶴千代役で初舞台を踏む。以降、古典歌舞伎の舞台出演を重ねながら2009年より歌舞伎自主公演『挑む』を主宰。歌舞伎以外にも映画、ドラマ、ミュージカル、吹き替えなど幅広く活躍。2019年には山崎育三郎さん、城田優さんとのプロジェクトIMY(あいまい)を結成する。2023年は『新春浅草歌舞伎』、歌舞伎座新開場十周年『團菊祭五月大歌舞伎』公演など古典歌舞伎の舞台に立つほか、月9ドラマ『女神の教室』に出演、映画『Gメン』、『ミステリと言う勿れ』が公開、9年ぶりの出演となったミュージカル『スリル・ミー』にも出演と精力的に活動。新作歌舞伎は『ファイナルファンタジーX』、『刀剣乱舞-月刀剣縁桐-』に続いて今年3作品目の『流白浪燦星(ルパン三世)』が12月5日より上演される。

■これまでの記事を読む
【歌舞伎俳優・尾上松也さん インタビューVol.1】“愛之助ルパン”とともに新作歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』で石川五右衛門役に挑む
【歌舞伎俳優・尾上松也さん インタビューVol.2】新作歌舞伎も古典歌舞伎も、お客さまの期待に応える自由度の高いエンターテインメント


思えば新作歌舞伎づいていた1年でした」尾上松也さん

――今年は古典歌舞伎や新作歌舞伎に加えて、ドラマや映画の公開、ミュージカルや演劇出演など非常にアクティブに活躍されてきました。振り返ってみて、ぱっといちばんに思い浮かぶ印象的な出来事があったら教えてください。

「やはり、自分にとって今年いちばんのチャレンジであった新作歌舞伎『刀剣乱舞-月刀剣縁桐-』ですね。初めて自分から提案した企画で演出・主演をさせていただいたことだけでも大きな出来事でした。それに加えて“刀剣乱舞”という人気コンテンツを扱うことに対するプレッシャー。実際にフタを開けてみたときの刀剣ファンの方々からの注目度は想像以上のものがありましたので、大きなやりがいとプレッシャーを同時に感じながらやらせていただきました。構想から数えると2年くらい時間をかけた舞台でしたのでなおさらです」

――じっくり時間をかけて制作されたのですね。

「ええ。話し合いも含めて段階を踏みながら何度も企画会議やお稽古を重ねて公演までたどりつきました。そういう意味でも感慨深いですし、企画・演出となれば脚本から何から何まで考えなくてはいけませんから、たくさんの未知の経験もさせていただいた非常に有意義な時間となりました。今自分にできることはすべてやれたかなと思いますが、まだまだ課題もありましたし思うこともたくさんありました。この経験を今後に活かしていきたいですね。

歌舞伎俳優の尾上松也さん
「今年いちばんのチャレンジだったのは新作歌舞伎『刀剣乱舞-月刀剣縁桐-』」(尾上さん)

 また、今年は1月の新春浅草歌舞伎もようやく浅草で公演することができて、いいスタートをきれたこともうれしかったです。さらに春は『ファイナルファンタジーX』、夏は『刀剣乱舞-月刀剣縁桐-』、最後にまたこうして新作歌舞伎の『流白浪燦星』に出演させていただけて。思えば新作歌舞伎づいていた1年でした」

――年間3本という年はなかなかないかもしれないですね。来年はどのような年にしたいですか?

「そうですねえ。年ごとに何か決めているわけではありませんので、これまでずっとやってきたことを来年も変わらず、それぞれの仕事でベストを尽くして成果を出すことを目指す。それを続けていくだけです」

「今日は家に帰ったら、部屋の片付けをしようと思っています」尾上松也さん

――ハードな日々の中で成果を出すためにはメンタルやフィジカルの管理も大切になると思うのですが、松也さんはふだんどのようなことを心がけておられるのでしょう。

「特に何もないですね。1日の過ごし方も自分が思うまま、何か特別なルーティンをつくったりはしないんです。強制されることがあまり好きではないので、そのときの気分やふっと浮かんだことを大切にしながら、自分がベストだと感じられる何かを見つけられればいいかなと。僕はそういうタイプなんです。普通に生活していればストレスが何もないことはないのですけれども、わざわざよけいなことを感じる必要はないかなと捉えています。神経質に考えすぎずに、自分のペースでゆる〜くやっていくのがいいですね」

――ちなみに今日のお仕事がすべて終わったら、何かされたいことはありますか?

「今日は仕事が終わったら、家に帰って片付けをしたいなぁと思っています。今公演中の舞台がなかなかにハードでして、帰宅すると疲れでぐったりして何もできないほどなのです。ですがこのところでだいぶ慣れて余裕ができてきたので、今日はしっかりきれいに整理整頓したいと思っています」

歌舞伎俳優の尾上松也さん
「神経質に考えすぎずに、自分のペースでゆる〜くやっていくのがいい」(尾上さん)

――環境を整えることで心が整理されたり、リフレッシュにもなりますよね。では最後に、これまでさまざまなお仕事をされる中で培われてきた松也さんが、大切にされていることをぜひ教えてください。

「そうですね…(少し考えてから)、“楽しいと思うこと”でしょうか。特に仕事に関しては、そうですね。そもそも人よりも“気持ちがしっかり入る”までに時間がかかる人間なので、自分のモチベーションを上げるためにも、仕事自体に興味があったり楽しめる環境であることが重要なのです。
とはいえ、もちろん若いうちは自分の好みだけで選ぶわけにはいきませんし、成果を出したり積まなければいけないこともたくさん経験してきました。しかし年があけたら39歳と四十代手前になりますので、自分が今やりたいこと、今やれることを、どう積極的にやっていくのかということが大切な時期になってきているかなと思っています。

“楽しさ”にもいろいろありまして、たとえば舞台でもなんでもいいのですが、僕が先頭に立ち中心になって進める仕事の場合はなるべく、一緒にやってくださる方も含めて“楽しんでやっていく”のがベストだと思っています。それはどのような現場でも変わらず、そうでありたいな、そうであってほしいなというふうに常に願っております」

歌舞伎俳優の尾上松也さん
「一緒にやってくださる方も含めて“楽しんでやっていく”のがベスト」(尾上さん)
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この日、公演終わりのお疲れの時間帯に集中して行われた取材撮影であったにもかかわらず、ときにユーモアを交えながら語ってくださった松也さん。“今日の仕事が終わったらしたいこと”という質問に対して、ふっと表情をやわらげながら“片付けをしたい”とお話しされたストイックさに心動かされた取材班でした。新橋演舞場で繰り広げられる華麗なるルパンと仲間たちの物語、そして松也さんの石川五右衛門にぜひご期待ください!


■新作歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』が新橋演舞場にやってくる!

2023年12月5日(火)初日~25日(月)千穐楽

■あらすじ
時は安土桃山時代。怪盗・ルパン三世とその仲間の次元大介は“卑弥呼の金印”という国宝級のお宝を狙っています。金印の封印を解くには雄龍丸と雌龍丸という 2 本の宝剣が必要で、金印と宝剣が揃った暁には世を統べる力を手にできると伝えられています。しかし雌龍丸は大盗賊として名を轟かせる石川五右衛門の手の中。五右衛門も同じく卑弥呼の金印を狙っていたのでした。 ルパンが惚れる峰不二子も何か事情を知る様子。さらに天下をおさめる真柴久吉も金印を探しているようで、ルパンの因縁のライバル・銭形警部もルパンと五右衛門らを追っています。
ひとつのお宝を巡る争いの結末は――?

■配役
ルパン三世 片岡 愛之助
石川五右衛門 尾上 松也
次元大介 市川 笑三郎
峰不二子 市川 笑也
銭形刑部 市川 中車
傾城糸星/伊都之大王 尾上 右近
長須登美衛門 中村 鷹之資
牢名主九十三郎 市川 寿猿
唐句麗屋銀座衛門 市川 猿弥
真柴久吉 坂東 彌十郎

■スタッフ
モンキー・パンチ 原作「ルパン三世」より
戸部和久 脚本・演出
大野雄二 作曲(オリジナルテーマ)
藤間勘十郎 振付
山中隆成 美術
多賀正記 照明
苫舟 編曲監修
鶴澤慎治 竹本作曲
杵屋栄十郎 附師
田中傳次郎 作調
湯浅典幸 音響
富永美夏 衣裳
下柳田龍太郎 舞台監督

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椎名宣光
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WRITING :
谷畑まゆみ