「負けず嫌い」は、ほかの人に負けたくない勝ち気な人を指す言葉です。前向きな性格と言えますが、「あなたって負けず嫌いだよね」って言われたらどうでしょう。素直に嬉しいですか? それともちょっと皮肉に感じる? 実際、「彼女って負けず嫌いだから…」という会話には悪口ニュアンスがあるかもしれません。ということで、今回はじっくり考えると疑問がいっぱいな「負けず嫌い」というフレーズについて解説します。
【目次】
- 「負けず嫌い」の「ず」って?基礎知識
- 「負けず嫌い」な人の特徴
- 「負けず嫌い」というフレーズはどう使う?「例文」3選
- ビジネス会話での「言い換え」表現
- 「負けず嫌い」の「対義語」
- 「英語」で言うとどうなる?
【「負けず嫌い」の「ず」って?基礎知識】
■意味
改めて「負けず嫌い」という形容動詞を『日本国語大辞典』(小学館)で引いてみると、「他人に負けることを特にきらう勝ち気な性格。また、そのさまやそのような人。負けぎらい。」とあります。
■負けずの「ず」は否定?肯定?
「負けず」の「ず」は打ち消しの意味を表す助詞です。「負けず」を本来の意味で捉えると「負けを打ち消す」ので「負けない」ということになり、「負けず嫌い」は「負けないのが嫌い=負けるのが好き」と、真逆の意味になってしまいます。
『日本国語大辞典』には【「負け嫌い」「負けじ魂」などの混態か】という記載もあります。「負けじ魂」は、「他人に負けてはならないと奮い立つ精神」のことなので、これと混同して定着した可能性はありそうですね。ほかに、「負けず」の「ず」は、「否定の強調から挿入されたもの」という説もあります。いずれにしても、とにかく「負けたくない」という気持ちが強いということですね。
【「負けず嫌い」な人の特徴】
負けず嫌いの最大の特徴は、「勝ち負けにこだわる」ということでしょう。スポーツやゲームなどの勝敗や順位を競うことだけでなく、常に「他者より優れていたい」という気持ちが強いのです。これは仕事のシーンではプラスにはたらくこともありますが、行きすぎた「負けず嫌い」はNG! 競争することや、人より優位に立つことが目的になってしまうのは本末転倒です。それを踏まえて「負けず嫌い」の長所と短所を挙げてみましょう。
■「負けず嫌い」の長所
・向上心があって努力家
・諦めないで努力を続ける
・瞬発力がある
・危機管理能力やリスク回避能力に優れる
・積極的、強気
■「負けず嫌い」の短所
・プライドが高い、虚栄心が強い
・マウントを取りたがる
・協調性に欠ける
・人のアドバイスを受け入れにくい
・しつこい
・言い訳がましい
【「負けず嫌い」というフレーズはどう使う?「例文」3選】
■1:「今回のプレゼンでは、彼女の負けず嫌いな性格が功を奏した」
■2:「負けず嫌いもほどほどにしないと、チームワークを乱すことになるよ」
■3:「彼のような負けず嫌いは、同僚や先輩には煙たがられる存在だ」
【ビジネス会話での「言い換え」表現】
「負けず嫌い」な性格を自己PRなどで示す場合は相手に長所として捉えてもらわなくてはいけません。また、他の人を「負けず嫌い」と指摘した場合、悪口を言っているように思われては不本意です。ですから、ストレートに「私は負けず嫌いです」「あの人って負けず嫌いですよね」と言うより、別の言い方でアピールしたほうがベター。では、取引先やビジネスパートナーとの会話では、「負けず嫌い」な人をどう表現するのが適切でしょう。
■自己PRにも使える!「負けず嫌い」を長所として捉える場合の言い換え
・向上心がある
・努力家
・粘り強い
■「負けず嫌い」を短所として捉える場合の言い換え
・不遜
・自信家
・勝ち気
・負けん気が強い
・生意気
【「負けず嫌い」の対義語】
・勝ち負けにこだわらない
・無欲
・マイペース
「負けるが勝ち」と思っている人も、「負けず嫌い」な人とは正反対の性格かもしれませんね。
【「英語」で言うとどうなる?】
競争心旺盛な人を[competitive]と形容するので、「負けず嫌い」の英訳にも使えます。また、「甘んじる」や「満足する」は[content]なので、[not content]や[never content]、また[hate losing]も「負けず嫌い」を表します。
・She is never content.(彼女は負けず嫌いだ)
・I hate losing.(私は負けず嫌いです)
・I like winning.(私は勝つのが好きです。→負けず嫌いです)
***
「負けず嫌い」な人は、その性格をエネルギーに変えて努力できる人です。しかし、協調性がないと敬遠されることもあるので、「負けず嫌い」を自覚している人は周囲への配慮も忘れないよう心掛けましょう。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『心理学的に正しい! 人に必ず好かれる言葉づかいの図鑑』(宝島社)/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :