『Precious』本誌をはじめ、テレビや広告など幅広く活躍する人気スタイリストの犬走比佐乃さんに、大人の女性に必要なファッションについて教えていただく連載。

今回は、犬走さんが今シーズンの立ち上がり時期、早々に購入したというフェイバリットアイテム、「コム デ ギャルソン」のジャケットにフォーカス! スタイリストとしてキャリアを重ねた今、犬走さんを惹きつけるこのブランドとの蜜月関係を、ジャケットとそのコーディネートを通して語っていただきましょう。

犬走比佐乃さん
スタイリスト
(いぬばしり ひさの)『Precious』本誌をはじめとする数々の女性誌、テレビ、広告など多彩な分野で活躍。女優のスタイリングも手がけ、「マダム犬走」の愛称で多くのファンをもつ。30年以上を誇るキャリアと卓越した審美眼でセレクト&スタイリングする自身の着こなしも注目されている。

無難なクラシカルに終わらない、絶妙な「ひとクセ」加減にひと目惚れ

「コム デ ギャルソン」は、この連載でも過去に取り上げたことがある犬走さんのお気に入りブランド。出合いはDCブランド全盛期にさかのぼります。

【関連記事:人気スタイリストが自分の誕生日に“つい買ってしまう”ブランドは…!? 「コム デ ギャルソン」の色褪せない魅力とは】

「当時、私の憧れのスタイリストだった原由美子さんなどを真似たくて、無理して買っていた記憶があります。その後、好みがシンプル方向に移行したので、しばらく距離があったのですが、大体のものは着尽くした感がある今、ちょっとクセのある"ギャルソン”ならではの個性的なデザインが再び気になる存在になりました」(犬走さん)

ポイントは、「ちょっとクセのある」デザインの「ちょっと」の加減。

「これくらいのひとクセなら着こなせるなと、自分に似合うものが見極められるようになったのも、回帰した理由のひとつだと思います」(犬走さん)

近年では毎年、何かしらのアイテムを購入するほど近しいブランドになった「コム デ ギャルソン」。そんな犬走さんの最新アイテムが、クラシカルな雰囲気のなかにも随所にデザインが効いた、このブラックのジャケットです。

ジャケット_1
どこか昔の「ディオール」の雰囲気も彷彿させるテーラードジャケットは、伊勢丹 新宿店で今年の8月に購入。

「胸元に斜めに入ったタックがさりげない女性らしさを演出している点や、ペプラム風のあしらいになっているポケットにも遊びがあって、よく考えられたデザインですよね。また、素材がポリエステルなのでシワになりにくく、きちんと感があるので、オールシーズン着られそうです」(犬走さん)

犬走さんのハートをつかんだこのジャケット、どのような着こなしで楽しんでいるのでしょうか? 異なるイメージの2ルックをお見せいただきましょう!

■1:クラシカルなテイストにモダンな要素を忍ばせたスカートスタイル

全身で緩やかに描かれるXのシルエットが、程よい色香を漂わせるブラックのワントーンコーディネートは、ジャケットと並びスカートがW主演を演じています。

ジャケット_2,スカート_1,ブーツ_1
ニットウェアブランド「CFCL」のスカートに、足元はシンプルなブラックのブーティですっきりとまとめて。

「CFCL」は、「イッセイ ミヤケ メン」のデザイナーを務めていた高橋悠介さんが、2020年に立ち上げたブランドで、サステイナブルな服づくりに取り組んでいる点でも注目しているそう。

「このジャケットと合わせるとレディライクなムードに仕上がるけれど、実はニットなのに構築的なシルエットというのが特徴で、ひと言でいえばとてもモダンなアイテム。ウエストに伸縮性があって着丈を微調整することもできるので、コーディネートしやすいのも魅力なんですよ」(犬走さん)

胸元には「サイモン・アルカンタラ」のチョーカーをあしらって、ちょっとモードで辛口なスカートスタイルを完成させます。

■2:あえて「ブルネロ クチネリ」のパンツでミックスマッチを楽しむ!

ジャケット本来のクラシカルなイメージと相反する、チャコールグレーのパンツとのミックスマッチを楽しむ、いかにも犬走さんらしい上級パンツコーディネート。ジャケットとパンツ、それぞれが個性を引き立てながら調和し、洗練のバランスを構築します。

ジャケット_3,パンツ_1,Tシャツ_1
少し霜降りになったチャコールグレーのパンツは、先日ジャケットと合わせて購入した「ブルネロ クチネリ」のもの。

インはカジュアルな黒Tで、首元には犬走さん定番のスカーフをプラス。少し厚底の「プラダ」のシューズで重さを加えることで、いっそう旬の雰囲気が高まります。

「もちろん同じ『コム デ ギャルソン』のパンツとの相性がいいのは間違いないけれど、そうすると“いかにもギャルソン”というコーディネートになってしまうので、それじゃちょっとつまらない。あえて違うブランドをセレクトしてひとひねり加えるのも、おしゃれの醍醐味ではないでしょうか」(犬走さん)


若い頃憧れた「コム デ ギャルソン」と歳月を経て邂逅し、今、インポートブランドとはまた違うその魅力に開眼した犬走さん。

「これからまた年齢を重ねていって、"ギャルソン”のような少しアバンギャルドな服を着て人生を楽しむおばあちゃんになれたら素敵だなと思うようになりました」(犬走さん)

シンプルで無難なだけに終わらないアイテムを思い切って取り入れて、2024年からまた新しいおしゃれ道を切り拓いてみませんか。

※私物に関する各ブランドへのお問い合わせはご遠慮ください。

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PHOTO :
田中麻衣(小学館)
WRITING :
岡村佳代
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)