金彩の美しいドラえもんデザインのカップ&ソーサー
18世紀初頭、ドイツのザクセン選帝侯アウグスト強王が、東洋の白い磁器に憧れ、欧州初の磁器工房として設立したのが、名実共に西洋磁器の最高峰とされる「マイセン」です。マイセン磁器は、当時の日本の有田焼からも影響を受け、「柿右衛門様式」という日本的なモチーフも生み出しました。19世紀後半に起きたジャポニスムの嚆矢とも言われています。
300年以上にわたり、伝統の職人技による制作を守り続けている「マイセン」が、今年、日本の国民的キャラクターである「ドラえもん」のデザインされたテーブルウェアを発表しました。その第二弾として「ドラえもん」の作者、藤子・F・不二雄先生の生誕90周年を記念し作られたカップ&ソーサー「宮廷の小花/ドラえもん」がこの12月に発売されました。
マイセンと言えば、菊・梅・牡丹・蓮などを意匠化した吉祥紋様「ブルーオニオン」が有名ですが、この「宮廷の小花」は19世紀半ばに誕生した様々な色の花々を描いた美しい伝統の紋様。可憐な小花の絵柄とともに、カップには3種類、ソーサーには4種類の異なるドラえもんの顔が描かれています。
ドラえもんが磁器に描かれ作品となる工程を、かつてのザクセン王国の旧都ドレスデン近郊のマイセンにある、国立マイセン磁器製作所に訪ねました。このマイセンの旧市街に立つ「アルブレヒト城」で、1709年、最初のマイセン磁器が、当時の錬金術師により誕生しました。
マイセンの金彩技法はすでに18世紀初めに誕生していましたが、つや消しの金と輝きのある金を組み合わせたこの装飾は、19世紀中頃に誕生したもの。マイセンは、数十にも及ぶ工程のすべてが職人による手作業で、繊細な絵付もむろん手描きです。
ドラえもんの絵付を担当する、絵付職人のラウラ・ノイハンさんは、こう話してくださいました。
「ドイツ語で『ドラえもん』を読み、映画も見ました。のび太がドラえもんに頼りながらも、最後は自分で問題を解決する物語からは、世の中を学ぶような深みに感動しました。『ドラえもん』を読んだ時の楽しい記憶を、この器でお茶を飲みながら思い出していただけたら嬉しいです」
マイセン磁器製作所には、誰もが訪れることができるビジターズセンターがあります。直営ショップ、絵付などの見学コースや体験コース、ミュージアム、カフェ・レストランなどが併設され、世界中の磁器愛好家の人々が訪れています。
マイセン市に隣接するドレスデンは、ザクセン州の古都。「エルベ川の真珠」と呼ばれるエルベ河畔を望む美しい旧市街は、バロック建築の傑作が立ち並び、陶磁器を始めとする美術や工芸、名作曲家ウェーバーが活躍したオペラ座など、文化の都としても有名です。
中でも、「ツヴィンガー宮殿」は、ドレスデンを象徴するバロック様式建築の最高峰です。1732年にアウグスト強王によって建てられた絢爛豪華な宮殿には、陶磁器コレクションなど4つの美術館と博物館があります。アウグスト強王が莫大な資金をかけて蒐集した東洋の磁器は、世界最大、最高レベルのコレクションを誇ります。マイセン磁器の歴史的傑作はもちろん、日本から運ばれた「柿右衛門」など伊万里焼の名品も素晴らしいものです。マイセンとドレスデンを巡る、「磁器の旅」に出られてはいかがでしょうか。
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
取材協力/ドイツ政府観光局
- TEXT :
- Precious.jp編集部