「前向きに検討」とは、積極的かつ建設的に検討するということで、ビジネスシーンではとてもよく使われるフレーズです。ただし、言葉通りの意味だけでなく、「その場をやり過ごす」「断る前のワンクッション」といった用途でも使われるところがミソ! 今回は、この「前向きに検討」を解説します。

【目次】

「前向きに検討します」は曖昧フレーズ?
「前向きに検討します」は曖昧フレーズ?

【「前向きに検討」とはどういう意味?】

「前向き」は、物事に対する姿勢が積極的、建設的である状態のこと。「前向きに考える」「前向きな態度」といった風に使います。「検討」は、よく調べ考えること、多角的に調べて良いか悪いかを考えること。「検討を重ねる」「検討の余地がある」「問題点を検討する」などと使いますね。この二語による「前向きに検討」は「即答はできないが、積極的・建設的に考えて判断する」ということ。ポジティブに捉えれば「検討の余地がある」ということですが、「返答を先延ばし、保留にしている」というややネガティブな要素を含む場合も。プレゼンなど提案事項に対して「前向きに検討いたします」と言われたら、やきもきしますが、手をこまねいていても無駄な時間が過ぎるだけ。NGだった場合の次の手を準備するとか、ほかの業務に邁進するのが正解でしょう。


【「使い方」がわかる「例文」6選】

■1:「大変魅力的なご提案です。前向きに検討いたしますので、少々お時間をいただければと思います」

■2:「本日はありがとうございました。前向きに検討させていただきますので、担当者からの連絡をお待ちください」

■3:「前向きに検討した結果、採用を決定いたしました」

■4:「前向きに検討していただいたにもかかわらず、貴殿のご要望に沿うご提案ができず、大変申し訳なく思っております」

■5:「前向きに検討していただいたうえでの結果なら、力不足だったということだ」

■6:「前向きに検討させていただきましたが、今回はご縁がなかったということで…」


【「前向きに検討」を「敬語」にすると?】

「前向きに検討」する側もしてもらう側も、適切な敬語表現はどのようになるでしょうか。

■「前向きに検討」をお願いする立場の敬語

・前向きにご検討くださいますよう、何卒よろしくお願いいたします。

・前向きにご検討いただけますよう、切にお願い申し上げます。

・何卒前向きにご検討いただけますと幸いに存じます。

■「前向きに検討」をする立場の敬語

・前向きに検討させていただきます。

・前向きにご検討申し上げます。


【ビジネスシーンでの「言い換え」表現】

便利に使える「前向きに検討」ですが、ビジネスシーンではこんな言い換えも。一辺倒ではなく、状況に応じて使い分けてみてください。

■できるだけご要望に沿えるよう頑張ります。

「できるだけ」とは「できる範囲で」「できる限りで」という意味。日本人的な発想表現といえるかもしれません。しかも「要望を叶える」ではなく「沿う」よう頑張るとは…。よく考えると、かなり頼りないフレーズですね。

■善処いたします。

「善処」とは適切に処置すること。「あなたの意見を呑みます」とも「吞みません」とも言わず、どちらにとって適切なのかも曖昧な「善処」も便利な言葉です。

■貴重なご意見ありがとうございます。

陳情やクレームに対して、その場を終わらせるフレーズとしてよく使われます。「今後の参考にさせていただきます」なども同様です。


【「返信メール」はこう書くと好印象!】

「前向きに検討いたします」という内容のメールが届いた際の返信は、どんな言葉が好印象でしょうか。「前向き」に対しても「検討」に対しても礼を尽くしたいところですが、へりくだりすぎる必要はありません。たとえば、「お手数をおかけいたしますが、ご検討のほどよろしくお願いいたします」や「お手間をおかけして恐縮です。よいお返事をお待ちしております」くらいでよいのでは? メールの過剰反応は、相手にとってウザい場合もあるのです。便利なコミュニケーションツールの利用は“ほどほど”が大人の心得です。


【「英語」で「前向きに検討」はどう使う】

「前向きに検討」を英語でいうと、[think positively][try to be constructive]が当てはまるでしょう。ビジネスシーンでは下記の例文が使えそうですね。

・We will consider it in a positive light.(前向きに検討いたします)

・Please try to be constructive when considering this matter.(本件、どうぞ前向きにご検討ください)

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「前向きに検討」は、返答を避けたい、先延ばしにしたい、曖昧にしたいなどという場合にも使える便利な“逃げフレーズ”という側面も。“逃げ”ではなく誠心誠意込めて検討する際に、堂々と使いたいものですね!

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『大人の語彙力大全』(KADOKAWA)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店)/『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) :