【ART】東京都庭園美術館で20世紀にタイムスリップ!『旧朝香宮家を読み解く』展で贅沢な時間を
皇族(当時)・朝香宮家の邸宅として1933(昭和8)年に竣工し、現在では建物自体が国の重要文化財となっている白金台の東京都庭園美術館の「素顔」を惜しげもなく公開。美術好き、アール・デコ好き、建築好き、ガーデン好きを魅了する展覧会について、美術ライターの浦島茂世さんにご紹介いただきました。
【今月のオススメ】東京都庭園美術館 開館40周年記念 『旧朝香宮邸を読み解く A to Z』
「美術館に行く」というとき、その目的はたいてい、展示されている “作品” を鑑賞することにあります。しかし、この展覧会で楽しむのは、かつて皇族・朝香宮家が暮らした旧朝香宮邸、東京都庭園美術館本館の建物そのもの。いってみれば「お宅拝見」ですね。
竣工は1933(昭和8)年。朝香宮鳩彦王夫妻が’20年代にパリに長期滞在した際、当時大流行していたアール・デコに魅了され、帰国後、たいへんこだわってつくられたそうです。お客様をお迎えするための1階は、アール・デコの巨匠アンリ・ラパンの設計。家族の居室などプライベートな空間である2階は、皇室建築を担当する宮内省内匠寮が手掛けました。日仏の趣の違いにも興味をそそられます。
美術館開館40周年を記念した今回の展覧会では、「可能な限り素のままの旧朝香宮邸をお見せします!」と、ふだんは見られない場所を公開。特に見逃せないのは「床」! 通常カーペット貼りのところも一部剥がして見せてくれる、またとない機会です。本館3階の温室「ウインターガーデン」ほか、いつもは非公開のお部屋にも入ることができ、往時に思いを馳せながら巡るのも楽しい体験に。一昨年、館長に建築家の妹島和世さんが就任して以来、より「開かれた場所に」という、人が集まることへの意識を感じます。
そして館名のとおり、美しい庭園もぜひゆっくりと歩いてみてください。長めの会期の間には、桜から新緑へと景色も変わっていくでしょう。都心で大切に守られてきた建物と自然が心を癒やしてくれるはずです(談)。
【Information】東京都庭園美術館 開館40周年記念『旧朝香宮邸を読み解く A to Z』
各部屋に散りばめたキーワード「A to Z」をひもときながら館内を回る、楽しい仕掛けの展覧会。 ゲストアーティストとして伊藤公象と須田悦弘を迎え、本館内や庭園でインスタレーションを展開。現代作家による作品の存在が鑑賞者の目を引き、旧朝香宮邸をより深く、新たな視点から読み解く手がかりをくれる。
場所:東京都庭園美術館
期日:2024年5月12日(日)まで開催中
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- EDIT :
- 剣持亜弥、喜多容子(Precious)
- 取材・文 :
- 剣持亜弥