これからの生活の質を左右する、大切な「骨」の話

ふだんの生活で意識することのない、骨。その大切さはいうまでもありません。未来の自分のために、まずは、骨知識を貯金しておきましょう。

今回は、骨粗鬆症専門外来を開設されている「藤沢駅前順リハビリ整形外科」の渡邉順哉先生に、これからの生活の質を左右する大切な「骨」について、お話をうかがいました。

渡邉順哉 先生
藤沢駅前順リハビリ整形外科
整形外科医・骨粗鬆症認定医。骨粗鬆症専門外来を開設し、骨粗鬆症の治療に力を入れている。春頃にクリニック名称変更の予定あり。神奈川県藤沢市のほか、今春以降に大阪に分院、2024年末に横浜院を開院予定。

1.骨は壊され、つくられる。全身の骨は3年で入れ替わる

骨は新陳代謝のイメージがないけれど、きちんと生まれ変わっているそう。

「古くなった骨は壊され、新しい骨がつくられます。骨は壊されるのは早いですが、新たにつくるのには数倍の時間がかかります。全身の骨がすべて入れ替わるのに、およそ3年かかります。健康な骨では、骨を壊す働きと骨をつくる働きのバランスがとれていますが、骨粗しょう症の骨では、壊す働きがつくる働きを上回ってしまいます」(渡邉先生、以下同様)

2.女性ホルモンは女性の骨の守り神です

アンチエイジング_1,ボディケア_1
 

骨の強さは20代の若い頃がピークで、年齢と共に少しずつ弱くなっていくそう。それは仕方ないとして、急速に骨が弱まってしまうのが閉経後です。

「理由は閉経によって女性ホルモンの分泌が低下するから。女性ホルモンのエストロゲンには、骨を壊してはつくる再生スピードを維持し、骨を守る働きがあります。しかし、女性ホルモンが減少すると、骨を壊す働きが暴走して、骨が急速に壊されてしまうのです」

3.骨のモロさは遺伝する。痩せと運動不足も危険です

アンチエイジング_2,ボディケア_2
 

女性であることと閉経していることは、骨粗しょう症において最もハイリスク。そして、意外なのが骨粗しょう症は遺伝するという事実です。

「ご両親に脚の付け根や背中を骨折されている方がいたら要注意です」。さらに、痩せている、若い頃に激しいダイエットをしていた、運動不足、などもリスクが高いそう。「過去にステロイドや放射線による治療歴がある、卵巣がんなどの手術の経験がある、などの持病がある方、早期閉経、喫煙習慣も要注意です」

4.骨折から寝たきりに⁉ がんより怖い骨粗しょう症

もしも骨が弱くなってしまった状態を放置して、将来、体を支える脚の付け根や背中に大きな骨折をすると、寝たきりになるなどQOLが著しく低下するそう。

ボディケア_3,アンチエイジング_3
 

「特に、高齢者の脚の付け根の骨折は、寝たきりになる可能性をグンと高め、寿命を一気に短くしてしまいます。高齢者の脚の付け根の骨折は、がんより死亡率が高いといわれる所以です。骨粗しょう症は、実は、とても怖い病気なのです」

5.骨は静かに劣化する。骨の異常に自覚症状はナシ

骨は減っても痛くも痒くもないため、自覚できる症状がありません。

「自分の体の重みに耐えられず気が付かないうちに背骨がじわじわと潰れてしまう圧迫骨折を起こしていることも。若い頃に比べて身長が低くなっていたら要注意です」。

自覚するのが難しいからこそ、検診を受ける人も非常に少ないそう。「検診を受けている人は1万2000人程度、乳がん検診を受けている人の300万人と比べると、いかに少ないかがわかります」

6.骨の強さは骨密度と骨質で決まります

骨というとカルシウムでできているイメージだけれど、実は、たんぱく質の一種であるコラーゲンも重要な材料のひとつだとか。

「骨を鉄筋コンクリートの建物に例えるなら、骨組みになる鉄筋がコラーゲン(骨質)で、間を埋めるコンクリートがカルシウム(骨密度)。骨の強度は骨密度7:骨質3で決まるとされます。カルシウムもたんぱく質も骨の強さに欠かせません。骨密度と同時に骨質も測定できたら理想的です」

関連記事

PHOTO :
宗高聡子(静物)、GettyImages
STYLIST :
石井くみ子(静物)
EDIT&WRITING :
木更容子、佐藤友貴絵(Precious)