「吹聴」は「すいちょう」ではなく「ふいちょう」と読みます。難読漢字ですが、その語源を知れば、読み方も容易に覚えられるかもしれませんよ! 今回は「吹聴」の意味や語源、使い方や英語表現について解説します。

【目次】

「風聴」が語源とも言われています。
「風聴」が語源とも言われています。

【「吹聴」の「読み方」「意味」など「基礎知識」】

■読み方

「吹聴」は「ふいちょう」と読みます。「吹」の音読みは「スイ」、音読みは「ふ-く」。「吹奏楽(すいそうがく)」といった使われ方をするため、「すいちょう」と誤読しがちな難読漢字です。

■意味と語源

「吹聴」には「言いふらす」という意味があり、「自慢話を吹聴して回る」のように用います。それにしても、「吹聴」は、なぜ「ふいちょう」と読まれるようになったのでしょうか。実は「吹聴」の語源は「風聴(ふうちょう)」ではないかと言われています。「風聴」には「世間に言いふらすこと」や「噂」という意味があり、風の便りに聞く、さまざまに取り沙汰するといった意味を表します。一方で「吹」には「息を吐き出す」のほか、「大言を吐く(ものごとを誇張していうこと。えらぶって大きいことを言うこと)」という意味があります。「ほらを吹く」「法外な値段を吹っかける」のように使われますね。「風聴」は次第にその意味が伝わりやすい「吹聴」と記されるようになり、「ふうちょう」の音は残って「吹聴(ふいちょう)」と特殊な読み方になったとされています。


【「使い方」がわかる「例文」3選】

前述の通り、「吹聴」には「ものごとを誇張して言いふらす」「えらそうに大きいことを言いふらす」というニュアンスが含まれ、基本的に自慢話や噂話など、ネガティブな内容に関して使われます。「言い触らす」のは他人の悪いことであり、「吹聴する」のは主として自分や他人の長所や利点です。打ち合わせの時間など、実務的な内容を使える際には用いません。

■1:「A部長はライバルであるB部長を貶めるため、デマを吹聴して回っているようだ」

■2:「B部長はA部長にデマを吹聴され、周囲の信頼を失う危機に陥っている」

■3:「Cさんは自慢話を吹聴することが趣味のようなものだから、聞き流していればいいよ」


【「類語」「言い換え」表現は?】

「吹聴」は口頭ではその意味が伝わりにくいかもしれません。言い換え表現も覚えておきましょう。

・言いふらす

・自慢して回る

・触れ回る

・流言(りゅうげん):根も葉もないうわさを言いふらすこと。また、そのうわさ。デマ。流説。

・喧伝(けんでん):盛んに言いはやしたり言い触らしたりすること。

・鳴り物入り:ものものしい大げさな宣伝のこと。

・流布:広く世間に行き渡ることを「流布」と言います。「妙なうわさが流布している」のように使われます。


【「英語」で言うと?】

「吹聴する」に相応する英語表現はいくつかあります。楽器の「トランペット」を意味する[trumpet]には動詞で使うと「トランペットを吹く/息を吹きかける」以外に、「吹聴する」「ふれて回る」「誇示する」という意味になります。また「噂話、陰口」を意味する[gossip]も「陰口を言って回る」という動詞としても使えます。

・They trumpeted abroad his secret faults.(彼らは彼の隠しておきたい欠点を世間にふれ回った)
・He trumpets his own praises.(彼は自慢を吹聴して回った)

・The whole school was gossiping about them.(学校全体が彼らについて噂していた)
・There has been much gossip about the possible reasons for his absence. 
(彼の不在理由についてはかなりの噂が流れています)

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「吹」という文字には「口をとがらせて息を吐き出す」「楽器を吹く」「大言を吐く」という意味のほかに「風が吹く」という意味もあります。「息吹(いぶき)」「雪吹(ふぶき)」も難読漢字ですね。「吹聴」は「他人の悪いこと」を言いふらしたり、「自分の自慢話」を触れ回るときに使われる、どちらかといえばネガティブな言葉です。使用の際は充分に注意しましょう。

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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) /『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『新選漢和辞典Web版』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :