日本では「エイプリルフール(辞書的にはエープリルフール)」は「一年に一度だけ嘘をついても許される日」として広く浸透していますよね。SNSでは、個人のアカウントだけでなく、企業の広報なども率先して小ネタを投稿しています。ではなぜ、この日の嘘は許されるのか、ご存じですか? 今回はエイプリルフールの由来やルールのほか、「嘘をついていいのは午前中だけ」という噂の真偽についても解説します。

【目次】

他愛のない嘘でみんなが笑って過ごす日」です。
「たわいのない嘘でみんなが笑って過ごす日」です。

【結局、エイプリルフールって何?「概要」】

■「概要」

「エイプリルフール」といえば、4月1日。4月1日といえば「エイプリルフール」。日本では「一年に一度だけ嘘をついても許される日」として知られていますが、英語本来の意味は「4月1日に騙された人」を指しています。

■「発祥」はどこ?

エイプリルフールの由来や起源には諸説あり、これ、と断定できるものはありません。最も有力とされているのは、「フランスが発祥の地」という説です。フランスでエイプリルフールは[poisson d’avril (四月の魚)]で、魚とはサバ[maquereau(マクロー)]を指しています。サバは4月になるとたくさん捕獲され、食料にされるため、4月1日に騙される人を4月の魚と言うとする説や、4月になると太陽がうお座を離れるため、それが起源だとの説もあります。また、「マクロー」には誘拐者との意味もあり、4月は人を騙す誘拐者が多い月であるため、その名が生まれたとも言われていますよ。2023年のエイプリルフールには、在日フランス大使館公式「X(旧Twitter)」が動画と共に「この日、在日フランス大使館ではみんな背中に魚の絵を張り付けたまま業務を行うことが義務付けられています」と発信していました。

■日本にはいつ広まった?

日本には江戸時代に中国から伝わったといわれ、「エイプリルフール」という言葉が定着したのは大正時代。当初は「不義理の日」として、「付き合いや義理を欠いているのを詫びる日」でした。今とはまったく意味が違いますね!また、「エイプリルフール」は、「四月馬鹿」「万愚節(ばんぐせつ)」とも言われます。「万愚節」は11月1日の「万聖節」に対しての言葉で、キリストがユダヤ人に騙されたことを忘れないために設けられた日とも、キリストの命日ともいわれています。

■エイプリルフールの嘘に「ルール」はある?

「エイプリルフール」は、あくまで「たわいのない嘘でみんなが笑って過ごす日」です。嘘をついた側もつかれた側も、冗談や軽い悪ふざけとして、流せる内容に限ります。ポイントは、「他人を傷つけるようなシリアスなネタはご法度」なこと。誰かのご不幸や災害、事故に関することなど、のちのち、わだかまりが残ってしまうような嘘をついてはいけません。また、ネタばらしはこの日のうちに。数日の間、嘘を引きずってしまうのはNGです。SNSで発信する際には、「#AprilFools」や「#エイプリルフール」といった、読んですぐにエイプリルフールだからついた嘘なのだとわかるハッシュタグをつける気遣いも大切ですね。


【「日にち」が4月1日なのはなぜ?「理由」は?】

4月1日になった理由にも諸説ありますが、広く伝えられているのが、フランスのグレゴリオ暦(現在の太陽暦)採用をきっかけとするものです。ヨーロッパでは、古くは3月25日を元日とし、元日から4月1日までの間、新年の祭りを開いて、その最後の日には贈物を交換する風習がありました。1564年にシャルル9世が1月1日を新年とするグレゴリオ暦を採用したのですが、それが一般庶民まで届かず、多くの人の間では4月1日を新年の祭りの最終日とし、贈物の交換が行われ続けました。なかには、1月1日が新年になったことを喜ばない人もいて、4月1日には昔の正月をしのび、でたらめな贈物をしたり新年を祝うパーティの真似をしたりしてふざけたのが、「エイプリルフール」が始まったきっかけで、それがやがてヨーロッパ各国に広がったといわれています。


【「嘘をついていいのは午前中まで」というウワサは本当?】

小学館『デジタル大辞泉』で「エイプリルフール」を検索すると…確かに「4月1日の午前中に、罪のない嘘をついて人をかついでも許されるという風習」という記述があります! 

■「午前中まで」のルールはイギリス発祥?

「午前中まで」のルールの起源はイギリスです。イギリスにはもともと「オークアップルデー」という記念日があり、5月29日には国王に忠誠を誓う証として、午前中の間、帽子や襟元にオークの実を飾るという習わしがあり、この日にオークの実を付けていない人は「国王への忠誠心が足りない」とからかわれるのです。この習慣がエイプリルフールと混同された結果、イギリスで「エイプリルフールの嘘は午前中まで」というルールができたのでは?といわれています。

■日本でも「午前中」だけ?

「午前中ルール」が適用されるのは、「オークアップルデー」が行われているイギリスだけ。日本はもちろん、イギリスを除く世界中の国では、4月1日の朝から晩までが「エイプリルフール」、つまり嘘をつくことができる日ですからご安心を!


【「英語」で言うと?】

英語では、4月1日にだまされた人を[April fool]と、そしてこの日のことは一般に[April Fool's Day]、または[All Fool‘s Day]と呼んでいます。


【エイプリルフールがNGな国は?】

エイプリルフールは日本だけでなく、世界各国でも親しまれている共通の日ですが、禁止、あるいは自粛している国もあります。例えば、イスラム教ではコーランにおいて嘘をつくのが禁止されているため、信者の多いインドネシアやマレーシアでは、エイプリルフールという文化自体、あまり知られてはいません。エイプリルフールはあくまで楽しいイベント。ジョークを言う際には、相手の文化を尊重する姿勢が必要ですね。

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近年、エイプリルフールは「センスある嘘を楽しむ」イベントになっています。2001(平成13)年に創設された「日本インターネットエイプリル・フール協会(ガジェット通信)」は、さまざまなサイトのなかから秀逸なものを勝手に表彰しており、今年もネタを募集しています。誰もが笑顔になれる楽しい嘘で、あなたもエイプリルフールを楽しんでみませんか。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『12か月のきまりごと歳時記(現代用語の基礎知識2008年版付録)』(自由国民社) /『世界大百科事典』(平凡社) :