職場や何かの集まりで「緊張」を感じることはありませんか? 目上の人から「緊張感をもて」と指摘されるシーンを垣間見た人や、実際に言われたという人もいるかもしれません。では、そもそも「緊張」とは、どんな状態のことを言うのでしょう?  また、「緊張感を感じる」は二重表現で間違った表現なのでしょうか? 今回は「緊張感」を正しく理解し、その使い方を学びましょう。

【目次】

ドキドキは「緊張感」でワクワクは「高揚感」です。
ドキドキは「緊張感」でワクワクは「高揚感」です。

【「緊張感」と「緊張」は別もの?「緊張感」の基礎知識】

■「緊張感」の意味

「緊張感」とは、心や体が緊張する感じのこと。また、場の空気が張りつめる感じのことを言います。「~感」の「感」は、ものごとに接して生ずる心の動きやそのものごとの様子を表します。「緊張感」の場合も「緊張している心の動き」や「緊張している様子」を言います。

■そもそも「緊張」とは?

「緊張」について改めて確認しましょう。『デジタル大辞泉』によると、4つの意味を表します。

(1)心や体が引き締まること。慣れないものごとなどに直面して、心が張りつめて体が硬くなること。「緊張をほぐす」「緊張した面もち」などと使います。

(2)相互の関係が悪くなり、争いの起こりそうな状態であること。「緊張が高まる」「緊張する国際情勢」などはよく見聞きする表現ですね。

(3)生理学で、筋肉や腱(けん)が一定の収縮状態を持続していること。例えば足がつるのは、「筋肉が緊張した状態」ということです。

(4)心理学で、ある行動への準備や、これから起こる現象・状況などを待ち受ける心の状態。「会議での発言の前はいつも緊張する」という人も多いのでは?


【「緊張感をもつ」とはどういうこと?】

「緊張感」も「緊張」も、そのような状態でいるときには多少なりとも心身にストレスがかかっているものです。それをあえて「緊張感をもつ」という場合は、そのことによって良い効果が期待できるから、ですよね。例えば「緊張感をもって作業にあたります」といえば、「その作業自体に不安はないけれど、さらに気持ちを引き締めて作業する」ということ。ビジネスシーンではよく使われるフレーズですね。「緊張感をもつ」とは、「緊張感」をポジティブな意味で使用しているのです。


【「緊張感」の使い方がわかる「例文」8選】

■1:「第一報が入った瞬間、その場に緊張感が走った」

■2:「凡ミスが多いのは緊張感が足りないからだ」

■3:「緊張感に欠けた現場では事故が起こりやすい」

■4:「レジェンドの登場を前に、会場は緊張感に包まれた」

■5:「発表の瞬間を待ちわび、緊張感がいっそう高まった」

■6:「あの時の緊張感を表すと、心臓がバクバク、脚はガクガクだったよ」

■7:「良く言えば穏やかでラクだけれど、悪く言えば緊張感がない職場だ」

■8:「失言ともとられる、緊張感に欠けた発言だった」


【「緊張感を感じる」は間違い?】

「緊張感を感じる」や「違和感を感じる」など、「感」が重複する表現は正しいのでしょうか? 「頭痛が痛い」や「いまだ未定」「被害を被る」「あとで後悔する」などは「二重表現(重複表現)」と言われ、正しくは「頭が痛い」「現在も未定」「被害を受ける」「あとで悔やむ」などになります。

ところが「緊張感を感じる」の場合は識者の間で「二重表現ではない」という見解もあり、間違いとは言い切れません。けれど字面として「緊張感を感じる」はあまりよろしくなく、「緊張感を覚える」や「緊張感に包まれる」などに言い換えたほうが美しい日本語と言えるでしょう。


【「類語」「言い換え」「対義語」など関連表現​】

「緊張感」を別の言い方にすると? 「類語」や「言い換え」などもチェックしておきましょう。

■類語

・緊迫感:情勢が緊張し、切迫した感じ。差し迫った感じ。

・切迫感:緊張した状態になること。逃げ場のない追いつめられた状態になること。

■言い換え

・差し迫った感じ

・引き締まった感じ

■対義語

「緊張」の対義語は「弛緩(しかん)」ですが、「弛緩感」とは言いません。「緊張感」の対義としては「緊張感がない」「緊張感に欠ける」や「締まりがない」「だらける」で表現できます。


【「緊張感」は具体的にどう表現する?】

「緊張感」を具体的に表す際に、「ドキドキ」や「バクバク」、「そわそわ」「ぶるぶる」、「カチカチ」などのオノマトペ(擬態語・擬音語)を用いると、様子が伝わりやすいでしょう。これらを用いた例文も挙げておきます。

・緊張感から胸がドキドキした。

・心臓がバクバクするくらい緊張感が漂う現場だった。

・そわそわして落ち着かず、緊張感丸出しだ。

・ぶるぶる震えるくらい、緊張感に包まれた。

・緊張感が高まりすぎてカチカチだった。


【「英語」で「緊張感」はどう言う?】

「張り詰めた雰囲気」や「緊迫した様子」を表す[tense atmosphere]で「緊張感」を表すことができます。

また、「心身が引き締まること」を表す[tension]や、「緊張する」の[be nervous]も使えます。

feel nervous(緊張感を覚える)

・not enough tension(緊張感が足りない)

・Lack of tension(緊張感の欠如)

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慣れたことほど「緊張感をもって」臨みたいもの。この“大人の語彙力強化塾”もまもなく連載600回を迎えます。緊張感をもって1000回を目指します!

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :