「ヒペリカム」の名前を聞いてすぐにピンとくる人は、なかなか草花に詳しい人ではないでしょうか。黄色い花を咲かせる「ヒペリカム」は、お花屋さんの店頭ではどんぐりのような形の赤い実をつけた姿がよく見られます。今回は「ヒペリカム」の特徴や花言葉、雑学あれこれをご紹介します。
【目次】
【「ヒペリカム」ってどんな花?「基礎知識」】
■「ヒペリカム」とはどんな花?
初夏から夏にかけて、長いおしべがきらめくような黄色い花を次々と咲かせる「ヒペリカム」。花が終わると赤やオレンジの丸い実をつけます。実はどんぐりのようなかたちで、枝分かれした先端に上向きにつき、すぐ下に緑色のガクがついているのが特徴。私たちが店頭で見かけるのは実をつけたものが多く、むしろ「花だとわからない」人も多いかもしれません。分類はオトギリソウ科オトギリソウ属。原産地はヨーロッパ西部から南部にかけて。通年流通していますが、花は6月から7月、実をつけるのは秋です。花の日持ちは3日から5日程、実は1、2週間楽しめます。
■ヒベリカムの「和名」は?
「ヒペリカム(Hypericum)」はオトギリソウ属のラテン語名で、一般に日本原産のものを「オトギリソウ(弟切草)」、輸入されたものを「ヒペリカム」と区別しています。「ヒペリカム」の和名は「コボウズオトギリ(小坊主弟切)です。
【ヒペリカムの「花言葉」は?】
■きらめき
鮮やかな黄色の花が、太陽の光を受けてきらめいているように見えることから付けられました。
■悲しみは続かない
「ヒペリカム」の花は開花期間が非常に短いのですが、花が散ったあと、すぐに実を付けることから、「悲しみは続かない」という花言葉になったようです。
■迷信
「ヒペリカム」は、日本のほか西洋でも薬草として重宝されてきました。病気を治すだけでなく、魔除けにも効果があるとされていたところから「迷信」という花言葉がつきました。
【「ヒペリカム」にまつわる「雑学」】
■色のバリエーションが豊富
「ヒペリカム」の仲間であるオトギリソウ属の植物は、約300種あります。よく見かける赤やオレンジの実のほかに、ピンク色やクリーム色、明るい緑色など、パステル調の淡い色から、茶色などの濃い色まで、バリエーションが豊富。しかも実の色は熟すにつれて変化するので、微妙なグラデーションが入っているものもあります。ただし、花の色はすべて黄色です。
■庭木や公園樹としてもよく見かけます
庭木や公園樹としてよく植栽されているビヨウヤナギやキンシバイ、昔から薬草として使われてきたオトギリソウも、「ヒペリカム」の仲間です。「ヒペリカム」は半常緑低木のため、刈り込みに耐え、手入れも簡単なため、庭木や公園樹、街路樹の足元の低木として、日本全国のさまざまな場所に植栽されています。樹形は広がるように生長し、枝は枝垂(しだ)れて弓なりになって、6月~7月頃、枝先に梅に似た黄色い花を無数に咲かせます。
■「地植え」や「鉢植え」で育てる際の注意点は?
「ヒペリカム」は暑さや寒さに強く、「地植え」や「鉢植え」で育てることができ、気軽に楽しめるお花です。日光が足りないと花つきが悪くなりますが、強い日差しに長時間当たると葉焼けを起こします。夏の日差しを考慮した場所に植え付けましょう。地植えの場合、極端に乾燥しているとき以外の水やりは不要です。鉢植えは、鉢の表面が乾いたらたっぷりと与えましょう。
■切り花として楽しむ際の注意点は?
湿気が多いと実や葉が黒ずんできますので、風通しのよい場所に飾りましょう。
■アレンジメントで相性がいいのは?
ヒペリカムは可憐な野の花と合わせて、ナチュラルなアレンジやブーケにするとよく映えます。また、大きな葉はグリーンとしても重宝します。また、クリスマス時期であれば、赤い実を生かしてリースに使うのもおすすめです。
■日本原産種「オトギリソウ(弟切草)」の名前の由来は?
日本原産種のヒペリカム、オトギリソウは漢字で書くと「弟切草」です。ちょっと物騒な名前ですよね。江戸中期の漢方医、寺島良安 (りょうあん)の著書『和漢三才図会 (わかんさんさいずえ) 』(1713年)によれば、平安中期、花山 (かざん) 天皇の時代に、鷹使いの名匠、晴頼 (はるより) が鷹の傷を治すための薬草を秘密にしていたところ、それを弟が漏らしたために斬り捨てたことから名づけられたと伝えられています。また、この逸話から「オトギリソウ」の花言葉は「怨念」となりました。古くから薬として知られ、切り傷の止血のほか、陰干しにした草を煎じて風邪や咳止めの民間薬に使い、焼酎に漬けて薬酒がつくられるそうです。
■「ヒペリカム」はいつの誕生花?
1年365日、それぞれ特定の花を割り当てた「誕生花」。誕生日に誕生花を贈って祝う習慣は広く親しまれていあす。そsて、「ヒペリカム」は8月27日の誕生花です。
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あまり知られていませんが、赤やオレンジ、ピンク、グリーン、そしてイエロー…。色とりどりの実が可愛らしい「ヒペリカム」は、黄色い花を一気にたくさん咲かせます。ほんの数日で散ってしまうので、生花店に流通しているのは、実をつけた状態のものがほとんどです。ブーケの名バイプレーヤーとして人気ですが、鉢植えで育てると初夏に色づく蕾(つぼみ)から花、そして実が徐々に色濃く大きくなる様子まで、とても長い期間楽しむことができる植物です。きらめき、悲しみは続かない、という花言葉もポジティブで、育ててみたい花のひとつになりそうですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『花屋さんで人気の469種 決定版花図鑑』(西東社) /『ちいさな花言葉・花図鑑』(ユーキャン自由国民社) :