「発破をかける」は「少々荒っぽい言葉で相手を激励する」ことを意味する慣用句です。ビジネスシーンでも使われる言葉ですから、ぜひ、この機会に正しい意味を理解しておきましょう。また、例文をチェックすると、実際の使い方がよくわかりますよ。それでは、さっそく見ていきましょう。

【目次】

発破をかけるとは、ダイナマイトのように荒々しく力強い励ましの言葉です。
発破をかけるとは、ダイナマイトのように荒々しく、力強い励ましの言葉をかけることです。

【「発破をかける」とは?すぐに使える「基礎知識」】

「読み方」 

「発破をかける」の「発破」は「はっぱ」と読みます。「はっぱをかける」という音のイメージで、「葉っぱ」と思っていたという人もいるようですが…違いますよ。

「意味」

「強い言葉で激励したり、気合いを入れたりする」ことを「発破をかける」と表現します。

■「由来」

「発破」は鉱山の発掘作業やトンネル掘りなどの土木工事の際、「ダイナマイトを仕掛けて岩石などを爆破すること」。火薬そのものを指すこともあります。「かける」の漢字表記は「掛ける」。「発破を掛ける」はもともと、「火薬を仕掛けて爆破する」ことを表す言葉でもあります。ここから、ダイナマイトのように荒々しく力強い励ましの言葉をかけて、相手を激励するという意味に転じました。


【「使い方」がわかる「例文」5選】

「発破をかける」は「頑張っていこう」「大丈夫、ゆっくりやっていこう」などと優しく励ますというよりも、厳しく、例えば「気合いを入れろ!」「しっかりしろ!」「本気出せ!」「もっとできるだろ!」と激励するようなニュアンスで使われます。従って、自分より目上の方に対して使う言葉ではないことを覚えておきましょう。また、パワハラまがいの激しい言葉を発することを「発破をかける」とは言いません。とはいえ、本人は「発破をかけた」つもりでも、その言葉をかけられた人が尋常でない威圧感を受けたなら、それはパワハラと判断される場合も。言葉のセレクトや口調には気を付けたいものです。

■1:「部長は新プロジェクトのチームメンバーに“ここが正念場だ。最善を目指して必ず成功させよう。気合い入れていくぞ!”と発破をかけた」

■2:能力はあるのに覇気がなかった新人の○○さんは、信頼している先輩から発破をかけられて、生き生きしてきた」

■3:「スロースターターの同僚に、“すぐ始めないと納期に間に合わなくなるよ”と発破をかけたら、逆ギレされた」

■4「試合前、監督は選手たちに発破をかけた」

■NG:「やる気を失っている部長に対し、僭越ながら発破をかけさせていただいた」


【「類語」「言い換え」表現】

■類語

 ・活を入れる:「活発でないもの、衰弱したものなどに、刺激を与えて元気づける」こと。「喝を入れる」は誤用ですから、注意してください。

・尻を叩く:「やる気を起こすように励ます。また、早くするように催促する」こと。

■似た意味の四字熟語

・𠮟咤激励:「叱りつけて、相手の気持ちを奮い立たせること」。人の上に立つ人物の行動なので、「発破をかける」同様、「上司を𠮟咤激励した」とは用いません。

・鼓舞激励:「気分を高めて、やる気を起こさせる」こと。「𠮟咤激励」や「発破をかける」よりも「応援する」というニュアンスが強い言葉です。

■言い変え表現

・奮起を促す、奮起を求める
・奮い立たせる
・やる気を起こさせる
・やる気にさせる
・煽る
・鼓舞する
・元気づける
・気合を入れる

■「檄を飛ばす」の誤用に注意!

「発破をかける」の類語として、「檄(げき)を飛ばす」をあげる人がいますが、「檄」とは古代中国で招集または説論のための文書のこと。本来、「人々を急いで呼び集める。また、自分の主張や考えを、広く人々に知らせて同意を求める」という意味合いの慣用句です。「頑張るよう激励する」の意味での使用は誤用なのですが、2017年度の文化庁の調査でも、本来の意味で使う人は22.1%、もともとはなかった「励ます」の意味で使う人が67.4%という結果に。「励ます」という意味が市民権を得つつあるのかもしれません。


【「英語」で言うと?】

「発破をかける」を「〜するよう促す」という意味に捉えると、[push]となります。

・I will push  him to finish the work quickly.(彼に発破をかけて早く終えさせよう)

また「発破をかける」の慣用表現もご紹介します。

・His boss's words spurred him (on) to greater effort.(ボスの言葉が彼に発破をかけた)

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「発破」という単語に馴染みがないため、「発破をかける」がピンとこない人も多いようです。いちばん意味が近く、わかりやすい言い変え表現は「奮起を促す」でしょう。相手や状況に応じて適切な言葉を選ぶことも、大人の気遣いですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) /『四字熟語ときあかし辞典』(研究社) /『すぐに使える! 教養の「語彙力」3240」(西東社) /『悩ましい国語辞典』(角川ソフィア文庫) :