「梅雨」と書いて「つゆ」。なぜ「梅」の文字が使われているのか、どうして「つゆ」と読むようになったのか…考えたことはありますか? 今回はそんな素朴な疑問にお答えします。ビジネスの合間、ちょっとした雑談のネタのひとつとして、お役立てください!

【目次】

「露を連想させるから」という説が有力です。
「露を連想させるから」という説が有力です。

【「梅雨」を「つゆ」と読むのはなぜ?】

「梅雨」と書いて「ばいう」もしくは「つゆ」。「梅雨前線(ばいうぜんせん)」とは言いますが、ほかは「梅雨入り」「戻り梅雨」「長梅雨」など、「つゆ」と読むことがほとんどです。この理由については諸説ありますが、有力な説をふたつ、ご紹介しましょう。

1)雨が多く湿度の高い気候が、露(つゆ)を連想させるから和歌などの修辞法で「涙に濡ている」意を表すことが多い古語「露けし」は、もともと「露に濡れて湿っぽい」という意味でした。ここから転じて、雨の多い時期を「つゆ」と呼ぶようになったという説です。
2)梅の実は、6〜7月の雨が多い時期に熟して収穫となります。つまり、梅の実が熟すころの雨、という意味からという説。また、熟した実はつぶれやすく、「くさる」という意味の「潰(つい)ゆ」から変化して「つゆ」と呼ぶようになったという説。


【「梅雨」を英語で言うと?】

「梅雨」に相当する英語表現は[the rainy season]です。

・The rainy season has set in [is over].(梅雨に入った[が明けた])

・The length of this year's rainy season broke all records.(今年の梅雨は記録的な長さだった)


【「梅雨」時期の「季語」は?】

俳句の世界では、「季節と結びついて、その季節を表すと定められている語」を「季語」と言います。「梅雨」自体も夏の季語ですが、ほかにも「梅雨」を含んだ季語は多くあります。いくつかご紹介しましょう。いずれも「夏」の季語です。手紙の冒頭に使えば、季節のご挨拶は完璧です。

・走り梅雨梅雨に先立って、ぐずつく天候。梅雨の前触れ。

・入梅(にゅうばい):梅雨の時期に入ること。また、その日。

・空梅雨(からつゆ)旱梅雨(ひでりつゆ)、照り梅雨梅雨期間にほとんど雨が降らないこと。降雨量のごく少ない梅雨。

・梅雨冷え:梅雨期の連日の雨で気温が下がること。

・荒梅雨(あらづゆ)、男梅雨特に風雨の強まった梅雨。

・梅雨の月:梅雨の期間中の晴れ間に出る月。

・梅雨の星:梅雨の期間中の晴れ間に雲間にもれる星。また、梅雨に濡れた木々の梢の水滴が光るのを星にたとえたもの。

・梅雨明け:梅雨が終わること。また、その日。

「梅雨」は、〇〇梅雨、となったときも、ほとんど「つゆ」と読みます。ここで紹介したもののなかでは、「荒梅雨」だけ、「づゆ」と濁ります。


【「梅雨の時期に降る雨」の「言い換え」表現】

日本語には雨を表現する言葉が数多くあります。梅雨の時期に降る雨の表現、あなたはいくつご存じでしょうか。

・五月雨(さみだれさつきあめ)陰暦5月(現在の6月)に降る長雨のこと。「梅雨」と同じ意味ですが、梅雨は主として五月雨の降る季節を指し、五月雨は雨そのものを指すことが多い。こちらも夏の季語。松尾芭蕉の「五月雨をあつめて早し最上川」という句が有名です。

・卯の花腐し(うのはなくたし)卯の花(ウツギ)を腐らす意から、卯の花の咲くころに降り続く長雨。「腐し」を濁らせて「くだし」と読むこともあります。こちらも夏の季語です。

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雨が多く湿度も高い「梅雨」の時期は、憂鬱な時期と思いがちですが、「梅雨」を別の言葉に置き換えてみると、実に風流なものです。露に濡れきらきらと輝く新緑など、梅雨ならではの魅力や美しい情景に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :
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