アメリカの西海岸を代表する都市のひとつ、サンディエゴ。年間を通じて温暖な気候で、由緒ある博物館や動物園、ビーチライフなどが楽しめる、カルフォルニア州でロスに次ぐ第2の都市です。ここサンディエゴは、カリフォルニア州になる以前にメキシコ領だったことから、スペイン語の地名が多いのが特徴。
ダウンタウンから海上に架けられた橋で渡る場所「コロナド」もまたしかりで、その意味するところは「王位につくもの」。
このスペイン語にふさわしい貫禄を備えているのが、今回ご紹介する、ビーチに佇むヴィクトリア朝建築のホテル、「ホテル・デル・コロナド」です。
「ザ・デル」の愛称で地元の人々から親しまれている、このホテルが誕生したのは1888年のこと。現存するアメリカ最古の木造建築のひとつであり、国定歴史建造物でもあるヘリテッジ・ホテルです。
130年前、すでに今のリゾートホテルの原型を先駆けていた画期的なホテル
開業当時は鉄道の開通に伴い、サンディエゴは開発ラッシュ。ホテル・デル・コロナドはそのころの最新装備や、新しいスタイルをいち早く提案した、時代のリーディングホテルでした。電話やエレベーター、消防システムを導入し、食器やリネン類はヨーロッパからお取り寄せ。ふたりのオーナーの趣味を生かして、「フィッシング&ハンティング・リゾート」というコンセプトを打ち出し、ゴルフやアーチェリー、ビリヤードなどの各種アクティビティーを用意していました。
130年も昔に、今のリゾートホテルの原型をつくり上げたのです。新しいことをいち早く取り入れる姿勢は変わらず、今では当たり前のバスルームを、世界大戦後には全室に取り入れたのも画期的なできごとだったそう。
歴代アメリカ大統領によるスピーチ会場や、リンドバーグの大西洋横断飛行の祝賀パーティーなど、歴史の表舞台で利用されてきたボールルーム。ここで注目したいのは、天井から吊り下げられた巨大な王冠のシャンデリアです。あの『オズの魔法使い』の作者L・フランク・ボームがデザインしました。いわゆるキラキラと光振りまくシャンデリアとは異なり、夢いっぱいのデザインがインパクト大。別名「クラウンルーム」とも呼ばれています(『オズの魔法使い』の執筆も、このホテルで行ったとの説があります)。
ホテル・デル・コロナドにまつわる数多くのエピソードでも、いちばん有名なのは映画『お熱いのはお好き』のロケ地になったことでしょう。ゴールデングローブ賞などに輝いた、マリリン・モンロー、トニー・カーティス、ジャック・レモンが主演したコメディー映画です。
映画撮影が行われたのは1958年のこと。当時、マリリン・モンローは精神が不安定な状態とされていましたが、輝く太陽に照らされたビーチでは、彼女はいつもゴキゲンだったとか。スター見たさに集まった観衆の騒然ぶりに監督のビリー・ワイルダーが困っていると、モンローはすかさず、人差し指を口にあてて「シーッ」。すると、あたりはぴたりと静かになったそう。撮影当時のモンローの写真はホテル内に展示されています。
もうひとつ、このホテルを語る上で外せないのが、ケイト・モーガンという女性のこと。1892年にこのホテルで亡くなったという彼女のゴーストが住んでいると言われる部屋があります。「ケイト・ルーム」で妙な音をたてたり、テレビを勝手に点滅させたり。黒いドレス姿の美しい彼女を目撃した人も……。そんないたずら好きのゴースト目当てに滞在する人も多いそうです。
問い合わせ先
- ホテル・デル・コロナド(Hotel del Coronado)
- TEL:+1-619-435-6611
住所/1500 Orange Ave, Coronado, CA 92118
- TEXT :
- 古関千恵子さん ビーチライター
公式サイト:古関千恵子ホームぺージ
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- WRITING :
- 古関千恵子
- EDIT :
- 安念美和子