推理小説や刑事ドラマなどで、犯人(と疑われている人物)が何気なく口にした言葉に対し、真実を暴こうとする側が「語るに落ちたな!」とドヤ顔を見せる…こんな場面を一度は目にしたことがあるはずです。「語るに落ちる」は「勝手にしゃべらせたらうっかり秘密を白状してしまった」といった状況を意味する言葉です。でも実は、間違った解釈で使われていることも多いようですよ。あなたの使い方は大丈夫ですか? ぜひ、この記事で「語るに落ちる」を復習して、大人の語彙力に磨きをかけてくださいね。

【目次】

正しい意味は、「しゃべりすぎてうっかり口を滑らせてしまう」という状態です。
語るに落ちたこと、ありますか?

【「語るに落ちる」とは?「読み方」と「意味」】

■「読み方」

「語るに落ちる」は「かた-るに-お-ちる」と読みます。楽勝ですね!

■「意味」

「語るに落ちる」とは、何かうしろめたいことを隠している人は「問いつめられたときは用心してなかなか白状しないことでも、自分勝手にしゃべらせると、案外ぼろっと白状してしまうものである」という意味の言葉です。小説やドラマに登場する名探偵は、しばしば犯人との雑談から、その事件を紐解くヒントを得るものです。取り調べの席では用心していても、世間話に移ったとたん、緊張が解けた反動で、言葉や言動に隠していた本心がポロッと表れてしまうのです。

実は「語るに落ちる」は、「問うに落ちず語るに落ちる」を略した言葉。あくまでも「油断して、ついうっかり秘密を口にしてしまった」場合に使用されます。ですから、「何度も問い詰めているうちに、やっと本当のことを話した」ようなケースで「語るに落ちた」を使うのは誤りです。また、誰かの話に対して「そんな内容は、すでに語るに落ちているな」のように、「つまらない」「語るほどでもない」あるいは「誰でもすでに知っている」といったニュアンスで用いるのも誤用となります。


【「使い方」がわかる「例文」7選】

■1:「A部長就任を祝う席でのB課長のスピーチ、表向きは謙虚なことを言っているふうだったけれど、言葉の端々に『次は自分』という野心と部長に対する羨望が見え隠れして、まさに語るに落ちるって感じだったよ」

■2:「退社の理由は誰にも話さないつもりだったのに、送別会でみんなから労いの言葉を掛けられて感極まり、“語るに落ちる”でつい本音をバラしてしまった…」

■3:「いつもは無口な課長がお酒を飲んだとたん饒舌になって、部下の評価をポロッと話してしまった。“語るに落ちる”とはあのことだよね」

■4:「アーティストには寡黙な人も少なくないが、問うに落ちず、語るに落ちるもので、その人の本質は自然と作品に表れているものだよ」

■5:「○○さんがこう言ってた、△△さんがああ言ってたって、私の悪評を逐一報告してくれるけれど、すごくうれしそうだね。結局、私を悪く思ってるのはあなたなんでしょ? 語るに落ちた感じよね」

■NG:「5時間にもわたる取り調べでは、言い逃れできない証拠を突きつけられ、犯人はようやく語るに落ちて自白した」

■NG:「○○さんの新作を読んだが、まるでつまらなかった。あれだけヒットを飛ばした作家だったのに、彼も語るに落ちたものだ」


【「類語」「言い換え」表現】

「言わなくていいことをうっかり口にしてしまう」という意味を表す言葉は、ほかにもあります。ただし、ご紹介する言葉には「語るに落ちる」の意味にある「問い詰められたときには白状しないのに」という前提は含まれていません。

■口が滑(すべ)る、■口を滑(すべ)らせる

「言ってはならないことや、言う必要のないことなどを思わず言ってしまう」ことを意味します。

■口走る

「調子に乗って、言ってはならないことをうっかりしゃべる」ことを意味します。

■失言する

「失言」は、「言うべきではないことを、うっかり言ってしまうこと」。「言葉を失うこと」ではありませんよ。

■口を割る

■不用意に口にする

■うっかり口にする

■調子に乗って秘密をバラす

人は、気持ちよく饒舌に話しているときほど、口が滑ったり、言ってはいけないことを口走ってしまうものです。気を付けましょう!

■問わず語り

「(他人から)事情を聞かれてもいないのに自分から話し出すこと。また、相手なしにひとりでものを言うこと」を「問わず語り」と言います。こちらには「言わなくていいことをうっかり口にする」「自白する」というニュアンスはありません。


【「英語」で言うと?】

「口が滑る」という意味を表す慣用表現は[let slip a secret]です。

・This is what it means to let slip a secret.(「語るに落ちる」とはこのことだ)

・He kept the secret stubbornly while being interrogated, but, in an unguarded moment, he let it slip out.(彼は取り調べを受けている間、その秘密を頑なに守り続けたが、油断した瞬間に秘密を漏らしてしまった)

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同僚や友人など、親しい間柄の人がポロッと本音を口にしてしまったとき、「語るに落ちたね!」などと指摘して笑い合う…こんなシーンは微笑ましいものですが、上司や取引先の失言に対して、「語るに落ちましたね!」などと指摘するのは問題です。聞かなかったふりをしてスルーする能力も、ときに「大人の語彙力」として必要ですよね!

この記事の執筆者
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