「喫緊の課題」は「早急に解決すべき重要な課題」という意味の言葉です。組織的、社会的に大きな影響を与える問題に対して使用するため、日常会話の中で登場する機会はほとんどありません。とはいえ、それだけにビジネスシーンでの使い方を誤らないよう、正しい意味やニュアンスを押さえておく必要があります。今回は「喫緊の課題」がテーマ。例文や類語、言い換え表現をさくっと解説します!
【目次】
【「喫緊の課題」とは?「読み方」と「意味」】
■「読み方」
「喫緊の課題」の「喫緊」は「きっきん」と読みます。「きつきん」ではありませんよ。「課題」は、「かだい」。これは皆さんおわかりですね。
■「意味」
まずは「喫緊」について説明しましょう。「喫緊」は、「差し迫って重要なこと。また、その様子」を表す言葉です。もともとは「吃緊」の表記でしたが「吃」が常用漢字ではないため、新表記で「喫緊」となったという経緯があります。「緊」には「糸がピンと張っている」、「引き締まる」、そして「差し迫る」や「大切」という意味があり、「課題」はご存じの通り、「解決しなければならない問題。果たすべき仕事」です。
つまり「喫緊の課題」は「直ちに解決しなければならない大切な問題」「早急に対処すべき重要案件」を表す言葉です。個人的な悩みごとなどには使われず、そのまま放置しておくと組織や社会に大きな影響を及ぼす可能性のある問題、しかも緊急性や重大性を伴った問題について、用いられます。ビジネスにおいては、例えば、組織の運営や改革、プロジェクトの進行などでしょうか。具体的な使い方については、次の項で見ていきましょう。
【「使い方」がわかる「例文」6選】
「喫緊の課題」は、環境問題、経済的な問題、社会的な問題、技術的な問題など、多岐にわたるテーマに使われます。
■1:「わが国の喫緊の課題は、円安によって生じた物価の上昇を抑えるための経済政策だ」
■2:「CO2削減のため、プラスチックごみの処理と管理は社会における喫緊の課題…その対応策として採用されたのがレジ袋有料化だ。しかし、いったいどれ程の効果があったのだろうか」
■3:「企業経営を取り巻く環境が変化していくなか、アンケートでは、喫緊の経営課題は『収益性向上』がトップとなった。2位に『人材の育成』が続く」
■4:「ダイバーシティ経営は、企業存続を懸けた喫緊の課題と言われている。今すぐ具体的な対策が必要だ」
■5:「伝統工芸の世界では、職人の高年齢化が進む中で、技術を次の世代に託す『事業承継』が喫緊の課題となっている」
■6:「中小企業においては、経営者の世代交代、新たな事業の創出が喫緊の課題だ」
【「喫緊」の「類語」「言い換え」表現】
ここで復習です。「喫緊」とは「差し迫って重要なこと」や「急を要する重大なこと」を表す言葉でしたね。ポイントは「緊急性」と「重要性」、ふたつの側面です。「類語」をいくつかご紹介しますので、「喫緊」との違いを押さえていきましょう。
■「類語」
・緊要(きんよう)
「非常に重要なこと。差し迫って必要なこと。また、その様子」を「緊要」と言います。「最初にしなければならないこと」が「緊要」であり、「差し迫って大切なこと」である「喫緊」とは、非常に意味が似ています。
・緊急
「緊急」とは「重大で即座に対応しなければならないこと。また、その様子」。「喫緊」との違いは、「緊急」のほうが時間的な余裕がなく、「即座の対応」を求められている点です。言い方を変えれば、「喫緊」のほうが時間的にはやや余裕がある状態と言えます。例を挙げれば、「緊急事態発生!」のように、火事や計器のトラブルなど、重大なアクシデントに関しては「緊急」が使われます。また、「緊急」は「緊急性の高い案件」のようにも使われますが、「喫緊性」は誤用なので、注意してくださいね。
・緊切(きんせつ)
「緊切」には、「ぴったりとつくこと」という意味と、「差し迫って大切なこと」というふたつの意味があります。「緊切な関係にある」、「緊切な問題」などと使います。
・早急
「さっきゅう」あるいは「そうきゅう」と読む「早急」は、「非常に急ぐこと」「至急」などの意味をもちます。「早く」「急ぐ」ことが強調された言葉で、「喫緊」のように「重要なこと」というニュアンスはありません。
・切迫
締め切りや期日などが間近に迫ったり、 緊張した状態になることや逃げ場のない追いつめられた状態になることを「切迫」と言います。事態が差し迫っている点では「喫緊」と同じような意味ですが、やはり「重要なこと」という意味合いは含まれていません。
■言い換え表現
・差し迫った
・切迫した
・急迫した
・目下(もっか)の
■対義語は?
・余裕のある
・ゆとりのある
・気長な
・悠長な
【「英語」で言うと?】
「喫緊」は(重要なことが)差し迫った状態のことです。「喫緊」をズバリ表す英単語はありませんが、「切迫した」という意味の[urgent]や「緊急の」を表す[pressing]で「喫緊」に近い意味を表現することができます。また「課題」には[issue]や[matter]が使われます。
・This is highly urgent matter. (これは喫緊の問題です)
・This is a really pressing issue. (これは喫緊の問題です)
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「喫緊の課題」は「早急に解決すべき重要な課題」を指す言葉です。しかし、例えば働く女性にとって睡眠の改善や体調管理などは、直ちに解決すべき重要な課題であることは間違いありませんが、「喫緊」を使うと、ちょっと大げさで、違和感が漂います。「目下の課題」くらいが適当でしょうか。なぜか、という日本語のニュアンスを説明するのは難しいですが、これからも一緒に、大人ならではの語彙力を身に付けて、感覚を研ぎ澄ませていきましょう。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料: 『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) /『新選漢和辞典Web版』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :