<Precious創刊20周年記念特別企画>輝く!時代をつなぐニューリーダー
Preciousが創刊以来見つめてきたのは、「ガラスの天井」や「ガラスの壁」を突破すべく、キャリアを築き、走り続けてきた女性たち。美しくしなやか、でも自分らしさも貫く…そんな今のリーダーたちに迫ります!
Preciousが創刊された2004年は、前回の新札が登場した年。五千円札の肖像に樋口一葉が選ばれ、「女性ではふたり目、神功皇后以来123年ぶり」と話題になったこと、覚えていますか? 扇千景さんが女性初の参議院議長に選ばれた年でもあります。それから20年。社会での女性の存在感は大きく変わり、多様な働き方、生き方がどんどん広まっています。
そして、時代を象徴する新しいリーダーも次々と誕生! Preciousがずっと伴走してきた「働く女性」の20年と、到達した“今”の美しい姿にフォーカスします。
「平等」であることを目標に戦い続けてきた歴代の女性リーダーたちから今、私たちが学ぶことは…
緒方貞子さんが60代で日本人初、女性初の国連難民高等弁務官になったとき。アウンサンスーチーさんがミャンマー民主化運動の指導者としてリーダーシップを発揮したとき。「Facebook」CEOシェリル・サンドバーグさんが、著書で女性に「一歩踏み出そう」と呼びかけたとき。ヒラリー・クリントンさんが歴史に残る敗北宣言で「ガラスの天井は誰かが破る」と語ったとき。小池百合子さんが東京都初の女性知事になったとき。ニュージーランド首相ジャシンダ・アーダーンさんが「あなたはありのままの姿でリーダーになれる」とスピーチしたとき——。世界は確実に変わりました。
彼女たちのこうした大きな一歩に励まされ、女性たちは日々、小さな一歩を積み重ねてきたのです。私たちは今や、「女性だから…」と尻込みせずとも、何歳からでも挑戦できることを知っているし、それを応援してくれる人がいることも知っているし、カッコいいリーダーになれることも知っています。「女性だから…」を「女性だけど」に変え、「女性だからこそ」を経て、「誰だって」を実現する。そんな理想の未来は、きっと、手に届くところまで来ています。
20年間の『Precious』のキャリア特集を振り返ってみると……女性たちの「働くこと」「生きること」の意識はこんなに変化していました!
世界各都市のキャリア女性が登場する巻頭インタビューをはじめ、これまで『Precious』がさまざまな切り口で特集してきた働く女性の「夢」と「リアル」を、有識者の意見と共に解析!
◇コメントをいただいたお二人をご紹介
女性らしさを大切にしつつ “その人らしさ” へとシフト
『Precious』には創刊以来、形を変えながらも20年間途切れることなく続いている連載企画があります。巻頭に毎号4人のキャリア女性が登場するインタビュー企画。海外と日本の各都市で、仕事も人生も自分らしく楽しんでいる女性たちの姿は、時代を色濃く映し出してきました。同様に、女性のキャリアをテーマにした読み物特集にも、「働き方」の変遷が見てとれます。創刊してからの数年は、「24時間を有効活用してバリバリ働く、疲れ知らずのキャリア女性」に注目したさまざまな企画が組まれました。
女性のキャリア支援を行う「ワークシフト研究所」を主宰する小早川優子さんは、「チャック女子、なんていう言葉もありましたね。女性が、男性社会の仕組みの中で、中身はオジサンにならなければやっていけない時代だったということ」と振り返ります。
2007年の「ニッポンのトップキャリア14人の人生模様」は、各分野の女性リーダーたちの「苦難」を取材し、「パワーと勇気」を讃えた特集でした。「熱く気高くたくましい20人の『女一代記』」(2010年)、「夢をかなえる!ひたむきな女の “仕事熱”」「勇気がわきます!『生涯現役』という生き方」(ともに2011年)など、この頃のキャリア特集のタイトルはとにかく「熱い」! 「女性初」の冠をもつリーダーも数多く登場し、男性ばかりだった職場でもどんどん活躍の場を広げていく様子が紹介されています。
ジャーナリストの安藤優子さんは、『Precious』初登場となった2012年の特集で、「今まで切り込み隊長のように戦争取材などをしてきましたが、今後はもっときめ細かい視点で日本の諸問題を取材したい」と語っています。その言葉が象徴するように、2011年の東日本大震災後、日本人の働き方、生き方は、シフトチェンジをしていきます。
「プレシャス世代の『社会貢献』という選択」特集が組まれたのは2014年のことでした。「同じ頃に話題になったいわゆる “資生堂ショック” は、女性のキャリア史においては大きなトピック。育児休暇や短時間勤務といった出産後に職場復帰した美容職社員への支援制度を見直し、本当の意味でのダイバーシティ&インクルージョンに配慮した公平性を考えた、非常によい例です」(小早川さん)。
誌面でも「世界で働く『日本人キャリア』の人生論」(2017年)といった、多様な働き方が注目され始めます。「Precious『トップキャリア』の仕事の流儀」(2019年)に登場したリケ女のあるリーダーは「“女性○○” と冠をつけられることに困惑する。わざわざ “男性○○” とは言わないのに」とコメント。そこには男性社会に果敢に挑む“女性”リーダー像が、次のフェーズに変わろうとしていたことがうかがえます。
安藤さんは「働き方改革にシンクロして、女性リーダーのあり方も変化してきています。ただ、日本では制度設計しているのがほぼ男性なので、女性の本当の声は反映されにくい。『もっと働きたい』『賃金を得たい』『非正規がいい』と、働くモチベーションは人それぞれで、それを自由に選択できることが重要なのに、『みんな平等に!』では、かえって働き方の柔軟性が奪われることになりかねない。そこは今後もしっかり検証していくべきだと思います」と分析します。
小早川さんはニュージーランド元首相アーダーンさんを例に挙げ、「育休をとったり、国連総会の席の隣でパートナーの男性が赤ちゃんをあやしていたりと、女性が働くうえでのエッセンスをしっかり見せてくれた。コロナ禍で厳しい意思決定をしながらも、国民への伝え方はあくまでも優しい。彼女は、リーダーシップには決まった型はないことを教えてくれました。強さだけでなく、優しさや繊細さも含めて自分らしさを生かせる人が、これからのリーダーになっていくのでは」と語ります。
この20年で、「リーダー」の姿は大きく変わりました。そして今、ジェンダーや社会的属性にとらわれることなく、仕事を、人生を自分らしく楽しむ“ニューリーダー”の時代がやってきています。
- PHOTO :
- 宇佐美政郁(CASK)
- ILLUSTRATION :
- 岡田成生
- EDIT&WRITING :
- 本庄真穂、剣持亜弥、喜多容子(Precious)
- 写真提供 :
- Getty Images