「狐福(きつねふく)」って…どんなこと?

明日は10月17日ですが、毎月17日は『いなりの日』という記念日です。この記念日には、いなり寿司を食べる機会を増やすきっかけに…という願いが込められているとか。明日のランチにいかがでしょうか? さて「いなり寿司」が「味を煮含めた油揚げに酢飯を詰めた食べ物」であることを知らない日本人はいないでしょう。日本文化では古来「いなり」は「油揚げ」の別名でもあり、その理由は「狐の好物であるから」という認識が、常識になっておりますよね。では、「いなり」と「狐」がひとくくりで認識される理由、説明できますか? ということで、本日はそのあたりの文化にも触れつつ、「狐」という字の入った日本語クイズをお送りします。

【問題1】「狐施行」ってなんと読む?

「狐施行」という日本語の正しい読み方をお答えください。

ヒント:「近畿地方で、寒中に稲荷神社を巡拝し供物をしたり、狐の穴などへ赤飯・油揚げなどを供えて回る行事」です。

<使用例>

「子どものころ、狐施行の日にはお赤飯が食べられる、と思って楽しみだったわ」

「きつね○○○○」。
「きつね○○○○」。

…さて、正解は?

※「?」画像をスクロールすると、正解が出てまいります。

正解は↓に‼
正解は↓に‼

正解は… 狐施行(きつねせぎょう) です。

「施行(せぎょう)」と読むと、仏教の「お布施(おふせ)をする」ことを意味します。
「施行(せぎょう)」と読むと、仏教の「お布施(おふせ)をする」ことを意味します。

「施行」という表記には「しこう」「せこう」「しぎょう」「せぎょう」と4通りの読み方があり、読み方によって言葉の意味も違います。「施行(せぎょう)」にはは「お布施をする」という意味が含まれます。つまり「狐施行(きつねせぎょう)」は「お狐さまへのお布施の行為」です。

さて、稲作が生活の中心であった日本の歴史のなか、神社で最も多いのが稲荷神社です。稲荷神社は、大小あわせて全国に3万社はあると言われており、ここに祭られた稲荷神の眷族(神の使い)は、狐の姿をしている、と考えられてきました。それで日本文化では「いなりといえば狐」と、2者ひとくくりの認識が、常識となっているのです。昔は、稲荷神社に、狐がとって食べてくれる害獣・ねずみを油で揚げたものをお供えする習慣があったようですが、これが精進ものの豆腐に転じ「油揚げ」をお供えする、という形に変化したようです。

さて、2問目にまいりましょう。

【問題2】「狐福」ってどういう意味?

「狐福」という日本語の意味として正しいものを、以下の選択肢の中から選んでください。

1:思いがけない幸運

2:思いがけない災難

「狐福(きつねふく)」とは、どんな事?
「狐福(きつねふく)」とは、どんなこと?

…さて、正解は?

※「?」画像をスクロールすると、正解が出てまいります。

正解は↓に‼
正解は↓に‼

正解は… 1:思いがけない幸運 です。

「狐」は、神の使いである、と考える文化から来ている言葉ですね。

狐と言うと、昔話で「人を化かす悪い獣」として登場するケースもございますが、一方、稲荷神社の系統の「ありがたい神獣」という認識も、日本文化では大変根強い常識となっているわけです。そうした文化を改めておさらいするクイズとして、2問目を設定してみました。

と言いますのも、先日、筆者が京都の伏見稲荷大社に参拝した際、若い日本人観光客が、眷族(けんぞく=従者)として祭られている狐像を見て「狛犬、やたら多いねぇ。なんか食べてるし」とつぶやいたところに遭遇しました。伏見稲荷の狐像には、神事を象徴するアイテム(鍵や玉、巻物や稲など)を口にくわえた厳かな姿をしたものが多いのですが、「狐→狛犬」「神事のアイテムをくわえている→何か食べている」と、二重の勘違いがあったようです。インバウンドでにぎわう昨今、日本人にこうした間違いのないよう、正しい認識を広めてまいりたいところです。

*** 

本日は、毎月17日の『いなりの日』にちなんで、「狐」という字の入った日本語から、

・狐施行(きつねせぎょう)

の読み方や、

・狐福(きつねふく)

という言葉の背景などについておさらいいたしました。

この記事の執筆者
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Precious.jp編集部 
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参考資料:『日本大百科全書(ニッポニカ)』『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』(小学館)/日本記念日協会ホームページ/伏見稲荷大社ホームページ/伏見稲荷参道商店街Webガイド/『漢字ペディア』(日本漢字能力検定協会)
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ILLUSTRATION :
小出 真朱