【目次】
【「和食の日」とは?由来】
■「何日?」
「和食の日」は11月24日です。
■「意味」「目的」は?
日本においては、年中行事はもちろん、入学式や成人式、結婚式など人々の人生の節目の儀式は、「食事」と密接に結びついています。また、日本人の美意識や自然の美しさを表現する和食は、世界に誇るべき食文化です。11月のこの頃は、五穀豊穣、実りのシーズン。和食の食彩が豊かなこの時期に、「日本食文化を見直し、和食文化の保護や継承の大切さを考える日」として「和食の日」が制定されました。
■「誰が」決めた?
「和食の日」は、一般社団法人和食文化国民会議が制定しました。和食文化国民会議は2015(平成27)年に設立された団体で、日本の食にかかわる生産者や企業、団体、地方自治体、郷土料理保存会、食育団体など、多くの会員で構成されています。
■日付の「由来」は?
日付は「いい(11)・に(2)・ほん・しょ(4)く」と読む語呂合わせに由来します。また、日本の秋は「実りの季節」であり、「自然」に感謝し、来年の五穀豊穣を祈る祭りなどの行事が全国各地で盛んに行われる季節です。こちらもこの日が選ばれた理由となっています。
【ビジネス雑談に役立つ「和食の日」と「和食」の雑学】
■「和食の日」のイベントって?何をする?
和食文化国民会議は、「和食の日」には学校での食育授業や和食給食の提供など、全国で和食に親しむ活動を促進し、和食文化の保護・継承を推進しています。
・「和ごはん月間」
「和食の日」を含む11月は、官民協働「Let's!和ごはんプロジェクト」の集中活動月間である「和ごはん月間」です。「Let's!和ごはんプロジェクト」では、味覚の形成期にあたる子どもたちとその親世代が身近・手軽に和食を食べる機会を増やしてもらうため、企業などの新たな商品やサービスの開発・販売、子ども向けメニューの展開などを促進しています。
■和食はユネスコ無形文化遺産!
2013(平成25)年12月、「和食:日本人の伝統的な食文化」はユネスコ無形文化遺産に登録されました。では「日本人の伝統的な食文化」とは、どんなものなのでしょうか。
【特徴1】 日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がっているため、食材が多彩。しかも素材の味わいを活かす調理技術・調理道具が発達しています。
【特徴2】 一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われています。また、「うま味」を活かすことにより動物性油脂の少ない食生活を実現しており、長寿、肥満防止に役立っています。
【特徴3】 食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも特徴のひとつ。季節の花や葉などで料理を飾りつけたり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しみます。
【特徴4】 日本人の食文化は、民族の年中行事と密接に関わって育まれてきました。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきました。
「日本人の伝統的な食文化」とは、和食を「料理」として捉えるだけでなく、「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」など、日本人の心が育んだ伝統的な食文化を表すのだそうです。確かに、私たちは食事をいただく際、自然と(心のなかで)手を合わせ、「いただきます」と感謝の気持ちを表します。これは、私たちにとって、ごく自然な行動ですね。そして、ユネスコ無形文化遺産に登録されたことで、和食文化は世界共通の財産になりました。
■「和食」の基本とは?
ご存じの通り、和食は「ごはんとおかず」で構成されています。料理を一皿ずつ楽しむフランス料理では、パンはあくまで副食ですが、和食はごはんを主食とし、ごはんをおいしく食べるために、おかず、つまり「汁」と「菜」があります。お米を炊いた「ごはん」、味噌汁などの「汁」、焼きもの、煮もの、和えものなどの「菜」、そして「漬物」を組み合わせた食事が、和食の基本の形です。この基本形を使えば、自然と栄養バランスを考慮した献立になりますね。
そして「一汁三菜」とは、和食の基本の形をバランスよく考えた、献立のスタイルです。ごはんに汁もの、3つの菜(おかず)を組み合わせることで、「エネルギーになるもの」「体をつくるもの」「体の調子を整えるもの」という3つの栄養素をバランスよくとることができますよ。とはいえ、料理をつくる側としては、「一汁三菜」は結構ハードルが高いですよね…。
■和食のマナー「基本のき」
大人世代であれば、お箸を箸置きから持ち上げる際の正しい所作は、知っていて当然…なのですが、実は残念なのはその後。お箸をもったまま器を手に取るひとが意外に多いのです。これは美しい所作とは言えません。食事をする間、お箸よりも先に取るべきは、ご飯茶碗や味噌汁椀、小鉢などの器です。改めて所作を確認しておきましょう。
1)器を両手で持ち上げる
2)持ち上げた器を左手のひらにのせる
3)箸を右手で取り上げ、器下の左手の人差し指と中指の間で箸先を挟む
4)右手を滑らせて箸下に移動させ、箸を持つ
5)箸先を左手からはずて料理をいただく
器を置くときはこの逆の手順になりますね。器を持ったまま、左手の指で箸先を挟んで右手でつまむように持ち、先に箸を置いてから器を両手で置きます。
意外に知らない人も多いのですが、食事中、汁物を食べる時以外は、左手にご飯茶碗を持ったまま、おかずをいただいてもマナー違反にはなりません。ご飯茶碗を左手に持って、ご飯とおかずを交互に口に運びます。この食べ方にはおかずをご飯とともによく噛むことで消化を助け、何より一緒に噛んで口中調味することでよりおいしく食べることができるというメリットもあります。とくに家庭料理はご飯とおかずを交互にいただくと、おいしいですよね!
■「和食の日」である11月24日は、二十四節気では「小雪」
古代中国でつくられた季節の区分法として知られる二十四節気では、11月24日は「小雪(しょうせつ)」にあたります。「小雪」とは「雪が降り始めるころ」という意味。「小雪」に入る日を指す場合と、「小雪」にあたる期間を指す場合があります。2025年は11月22日。期間としては22日から12月6日までの15日間です。
「小雪」に旬を迎える食材といえば、大根や春菊、野沢菜など。大根は今はほとんど青首系が主流ですが、江戸時代は各地域で品種改良が行われ、漬物用の練馬大根、薬味用のねずみ大根など、年間を通して利用するため、冬だけでなく三月大根、夏大根、秋大根などが栽培されていたそうです。江戸の味覚は白米、豆腐に大根を加えた「三白」に集約されるとされ、どれも淡泊でデリケートな味わいであることが共通しています。江戸後期には大根の材料別料理書『大根一式料理秘密箱』『諸国名産大根料理秘伝抄』が出版された程、日本人の「大根好き」は筋金入り!
大根には、ビタミンC、カリウム、食物繊維などの栄養素が含まれており、特に葉にはビタミンA、β-カロテン、ビタミンK、カルシウム、鉄分などが豊富です。また、デンプンを分解する酵素であるアミラーゼや辛味成分のイソチオシアネートも含まれ、これらは消化を助けたり、生活習慣病の予防に役立つと言われていますよ。
■寿司のルーツは発酵食品
日本を訪れる外国人観光客からも絶大な人気を誇り、和食の象徴ともいえるお寿司。そのルーツは、アジア食文化圏に古くから存在した“魚を発酵させて保存する”食習慣にあります。
弥生時代に日本へ伝わったのち、塩漬けの魚と米麹を長期間発酵させる「なれずし」へと発展。琵琶湖名物の「鮒ずし」、加賀の「かぶらずし」、秋田の「鮎ずし」などは、いずれもこの系統にあたります。
江戸時代に入ると、発酵を待つ手間をぐっと省いた「押しずし」が登場。酢をまぶした魚と米を重石で短期熟成させたもので、主に小鰭(こはだ)や鯛が用いられていました。さらに江戸後期には、江戸湾で獲れた新鮮な魚を
酢飯にのせて素早く握る、現在の握りずしの原型が生まれます。まさに“江戸前のファストフード”。当時の握りは、ネタ自体に味をつけて提供され、醤油をつける手間さえいらない実用的なスタイルでした。
はじめは岡持(料理を入れて持ち歩く平たい桶)で売り歩く形でしたが、その手軽さとおいしさから評判が広まり、やがて屋台文化として大流行。ただし当時の寿司は、格式張った料理ではなく、町人文化の中で親しまれる“日常的で気軽な食べもの”という位置づけ。武家や上流階級が正式な場で食べる類いのものではありませんでした。
■和食の盛り付けの基本はアシンメトリー!
和食の盛り付けの特徴のひとつが、「アシンメトリー(左右非対称)である」という点です。左右が対称(シンメトリー)になっていると見た目は安定して落ち着きますが、これでは、和食らしい盛り付けではなくなってしまうのです。
和食らしい盛り付けにするには、左右非対称に盛り付けるのですが、注意すべきは、左右非対称に盛り付けながらも、バランスを取っていくこと。大きさ、形、量、色合いを組み合わせ、均衡を保つことでバランスよく盛り付けていくのです。季節に応じた器の選択や、いつ、誰が、どこで、どのような状態で食べるのかも重要なポイントです。
■「和食」と切っても切れない「和包丁」
和食の美しい盛り付けを支えているのは、和包丁です。この和包丁、何種類あるのか、ご存知ですか? 菜切包丁をはじめ、鎌型包丁、刺身包丁、薄刃包丁、出刃包丁などなど、その種類は30を超えるそうです。もちろん洋包丁も、牛刀やカービングナイフ、ペティナイフ、パン切ナイフなど各種あるとはいえ20種程度。ましてや中国料理に至っては、身幅の大きな万能包丁1本でほぼ全ての食材を処理してしまいます。
和包丁の種類が豊富な理由は、和食はそれだけ食材に対して繊細なものだから。例えばマグロ包丁、ウナギ包丁、ハモ包丁、フグ包丁、タコ包丁など、魚介によって専用包丁があるのは、細胞を壊してうまみを逃さないため。また、麺切り、すし切り、豆腐切り、菓子切りのように、切る食材によって専用包丁があるのは、切り口を潰さず独特の食感を守るためでもあるのです。
和包丁の大きな特徴のひとつは、「片刃」であること。現在の一般家庭で使われているのは、野菜も魚も肉も1本でさばける文化(三徳)包丁と呼ばれるもので、こちらは洋包丁と同じ両刃包丁です。和洋両刀の文化包丁が定着したのは、和食と洋食が混在する日本人の食生活の象徴と言えるでしょう。
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海・山・川——多様な自然に恵まれた日本では、四季ごとに移ろう旬の食材と、長い時間をかけて育まれた発酵文化が、私たちの食卓を豊かにしてきました。
11月24日は「和食の日」、そして11月は「和ごはん月間」です。忙しさに追われがちな大人の私たちこそ、改めて“和食という知的資産”と向き合う絶好のタイミングです。季節の香り、丁寧に引いた出汁の深み、米の甘さ——。ひとつひとつの味わいに耳を澄ませると、自然と心が整い、生活のリズムまでやさしく整っていくはず。
ぜひ、この11月を、もう一度「和食の価値」を見つめ直す一か月にしてみてください。日々の小さな気付きは、毎日の豊かさを育んでくれます。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:政府広報オンライン(https://www.gov-online.go.jp/data_room/calendar/202411/event-2692.html#) /農林水産省「食文化のポータルサイト」(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/) /一般社団法人和食文化国民会議(https://washokujapan.jp)/ 一般社団法人日本記念日協会(https://www.kinenbi.gr.jp)/Yomeisyu「和食の雑学」(https://www.yomeishu.co.jp/genkigenki/trivia/131226/index.html)/『一日江戸人』(新潮文庫) :

















