連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、世界に比べて遅れをとっている日本の性教育を変えたいと、保育園から大学、その保護者、教職員などを対象に出張授業で正しい性への知識を伝え続けている、性教育アドバイザー・助産師の高野しのぶさんにインタビュー!

高野さんが性教育アドバイザーとして、独立してこの仕事を選んだきっかけは、助産師時代に経験した悲しい体験からでした。出張授業にかける思いについて、詳しくお話しをうかがいました。

高野しのぶさん
性教育アドバイザー・助産師
(たかの しのぶ)’01年に看護師免許を取得。’02年聖母会聖母病院に入職する。’03年に助産師免許取得。’08年に横浜市民病院へ入職し、さまざまな出産・手術に携わる。’19年4月から性教育出張授業を開始。’24年4月、「横浜から日本の性教育を変える」を掲げて「en」を設立。地域の子供たちの居場所づくりのために、子ども食堂「しのぶ食堂」も運営している。

【Yokohama】出張授業で日本の性教育を変える!心と体を守るのは “正しい知識” です

性教育アドバイザー・助産師の高野しのぶさん
性教育アドバイザー・助産師の高野しのぶさん。

「生きてるだけで100点満点なんだよー!」

小学校の体育館で、高野さんは子供たちに向かって何度も言った。5・6年生を対象にした性教育出張授業。射精や月経、プライベートゾーンのこと、性被害について、LGBTQについて、明るくよく通る声で45分間喋りっぱなし。保護者を対象に2時間みっちり講演したあととはとても思えないエネルギー! 中学生には受精の仕組み、性感染症、避妊具のことも。年齢に応じて必要な知識を伝える。

「助産師として病院勤務をするなかで、10代前半の女の子の望まないお産に立ち会いました。新しい命の誕生を誰も喜べない。本当に辛い経験でした。あんな思いをさせてはいけない。性について正しく知って、体を、心を大切にしてほしい。その一心で、お話ししています」

助産師の仕事のかたわら’19年から性教育授業を始めた。小中高校の子供たちだけでなく、その保護者や教員、教職課程の大学生も対象だ。父親だけを集めて話すこともある。

「日本は世界に比べてすごく遅れていて、性教育というと性器や性交の話だととらえられがちです。性の話題を隠したり、遠ざけたりすることが、子供を守ることだと思っている。でも、現代のような情報社会では、小学生でも簡単に性の情報を得ることができます。たとえそれが誤った情報だとしても、です。必要なのは、子供たちが正しい知識をもって、自分で考え、自分で選択する力をもてるようにすること。そのためには、大人も学び、変わっていかなければなりません」

依頼が激増したため、「公務員を辞めるのには勇気がいりましたけど(笑)」’24年4月に勤めていた病院を退職し、性教育アドバイザーとして独立。半年間で74講演、約1万4000人に話をし、今後もますます数を増やす。

「授業では、受精卵のサイズの穴を開けたハートのカードをプレゼントするんです。自分って頑張って生まれてきたんだな。そう実感できれば、自分を、人を大切にできるから」

◇高野しのぶさんに質問

Q.朝起きていちばんにやることは?
筋トレ10分! 今も週に数日は助産師の仕事をしているので体力づくりは欠かせまん。
Q.人から言われてうれしいほめ言葉は?
「会うと元気をもらえます!」
Q.急にお休みがとれたらどう過ごす?
直感で「今会わなきゃいけない!」「今会いたい!」と思う人に会いに行く。ひとりで過ごすことはありません。
Q.仕事以外で新しく始めたいことは?
ゴルフ。周囲の知り合いがやり始めたので。多動の私でもできるのか試してみたい(笑)。
Q.10年後の自分は何をやっている?
娘が助産師、息子が教師になるので、親子でコラボして性教育を広めている。
Q.自分を動物にたとえると?
マグロ。つねに! 即! 行動! 止まりません!

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PHOTO :
望月みちか
取材・文 :
剣持亜弥