連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、イギリス・ロンドンにある国立近現代美術館「テート・モダン」のディレクターを務める、カリン・ヒンスボーさんにインタビュー。

’17年にノルウェー「オスロ国立美術館」のディレクターとして、欧州最大規模となる美術館を新生させるという大仕事を成し遂げたカリンさん。今年、開館25周年を迎え、記念のプログラムが目白押しとなる「テート・モダン」での挑戦について、詳しくお話しをうかがいました。

カリン・ヒンスボーさん
「テート・モダン」ディレクター
(Karin Hindsbo)デンマーク生まれ。’17年にオスロ国立美術館、建築博物館のディレクターに就任。装飾美術・デザイン博物館、現代美術館などノルウェーのアート機関を統合した新生・オスロ国立美術館を立ち上げる一大プロジェクトを手掛け、脚光を浴びる。「テート・モダン」のディレクターに抜擢され、3人の子供を含む家族でロンドンへ移住。’23年9月より現職。

【London】新天地は「テート・モダン」!アート界で活躍を続けるトップキャリア

「テート・モダン」ディレクターのカリン・ヒンスボーさん
「テート・モダン」ディレクターのカリン・ヒンスボーさん

’00年、国を挙げてのミレニアム・プロジェクトのひとつとして開館した「テート・モダン」。テムズ川沿いに立つレンガづくりの建物はかつての火力発電所で、巨大な煙突がシンボルだ。カリンさんは’23年にこの美術館にやってきた。前職はノルウェーのオスロ国立美術館のディレクターで、欧州最大規模の美術館を新生させるという大仕事だった。

「デンマークで生まれ、芸術史をデンマークとドイツで学び、その後デンマークに戻って美術館で働いて、次はノルウェーに11年間、今はイギリスにいます。最近は、自分のホームがどこかわからなくなってきました(笑)」

「テート・モダン」を含む4つの美術館を運営するテート・グループは、うち3館で、女性がトップを担っている。ロンドンのみならず、世界のアート界に新風を吹き込む存在であることは、カリンさんも強く意識する。

「私の前任者も女性で、多くの女性アーティストの作品をキュレートしてきました。それを引き継ぎ、さらにはナイジェリアのモダン・アートや、オーストラリアのアボリジニ・アートなど、いまだアート界で語られていない作品を紹介していくことが、私に期待されていることだと思っています。サステイナビリティやダイバーシティといった社会的なメッセージも積極的に発信していきたい」

転職に伴う渡英を決意する前に、夫と10代の子供たちと家族会議を行ったという。

「ひとりでも嫌だと思うならイギリスには行かない、と。返事はみんなイエス! 家族で移住することになりました。人にはそれぞれ、自身の人生のオーナーシップがある。それを尊重し、コミュニティの感覚を大切にしながら全体を見渡すのが、私のモットーです。美術館の運営も同じ。スタッフに、そして美術館を訪れる人々に寄り添って、何ができるかを考えれば、必ずよい方向に進んでいける」

「テート・モダン」は開館25周年を迎え、記念のプログラムが目白押しの一年。挑戦は続く。

◇カリン・ヒンスボーさんに質問

Q.朝起きていちばんにやることは?
コーヒーを飲みながら15分ほど考えごとをする。コーヒーがなければ一日が始まらない。
Q.人から言われてうれしいほめ言葉は?
「あなたからのアドバイスでこんなことをやり遂げられた」。自分の助言が人のためになるのがうれしい。
Q.急にお休みがとれたらどう過ごす?
家族でロンドンの街をウォーキングしながら、博物館や名所を巡る。
Q.仕事以外で新しく始めたいことは?
ロンドンをいろいろな角度から探訪。
Q.10年後の自分は何をやっている?
今、この瞬間を精一杯生きるのが私のモットー。10年後のことは考えられません。
Q.自分を動物にたとえると?
タカ。空の高いところからすべてを俯瞰していて、重要なことがあれば急降下して対処する。

PHOTO :
Miki Yamanouchi
EDIT :
剣持亜弥、喜多容子 ・木村 晶(Precious)
取材 :
Yuka Hasegawa