連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People
明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、スペインで屋上再生のプロデュースを展開する「アソテア・グループ」創始者の、クリスティーナ・ラスビニェスさんにインタビュー!
テレビレポーターとして活躍していたクリスティーナさんが、2013年、エコノミストの夫と共に立ち上げた「アソテア・グループ」は、マドリード市内の歴史的建物「シルクロ・デ・ベージャスアルテス」をはじめ、数多くの建物の再生に携わり、これまで誰も気にかけなかった屋上に「第二の人生」を与えています。
さらに活躍の場を広げるクリスティーナさんに、今後の展望など詳しくお話をうかがいました。
【Madrid】屋上利用で、歴史的建物に第二の生を。過去を伝え、未来への責任を果たす

スペイン語で「屋上」を意味する「アソテア」グループは、マドリード、アンダルシア、マジョルカ島の計12店舗で屋上再生のプロデュースを展開している。最初に手掛けたのはマドリード市内の中心にある建物「シルクロ・デ・ベージャスアルテス」。市民戦争の頃は “芸術家の牙城” として、文化発信の象徴的存在だった。
「人づてに、あの建物のオーナーが屋上経営に外部業者を入れると聞き、夫と共に企画を持ち込みました。当時、夫はエコノミスト、私はテレビレポーター。ほかの業者は皆飲食関係です。私たちは、他社とは異なるアプローチで、1年かけてビジョンを伝えていった。コンセプトは『建物の魂を回復する』こと」
「文化の門」であったシルクロは多国籍の人々に楽しんでもらえるような空間に。ほかにもアンダルシア州カディスにある国家警察の官舎だった建物は、かつてそこで暮らした人を見つけ出して話を聞き、往時をイメージさせる姿に。彼女が今立っているパラシオ・デ・シベテスは郵政省だった頃の面影をあちこちに配して、「第二の人生」を建物に与える。
「国内外でストーリーを語れる建物を探し続けることも重要。独自性のある、差別化のできる建物と空間。まるで宝探しのようです」
グループは、がん研究のための財団の支援を行っている。きっかけは、彼女の友人の子供が希少な白血病だったこと。特に公立病院のサポートに力を入れていることが誇りだ。
「最もサポートを必要としている人々のための財団です。今後5年間で、小児科の権威であるパス病院に、小児がんセンターをつくることが目標。地方に住んでいる小児がん患者が、首都の患者よりも死亡率が高いなんてありえないこと。その格差もなくしたい」
シルクロに企画を提出した15年前、屋上は誰も気にかけない場所だった。それが今では「マドリード・アル・シエロ(マドリードから空へ)、なわけ」といたずらっぽく笑う。首都を讃える常套句が、新しい時代を告げる。
◇クリスティーナさんに質問
Q. 朝起きていちばんにやることは?
11歳の娘と9歳の息子の部屋に行き、キスをして電気をつけ、「シャワーを浴びなさい!」と号令をかける(笑)。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
「いい人ね」。父もよく「人の役に立つ人間になれ」と言っていました。
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
マドリードから1時間ほどの別荘へ。暖炉に火をつけて本を読む。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
仕事以外ではないですが、小さな映像制作会社を始めました。音楽のドキュメンタリーをつくりたい。
Q. 10年後の自分は何をやっている?
小児がんの新しいセンターを訪ねる自分が見えます。小児がん患者が集まれる場所をもっとつくりたい。
Q. 自分を動物にたとえると?
ワシ。いつも屋上を探しているから(笑)。
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- PHOTO :
- Javier Penas
- 取材 :
- Yuki Kobayashi