さまざまな文化の発祥地であり、自然に囲まれていて食材の宝庫としても知られている奈良。緑豊かな奈良公園の西端にあるラグジュアリーホテルが「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」です。JR、近鉄各線の奈良駅からほど近く、タクシー利用なら数分で到着します。

昭和初期に建造された門をくぐり、ホテルのメイン棟へと足を踏み入れます。ホテルのコンセプトは「伝統と現代の結び」。大正期に建築された木造平屋建ての「奈良県知事公舎」を改修し、保全活用したホテルとしても話題となりました。
杉戸の前に配されているのは「REBONSAI」。古いものと新しいものがうまく組み合わされ、いにしえより受け継がれる奈良の情景と、現代の魅力を併せ持っています。

格天井など贅沢な造りのラウンジへ通され、チェックイン。食事やスパなどのアクティビティの確認をし、コンシェルジュと旅の相談などもこちらで。

メイン棟は昭和天皇が「サンフランシスコ講和条約批准書」に署名した「御認証の間」などさまざまな歴史の舞台となった場所があり、案内されながら庭園を抜けて宿泊棟へと向かいます。
チェックインしたら、天然温泉で旅の疲れを癒す
客室棟は2棟あり、いずれも2階建て。全43室のうち、スイートルームを含む23室には天然温泉が配されています。行灯がともるほの暗い廊下を通り客室へ。客室のドアを開け、室内へと歩みを進めるとともに明るくなっていきます。
今回、滞在したのは、木目調の家具と緑色のカーペットが奈良の自然と調和するようにデザインされた「デラックスルーム(温泉風呂付き)」。

ベッドルームとバスルームを隔てるのは、旧奈良知事公舎の内蔵にある「いばら」のアーチ。ベッドのヘッドボードは、贅沢にも名栗加工が施されています。
窓辺に天然温泉風呂を設え、窓の外には庭園の緑。檜が配されたバスタブにはたっぷりと湯が満たされていて、今回も、まずは湯あみと参りましょう!

シャンプーやソープなどのバスアメニティはスウェーデン発の「BYREDO(バイレード)」が置かれ、奈良発の和漢発酵スキンケア「THERA」が用意されているのも嬉しい。


湯上りには、大和当帰など奈良県産のハーブをブレンドしたお茶で一服しました。

湯上りにベッドに身を横たえ、いばらのアーチの先にある緑を眺めていると、旅の疲れを忘れ、ついうとうと…。すっかりリラックスしてしまいました。
夕刻のシャンパーニュを楽しみ、お鮨ディナーへ
夕刻は敷地内にある茶寮「世世(ぜぜ)」へ。江戸時代に建立された旧興福寺子院「世尊院」を改修した建物です。
シャンパンのフリーフロータイムは、宿泊ゲストのみが享受できるおもてなし。奈良公園内に身を置いて、庭園の自然を目にシャンパーニュでのどを潤すという贅沢なひと時が過ごせます。ノンアルコールのロゼスパークリングワインもあり、ノンアル派も一緒に楽しめます。

アペリティフを楽しんだら、ディナーをいただきにメイン棟にある「正倉」へと向かいます。
いばらのアーチを抜けると現れるのは、1922年建造の奈良県知事公舎の内蔵を活用した、カウンター8席のみの特等席です。

カウンターの向こうで迎えてくれたのは、和食料理長の平山和樹さん。予約しておいたコース「古櫃(KOKI)」は、平山さんにおまかせのイノベーティブな鮨コース。おつまみと握りを組み合わせた12品が楽しめます。
まずは、シャンパーニュ「ルイナール ブラン ド ブラン」で乾杯し、アミューズを。料理が供されるたびに、平山さんから今日の食材や調理法といったストーリーが語られます。

平山さんは、旬の食材を使い、和食や鮨など料理のジャンルにとらわれることなく、さまざまな調理法を駆使して料理を作り上げます。フランス料理の技法である「デクリネゾン」を取り入れ、ひとつの食材を異なる料理に、あるいは温度帯を変えて仕上げてくれるのも特徴。
アブラメを造りとから揚げに。同じ食材を異なる仕立てで味わう「9℃と180℃」。温度と食感、甘みや味わいの違いが楽しめました。


コースを通して、ホテル所蔵のアンティークの器や奈良・大和郡山に代々続く赤膚焼・香柏窯の器が使われ、目も楽しませてくれます。
料理に合わせてアルコールのペアリングをお願いしました。料理との相性と、ゲストの好みや酒量に合わせてソムリエが提案してくれます。ワインに加えて、奈良の日本酒なども。その日の料理に寄り添うセレクションでした。
奈良を感じる体験とスパトリートメントで心身を癒す
ホテルにつながる「吉城園」は万葉集にも詠まれた「宣寸川(吉城川)」に隣接する庭園です。自然の起伏や曲線を巧みに生かし、季節を通じてさまざまな草花が楽しめるのも魅力です。滞在中に訪れて日本庭園をゆっくりと巡ったら、心が和みました。

今回は、毎週月曜の朝、「吉城園」の主棟にて開催されるアクティビティ「墨を磨る」に参加しました。
奈良の伝統工芸品である「奈良墨」を無心で磨る時間は、自分と向き合うひと時となり、墨の香りに癒されていくのを感じました。磨った墨を筆に含ませて、半紙の上を自由に動かしていきます。
「文字」にとらわれることなく筆を自由に動かすのは思いのほか楽しく、外国人にも人気のアクティビティということです。


さらに、スパ棟「瑠璃」に2室のみのスパルームでのトリートメント体験も宿泊者のみの贅沢。天然温泉の露天風呂が設えられ、自然を感じながらのプライベートな湯あみで体を温めてからトリートメントへという流れです。

奈良の豊かな自然の恵みや、シルクロードを経てその昔、奈良にもたらされ受け継がれてきたスパイスやハーブ、薬草を使うホリスティックなメニューが受けられます。


香りに包まれながらのオールハンドのトリートメントで全身をくまなくケアされ、また、ついうとうと…。トリートメント後は至極スッキリ。パワーチャージもできたような気がしました!
やはり今回も2泊3日ののんびりステイがちょうどいい。コンシェルジュと話をしていたら、さらに数泊して、奈良の自然を満喫したり、まだ知らぬ歴史を探訪するというアクティビティに参加するのもよさそうです。再訪を誓ってホテルを後にしました。
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- TEXT :
- はまだふくこさん ライフスタイルジャーナリスト
- WRITING :
- はまだふくこ