連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、「小中学生から通えるレディースクリニック」を掲げる「Inaba Clinic」院長の稲葉可奈子さんにインタビュー!

4人の子育てをしながら、「産婦人科を受診するハードルを下げたい」と取り組む稲葉さんに詳しくお話しをうかがいました。

稲葉可奈子さん
産婦人科医・「Inaba Clinic」院長
(いなば かなこ)京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得。診療のかたわら病気の予防や性教育、女性のヘルスケアに関する情報を発信している。「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」代表。’24年には男性医師や企業に勤める男性たちに向けた『シン・働き方〜女性活躍の処方箋』(きずな出版)を上梓した。双子を含む4児の母。

【Tokyo】我慢しないで気軽に受診を!産婦人科のハードルを下げる挑戦

産婦人科医・「Inaba Clinic」院長の稲葉可奈子さん
産婦人科医・「Inaba Clinic」院長の稲葉可奈子さん

「とにかく産婦人科を受診することのハードルを下げたいと思いました。歯が痛かったらみなさんすぐに歯医者に行きますよね? 生理痛でも更年期症状でも、少しでも辛かったら受診してほしいのに、『これくらいで』『みんな我慢してるから』と思う人が多くて」

勤務医時代からメディア出演などあらゆる機会に「年齢を問わずかかりつけの産婦人科医をもちましょう」と呼びかけてきた。しかし、自身が勤務する総合病院は紹介状がなければ診られないというジレンマが。そこで自身のクリニックを開業することを決意。場所は渋谷駅直結の、アパレルやビューティショップが並ぶ人気の商業ビル。「小中学生から通えるレディースクリニック」を掲げる。

「産婦人科といえば路地を1本入ったところにある雑居ビルの中、というイメージも払拭したかった。意を決して受診するのではなく、学生さんでも、買い物ついでに相談してみようかなと思えるクリニックをつくろうと。意外だったのは、地方からわざわざいらっしゃる方も多いこと。みなさん、ネットなどで探してこられるんです。娘さんが生理痛で困っているのに『小学生の診察はNG』と言われたケースもあるとか。本当に申し訳ない」

「セルフケア推し」にも警鐘を鳴らす。

「規則正しい生活でストレスをためすぎないようにセルフケアを、というムードがある。逆にいえば、セルフケアを怠っているから体調が悪いんでしょ、と。でも、ケアでコントロールできるわけではない。『自分のせい』と思わせては絶対にダメ。とにかく気になったら受診する。我慢しなくていいんだということを、老若男女問わず日本中の常識にしたい」

4人の子を育てながら仕事を続けている。

「女性だって、仕事も育児も頑張っていいんです。ロールモデル的な先輩が教えてくれました。私は今まで一度も、産婦人科医になったことを後悔したことはありません」

迷いのない笑顔が、全女性の心を軽くする。

◇稲葉さんに質問

Q. 朝起きていちばんにやることは?
コーヒーを…と言いたいところですが、前日の家事の残りを片付けるところから一日が始まるのが現実(笑)。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
「先生のおかげで元気になりました」。「今まででいちばん痛くない内診でした」もうれしい。
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
旅行。マダガスカル島とかアイラ島とか。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
絵が好きでずっと描いていますが、油絵はやらずにきたのでやってみたい。
Q. 10年後の自分は何をやっている?
もう1段、社会で女性が健康に活躍できるような働きかけをしていたい。
Q. 自分を動物にたとえると?
イソギンチャクと共生するクマノミ(ニモ)。いろんな人と連携したり、助けてもらったりしているので。

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PHOTO :
望月みちか
取材・文 :
剣持亜弥