日本美術の知られざる「鉱脈」を掘り起こす!若冲×応挙の新発見屏風も大きな話題に
大阪・関西万博を機に、日本美術関連の展覧会が多数開催されるなか、「こんな作品、見たことない!」という驚きがいっぱいの企画展が登場。新たなスターが発掘され、新しい美術史が誕生する瞬間を見届けたい!
展覧会の見どころについて、美術史家、明治学院大学教授の山下裕二さんにご紹介いただきました。
【今月のオススメ】伊藤若冲×円山応挙の合作屏風
伊藤若冲と円山応挙は、同時代の京都を生きた絵師。しかしこれまで、ふたりが交流したという記録はなかった。ところが、本展を企画準備中に、同じフォーマットの金屏風作品が突然出現。若冲は鶏、応挙は鯉と、それぞれが得意とする画題を描いており、「合作が新発見!」と大きな話題を呼んだ。
使われている金箔の質もまったく同一、紙の継ぎ方も左右対称で、おそらく注文主が屏風を仕立てて、京都で1、2の人気を誇ったこのふたりに依頼したものだろうと考えられている。

’00年に京都国立博物館で開催された「没後200年 特別展 若冲」に、1か月で9万人もの人が訪れたことを皮切りに、空前の若冲ブーム、日本美術ブームが起こりました。’16年の東京都美術館「生誕300年記念 若冲」展には46万人もが詰めかけ、入室まで5時間待ちという驚異的な事態にまでなったこと、記憶にある方もいらっしゃるでしょう。’21年には作品が国宝指定され、すっかり美術界のキラーコンテンツになった「若冲」。しかし、かつては、名前すらまともに読んでもらえないほど、その存在は長い間「知られざる鉱脈」だったわけです。

そういう、ほとんど注目されていないけれど素晴らしい画家や作品を掘り起こし、多くの人に紹介するのも、美術史家としての大切な仕事。そこで今回、「日本美術の鉱脈」展と題し、縄文から現代まで、まだまだたくさん眠っている知られざる鉱脈を集めた展覧会を企画しました。縄文土器、室町時代の水墨画、中世の素朴絵、奇想と呼ばれる江戸絵画、明治の超絶技巧工芸など、個性溢れる作品ばかり。日本美術の展覧会といえば「国宝○件!」が定番の惹句ですが、ここにあるのはどれも「未来の国宝」候補。ぜひ、ご自分の眼で探し当ててください。
美術史は淀むことなく、つねにアップデートを続けなければいけない。鉱脈を探し続けていると、「まさか!」というような出合いがあります。若冲と応挙の合作屏風が存在したなんて思いもよらなかったし、牧島如鳩もまったく知らずに観て驚愕しました。日本美術、マジでアツいですよ!(談)
【こちらもオススメ】牧島如鳩 『魚籃観音像』

魚を入れた籠を持つ魚籃観音の周りに聖母や天使、菩薩が集まる、神仏共存の超個性的な宗教画。ハリストス正教会の伝教者として聖像を描くイコン画家であった牧島如鳩の大作で、福島県小名浜の大漁祈願のため描かれた。
◇Information『日本美術の鉱脈』展 未来の国宝を探せ!
戦災によって焼失したとされている若冲の幻のモザイク屏風を、1枚の小さな白黒図版を手がかりに2年をかけてデジタル推定復元した『釈迦十六羅漢図屏風』も必見。
開催期間:2025年6月21日(土)〜8月31日(日)
会場:大阪中之島美術館
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- EDIT :
- 喜多容子(Precious)
- 取材・文 :
- 剣持亜弥