東京・竹芝のモダンラグジュアリーホテル「メズム東京、オートグラフ コレクション(以下、メズム東京)」。ホテル16階にあるバー&ラウンジ「ウィスク(Whisk)」は、芸術家のアトリエ(工房)をコンセプトとしており、絵画をモチーフにしたオリジナルミクソロジーカクテルなどをいただくことができます。

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バー&ラウンジ「ウィスク(Whisk)」

「ウィスク」では、「“TOKYO WAVES”アフタヌーン・エキシビション」と題した、名作絵画や芸術品に着想を得たスイーツ、セイボリーなどを提供するアフタヌーンティーが好評を博しています。

その第14弾として、特別アフタヌーンティープログラム「冨嶽三十六景 前期」を、2025年8月31日(日)までの期間限定で展開中。東京・墨田区にある「すみだ北斎美術館」との初のコラボレーション企画です。

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“TOKYO WAVES”アフタヌーン・エキシビション チャプター14「冨嶽三十六景 前期」¥7,000(税・サービス料込み)

アフタヌーンティーは、「すみだ北斎美術館」が所蔵する浮世絵師・葛飾北斎の名作「冨嶽三十六景」がテーマになっており、目でも舌でも楽しめるスイーツやセイボリーが並びます。

今回Precious.jpのライターが、メニューを担当したパティシエとクリエイティブディレクターにじっくりとお話をお伺いしながら、アフタヌーンティーを体験させていただきました。本記事ではライターの実食レポートを通して、メニューを詳しくご紹介します。

特別アフタヌーンティープログラム「冨嶽三十六景 前期」実食レポート

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冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」

1760年~1849年を生きた浮世絵師・葛飾北斎。一般的に最もよく知られる作品群である「冨嶽三十六景」は、北斎が70歳代で手がけた作品です。“三十六景”と謳いつつも作品は46点あり、それぞれ富士(=冨嶽)をさまざまな時間・季節・角度から描いた作品で構成されています。

一番有名なのが現在の千円札の図案にも採用されている「神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)」でしょうか。ダイナミックな波の様子と遠くに見える富士を描いた浮世絵は、誰しもが一度は目にしたことがあるはず。

アフタヌーンティーでは、46点の作品の中から「神奈川沖浪裏」をはじめとする12点の作品をモチーフにした、スイーツ、セイボリー、モクテルが登場します。

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「そば粉のガレット」と「ゆずと抹茶のモクテル」

アフタヌーンティーの前には、アペタイザー(前菜)としてセイボリー、モクテルが運ばれてきます。北斎が生きた江戸時代に広く食されていた蕎麦とお茶をモチーフにしたアペタイザーで、まるで本物のお蕎麦と抹茶のような見た目ですが、実は「そば粉のガレット」と「ゆずと抹茶のモクテル」です。

蕎麦は、北斎が創作の合間によく食べていたそう。今回は「そば粉のガレット」をまるでお蕎麦のように細く切り、卵・オニオン・ベーコンを焼き上げた具材を忍ばせています。

また、健康に気を使っていたとされる北斎は、ゆずを使った“薬”を自ら調合していたと言われています。そんな北斎の食生活にちなんで作られたのが「ゆずと抹茶のモクテル」です。

お茶の味を想像しながらいただくと、冷たくて爽やかで酸味の効いたモクテルの味とのギャップに驚きます。抹茶の味は、ゆずの清涼感のある味わいの中にほんのり香る程度。抹茶の泡が卵白で表現されており、やさしい口当たりが特徴です。すっきりとした味わいは暑い夏のひとときにうれしい一杯でした。

世界観たっぷりのアフタヌーンティーが登場

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「Whisk」の文字が入った大きな箱

アペタイザーののち、横長の大きな箱が運ばれてきます。そのふたには「Whisk」の文字。実はこれ、アフタヌーンティーを手がけるクリエイティブディレクターの小泉堅太郎氏がなんとひとつひとつ手作りした什器。「監修」ではなく本当に「ディレクターの手作り」というところにも驚きました。細部までこだわりが感じられます。

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写真ではわかりにくいですが、白いスモークが上がっています

ふたを開けるともくもくと白いスモークとともに、アフタヌーンティーメニューがお目見え。カクテルなどにも使われる「ブラスター」を活用した煙で、ほんのりスモーキーな香りが漂います。まるで玉手箱を開けたときのような、世界観にゆっくりと惹き込まれる演出が素敵でした。

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アフタヌーンティーが出揃いました

ボックスには「神奈川沖浪裏」が描かれており、荒々しい波と富士を背景に、11種類のスイーツが並びます。

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レモン&ミントコーディアルのモクテル

スイーツとともにいただくのは「神奈川沖浪裏」をテーマとした「レモン&ミントコーディアルのモクテル」。美しい青色のドリンクに、泡立つ泡が印象的です。

ブルーキュラソーをベースとしており、レモンピールとミントを使った自家製のシロップが爽やかな味わいを演出。泡の部分にはソルト&ライムが使用されています。混ぜていただくことで、爽やかな口当たりの中に、ライムの風味やほんのり塩味を感じる夏らしい一杯が完成します。

浮かべてあるレモンピールは、浮世絵にも描かれている「波にさらわれる舟」を表現しているそうですよ。

スイーツは11種類

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11種類のスイーツは左からいただきます

スイーツは11種類で、それぞれのスイーツひとつひとつが「冨嶽三十六景」の作品をテーマとしています。パティシエ(キュリナリーアーティスト)の養父直人シェフに、それぞれのメニューのこだわりをお伺いしながらいただきました。

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「グラニテ ミルク」

最初はグラススイーツ「グラニテ ミルク」。雪化粧の朝、澄んだ空にそびえる富士を描いた「礫川由雪ノ旦(こいしかわゆきのあした)」という作品をテーマにしています。

透明感のある新雪を、牛乳とカルピスを合わせて作ったシャーベットで表現。富士を眺める着物を着た女性をチェリーで、雪が積もった緑の木々をグラニテに混ぜたパセリで表現しています。シャリッと軽やかなグラニテはまさにすぐに溶けてしまいそうな淡雪のよう。味わいは、グラニテの中に忍ばせたドライキウイの酸味がアクセントになっています。

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「シガレット ヘーゼルガナッシュ」

「シガレット ヘーゼルガナッシュ」は、大きな桶越しに富士を望む「尾州不二見原(びしゅうふじみがはら)」という作品がテーマです。まさに絵の中から抜け出してきたかのような大きな桶は、香ばしいクッキー生地のシガレットで表現されています。

桶の中に描かれている人物は、ヘーゼルナッツを使ったガナッシュで表現。濃厚かつしっかりとした味わいのチョコレートは、シガレットと一緒に食べると絶品です。どこから食べようか迷ってしまうフォルムですが、シェフによれば「思い切って割って食べてください」とのことでした。

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「ライチゼリー」

浅瀬に立つ鳥居と水辺の情景を描いた「登戸浦(のぶとうら)」がテーマの「ライチゼリー」。爽やかな口どけのライチゼリーに、サクッとしたメレンゲの鳥居が添えられています。

クリエイティブディレクターの小泉氏によれば、今回、すべてのスイーツに共通して「敢えて派手な色彩を避け、北斎のおだやかな絵を表現」することにこだわったそう。北斎の抑制された色使いや、構図の妙、余白の美しさにインスピレーションを受けたメニューは、まさに北斎の世界観そのものに敬意を払ったアフタヌーンティーと言えそうです。

「ライチゼリー」も、全体的に淡い色合いで作られています。実際に「登戸浦」の絵は水辺も鳥居も白に近い色彩で描かれており、忠実に彩りが表現されたひと品です。

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「チーズサブレ とうもろこしパウンドケーキ」

甘いスイーツが3品続いた後は、ほんのり塩気のある「チーズサブレ とうもろこしパウンドケーキ」が登場。こちらは「東都浅草本願寺(とうとあさくさほんがんじ)」をテーマとしています。

キャンバスからはみ出すほど大きな本願寺の屋根と、遠くに見える富士の対比が印象的な浮世絵「東都浅草本願寺」。お寺の屋根はとうもろこしを使ったやさしい甘さのパウンドケーキ、屋根の瓦はサクサクのチーズサブレで表現しています。パウンドケーキはつぶつぶのコーングリッツが食感と味わいに変化を加えていました。

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「チョコエクレア」

大きく描かれた富士に激しい稲妻が走るさまを描いた「山下白雨(さんかはくう)」がテーマの「チョコエクレア」。エクレアの名前はフランス語の「エクレール=稲妻」が由来なことから、エクレアで作品を表現することが決まったそう。

アフタヌーンティーの「チョコエクレア」は、濃厚なチョコレートが口いっぱいに広がる、チョコレート好きにはたまらないひと品。転写シートを使って描かれた稲妻は、絵画の稲妻と同じ形をしています。この形は「すみだ北斎美術館」のロゴマークにもなっています。

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「タルト・オ・ピニョン」

力強く青々と茂る松と富士、人々の暮らしの営みを描いた「青山円座松(あおやまえんざまつ)」をテーマにした「タルト・オ・ピニョン」。松の実を使ったタルトレットです。

美しい松の色彩は抹茶を使ったアーモンドクリームで表現。中にはこしあんが隠れており、和洋の味わいが楽しめるお菓子となっています。食べごたえもあっておいしいですよ。

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「黒ゴマパンナコッタ」

賑わいを見せる街に凧が上がる様子を描いた「江都駿河町三井見世略図(えどするがみついみせりゃくず)」をテーマにした「黒ゴマパンナコッタ」。クレープ状の薄いサクサクとした「パートブリック」という生地で凧が表現されたひと品です。

濃厚な黒ゴマの風味が楽しめるパンナコッタは、作中の建物を表現しています。パンナコッタの円錐型で、建物の三角形の屋根を表現しています。今にも風に吹かれて舞い上がりそうな凧の様子があらわされたアートなスイーツです。

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「レアチーズコーン」

まるでソフトクリームがひっくり返ったかのようなビジュアルのこちらは、「甲州石班沢(こうしゅうかじかざわ)」をテーマにしたスイーツ。「甲州石班沢」は、波立つ海辺で投網をしている漁師を描いた作品です。繊細に編み込んだワッフルコーンで投網を表現するなど、シェフのアイデアと遊び心が詰まっています。

クリームの部分は、爽やかな酸味が広がるレアチーズケーキ。ワッフルコーンの甘くてほんのりビターな味わいと、相性もぴったりです。

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「フィナンシェオリーブ」

「御厩川岸より両国橋夕陽見(おんまやがしよりりょうごくばしせきようをみる)」という少し長いタイトルの作品をテーマにした「フィナンシェオリーブ」。「御厩川岸」というのは将軍家の厩があった隅田川の川岸を指し、穏やかな川面の上を進む渡し舟に乗った人々が、両国橋越しに遠くの富士を眺めるさまが描かれています。

アフタヌーンティーでは、ほんのり塩気のあるフィナンシェをベースに、ドライトマトで人々を、ブラックオリーブで絵画にも描かれている傘を表現しています。甘みと塩味が絶妙なバランスです。

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「桜スコーン」

花見の名所である御殿山に咲く桜を描いた「東海道品川御殿山ノ不二(とうかいどうしながわごてんやまのふじ)」をテーマとしたスコーン。

オーソドックスなスコーンの中に桜の風味を効かせた「桜スコーン」は、クリームなどをつけなくても十分おいしいひと品。小泉氏も味に関してはイチオシ、とのこと。塩漬けの桜がスコーンにアクセントを加えます。

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「ライスババロア」

アーチ型の橋の下から富士を眺める様子を描いた「深川万年橋下(ふかがわまんねんばしした)」をテーマとした「ライスババロア」は、その名の通り、お米で作ったやさしい味わいのババロアです。お米、バニラ、シナモン、オレンジを牛乳と生クリームで炊いており、ミルクのコクとやわらかい甘みが楽しめます。

庶民の暮らしの一部分を切り取ったかのような「深川万年橋下」。川を行き交う船にはお米や野菜などの積み荷がのせられており、そんな細やかな一部分から、今回のお米を使ったスイーツが生まれています。


「絵を見るだけでなく、味わうことで、葛飾北斎の世界を楽しんでほしい。食を通して芸術を楽しみ、浮世絵の奥深さや魅力を再発見してほしい」と、小泉氏。

「冨嶽三十六景」では、46枚の絵それぞれに富士が描かれていますが、季節や時間、天候、見る場所によって、その姿はさまざまです。そんなひとつひとつの絵の多様さ、多彩さを背景に感じながらいただくアフタヌーンティーは、「おいしい」「楽しい」を超えた、ほかにはない唯一無二の食体験でした。

なお、今回「冨嶽三十六景 前期」とあるように、2025年9月1日(月)~11月30日(日)の期間は「冨嶽三十六景 後期」が予定されています。

ぜひみなさんも「メズム東京」のアフタヌーンティーを通して、葛飾北斎の世界観を存分に楽しんでみてください。また、作品に興味を持たれた方は「すみだ北斎美術館」に足を伸ばしてみるのもおすすめですよ。

問い合わせ先

  • すみだ北斎美術館
  • 開館時間/9:30~17:30(入館は閉館の30分前まで)
  • 休館日/毎週月曜日(月曜が祝日または振替休日の場合はその翌平日)、年末年始(12月29日~1月3日)
  • TEL:03-6658-8936
  • 住所/東京都墨田区亀沢2-7-2

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この記事の執筆者
フリーランスの編集者・ライター。グルメやスイーツ、ライフスタイル系の記事執筆・編集を中心として活動中。元システムエンジニア、プログラマの経験を持つ。二児の母。趣味は料理、SNS、写真を撮ること、美味しいものを食べること。麺類と辛いもの、自分のために買うご褒美スイーツが特に好き。
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EDIT :
小林麻美