連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、国内外のヨットレースに参戦した経験から、使われなくなったヨットのセイルが産業廃棄物になっている現状を目の当たりにし、それらをアップサイクルする「リセイルファクトリー」を開業した田上亜美子さんにインタビュー!

「この活動が広がり、多くのアップサイクルブランドが生まれ、もう不要なセイルは余っていない状況になればうれしい」と話す田上さんに、詳しくお話しをうかがいました。

田上 亜美子さん
「リセイルファクトリー」代表
(Amiko Tagami)ヨット歴30年。国内外のヨットレースに参戦した経験から、使われなくなったヨットのセイルが産業廃棄物になっている現状を目の当たりにし、それらをアップサイクルする「リセイルファクトリー」を開業。年に2回、MUJIcomホテルメトロポリタン鎌倉でリセイルファクトリーによるポップアップストア「セイルがつなぐ未来」を開催。

【神奈川】不要になったヨットの帆が魅力的なアップサイクル素材に!

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「リセイルファクトリー」代表・田上亜美子さん

20代の頃からヨットに乗って、数々の国際レースに参戦してきた田上さん。海を満喫しながら、同時に不要になったヨットの帆やマスト、ロープが捨てられる状況を見てきた。

「ヨットの帆は大きいものでテニスコート1面分もあります。帆の一部が破れて海に出られなくても、全部捨てるのはもったいない。どうにか活用できないかとミシンの得意な知り合いに相談したことがスタートです」

ヨットの帆をアップサイクルさせ、バッグやポーチ、デッキチェアなど多彩なアイテムを生む「リセイルファクトリー」は、ご近所の集まりから始まり着実にファンを増やしてきた。今ではアウトドアブランドとのコラボや有名雑貨店でのポップアップストアの開催、最近では空間のディスプレイにセイルを大量に使いたいとの声もかかるように。

ブランドの強みは、潤沢なセイル素材をもっていること。彼女のもとには、全国のヨットオーナーから不要になったセイルを譲るよとの申し出があるという。そもそも軽くて、丈夫、水の乾きに優れたセイル素材は、生地の市場には出回っていない。生地を使いたいと企業がヨットオーナーにもちかけても ”愛すべきひねくれもの” とも呼ばれる海の男たちは、ビジネスの話だけではなかなか首を縦には振らないのだ。ヨット経験のある田上さんが「こんな破れ方をするなんて、嵐のときにレースに出たでしょう?」など、ヨットのストーリーを聞き出すうちに、「海外の遠征から、破れた帆をコンテナに入れて届けてくれる」ほど、活動を応援してくれるようになった。

金具のカットや潮出しなどセイルの扱いは難しく、特性を生かした縫製技術も必要。複雑な工程を踏み完成したアイテムには、海を走ってきた帆の爽やかで幸せなオーラがある。

「全国にはまだまだ捨てられていくヨット素材があります。この活動が広がり、多くのアップサイクルブランドが生まれ、もう不要なセイルは余っていない状況になればうれしい」

◇田上さんに質問

Q. 朝起きていちばんにやることは?
飼っている4匹の猫にエサをやること。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
「リセイルファクトリー」のバッグは同じものがひとつとしてないところも気に入っている、というお客様の言葉。
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
現在所属している、スペインのマヨルカ島に船籍をおくチームの仲間に会いにいく。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
考え中。
Q. 10年後の自分は何をやっている?
今準備中の九州のほかにも拠点を増やし、まだまだバッグをつくっているはず!
Q. 自分を動物に例えると?
スタッフにもよく言われる、猫。気になるものを求めてあちこち寄り道したりと、自由。飼い猫たちの気持ちも自分の分身かと思うほどよ〜くわかります(笑)。

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PHOTO :
望月みちか
取材・文 :
大庭典子