日本屈指の湯量を誇る奥飛騨温泉郷に位置する「界 奥飛騨」。雄大な北アルプスの名峰に囲まれ、森林資源に恵まれたエリアに建つ、「山岳温泉にめざめ、飛騨デザインに寛ぐ宿」をコンセプトにした温泉旅館です。

界 奥飛騨は、中庭を中心に、東と西の客室棟、湯小屋棟、離れの4つの棟に分かれています。この地の温泉街には、人々が共同浴場に歩いて出かけて湯浴みするという習慣があったことから、あえて施設内を回遊したくなる造りにしているのだそう。
そんな界 奥飛騨に、Precious.jpライターが1泊2日で滞在。客室や大浴場、アクティビティなど、ここならではの魅力をお伝えします。
雄大な自然に包まれ、温泉を堪能!「界 奥飛騨」滞在レポート

入口からフロントに向かってスッと伸びる床の一本線。これは、ナラの木で川の流れを表現しているのだそう。フロントの壁のタイルは滝を、天井の折り重なるような木のパネルは、さまざまな広葉樹を集めて森をイメージ。両脇にある黒いソファは岩を表しています。
滞在の始まりから、どことなく飛騨の大自然を身近に感じられるようなしつらえに、心ひかれます。

足湯があり、宿泊者の憩いの場にもなっている中庭は、目の前に活火山であるアカンダナ山を臨みます。山に向かって石が積みあがっていく棚田のようなデザインが印象的。


足湯の後ろにはトラベルライブラリーがあり、ご当地の歴史や文化、自然、工芸にまつわる本などが置かれています。ハーブティーやコーヒーなどのドリンクも用意されているので、滞在中は多くの宿泊客がこちらでくつろぐ姿が見られました。

トラベルライブラリーの壁には、ノミやトンカチなどの大工道具が象徴的に配されています。こちらは、飛騨の木工集団が実際に使用していたものを譲り受けたのだそう。
トラベルライブラリーの椅子も、飛騨の曲木の技術を用いたもの。随所に、古くから高い木工技術が受け継がれてきた飛騨ならではの魅力が感じられるインテリアです。
客室はすべてご当地部屋「飛騨MOKU(もく)の間」

界 奥飛騨の客室は全49室。そのすべてが、飛騨の文化に触れることができるご当地部屋「飛騨MOKU(もく)の間」です。
トラベルライブラリーの椅子でも見られた、高温の蒸気で蒸した木材を型枠で曲げて成形する「曲木」という飛騨の家具によく見られる技法。その曲木をモチーフにしたヘッドボードは、ブナ、タモ、サクラ、ナラといった広葉樹のスクリーンがあしらわれ、寝台を包み込むような独特の造りに。

そのほかにも、飛騨市産の広葉樹を使用した曲木チェア、800年の歴史を持つ山中和紙の行灯、飛騨の伝統的な漆塗りである飛騨春慶を取り入れたウォールアートなど、随所に飛騨の魅力を感じることができるお部屋です。

宿泊したお部屋はさらに、露天風呂付き。濡れたまま上がれる広いソファが備わっていて、こちらに座って足湯を楽しむもよし、湯上がりに寝そべって景色を眺めるもよし。滞在中、いつでも温泉を楽しめるのがうれしいですね。
「温泉いろは」で奥飛騨の温泉について学んだあと、大浴場へ


奥飛騨温泉郷には、平湯温泉、福地温泉、新平湯温泉、栃尾温泉、新穂高温泉の5つの温泉地があり、主な泉質は4種類。温泉の色や香り、手触り、そして景観もさまざまで、湯めぐりを楽しむのにぴったりな温泉郷です。
界 奥飛騨は、そんな奥飛騨温泉郷の玄関口、平湯温泉にある温泉旅館。その歴史と共に、泉質や効果的な入浴法を湯守(ゆもり)と呼ばれるスタッフが説明してくれるのが、中庭の足湯で行われる「温泉いろは」です。
こちらでクイズを交えた楽しい解説でこの地の温泉の成り立ちや効果的な入浴法法について学んでから、大浴場に行くのがおすすめですよ、

ちなみに温泉いろはのあと、湯守おすすめの場所に連れて行ってもらえるのですが……到着したのは、歩いて2分ほどの「つるや商店」。
ここでは、界 奥飛騨とは異なる硫黄泉の源泉を見ることができます。この源泉で作っている「温泉はんたい玉子」をいただきました。ぷるんとした黄身ととろとろの白身はアツアツで、温泉の成分のためかやや塩味があり、そのままでもおいしかったです。

温泉いろはのあとは、さっそく大浴場へ。
まず内湯は、源泉掛け流しで約41.5度の「あつ湯」と、約38度で入りやすい「ぬる湯」の2種類があります。

露天風呂は、「雪の回廊」をモチーフにしたデザイン。頭上はぽっかりと穴が空いていて、昼であれば青い空が、夜であれば夜空の星が印象的に切り取られます。
雪をイメージした丸みを帯びた白い壁に囲まれて、お湯の湧く音や鳥の声を聞きながらリラックスして温泉を楽しめました。
夕食は地元食材や伝統食品を用いたご当地会席


夕食は、半個室の食事処で楽しむ会席料理。
席に着くと、目の前にはちょっと不気味にも見える「山彦人形」が。笑っているような、怒っているような、何とも言えない表情をしていますが、これは自然への畏怖の念を表しているのだそう。とがった頭は北アルプスの山並みで、色によって乗鞍岳、槍ヶ岳、笠ヶ岳、焼岳を表現しているのだとか。
飛騨の郷土民芸品で、開運・魔除けのお守りである山彦人形と共に、先付けが登場。茶わん蒸しに郷土料理のすったて、牛のしぐれ煮をあわせた一品です。
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煮物椀「鮑真薯 白葱 柚子」
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宝楽盛り
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揚げ物3種
柚子と白髪ネギでさっぱりといただける煮物椀、お造り盛り合わせや稚鮎など一口サイズの品が並ぶ宝楽盛り、そして3種の天ぷらと続きます。


メインの台の物は「飛騨牛味噌すき焼き」。すき焼きというと砂糖の割り下が一般的ですが、飛騨では味噌ベースが多いのだそう。さらに、卵ではなくとろろにつけていただく趣向です。
やわらかく旨味たっぷりの飛騨牛が味噌だれと絡み、ご飯が進むおいしさでした。


締めの甘味は、焼きマシュマロ。みたらしあんをつけて和風にいただきます。マシュマロの網の下には竹炭クランブルがちりばめられた黒ごまアイス。こちらもそのまま食べても、みたらしあんをかけてもおいしいですよ。
飛騨文化に触れるご当地楽「飛騨の匠体験」

界の各施設で展開している、それぞれの地域文化を体験できるアクティビティ「ご当地楽」。界 奥飛騨では、飛騨で長い歴史を持つ工芸技術に触れることができる、その名も「飛騨の匠体験」が、トラベルライブラリーにて行われます。


飛騨の匠の技を受け継ぐ老舗家具メーカー・飛騨産業が得意とする「曲木」の技術を実際に体験。
席には、湯に浸かって曲げられる状態になった檜の木が置いてあります。湯に浸かった檜の木はとても香り豊かで、それだけで癒やされました。
こちらを型に沿ってゆっくりと両手で押して、折れないように曲げていきます。

アーチ状になった曲木は、バッグのハンドルになります。お部屋に置いてある界オリジナルの風呂敷を結べば、和風ハンドバッグのできあがり。

界の風呂敷は施設によって色が違うため、ほかの施設の風呂敷を結んで色違いにして楽しむ方もいるそうですよ。
自分で作ると思い入れもひとしお。施設内ではもちろん、温泉街の散策にも持っていきたくなるバッグです。
オリジナルの体操で体を動かしてから朝食を

界では、それぞれの施設に「現代湯治体操」というオリジナル体操があります。地域文化を取り入れた動きなどを交えた現代湯治体操。界 奥飛騨の中庭で毎朝行われているのは「奥飛騨やまびこ体操」という、木工技術にすぐれた奥飛騨ならではの木を切り倒す動きを取り入れた体操でした。
ストレッチなども行い、動きとしては激しすぎないため、朝のめざめにぴったりです。

すっきりと体が目覚めたところで、朝食です。
界の朝食は、地域色を感じる食材や調理法を取り入れた「ご当地朝食」。界 奥飛騨では、干し野菜と豚肉の味噌鍋をメインとした和朝食膳が提供されます。

雪の多い地域、冬の保存食として親しまれていた漬け物や干し野菜。その習慣にならって作られたという味噌鍋には、きりづけというお漬物と干し野菜がたっぷりと入っています。凝縮された野菜の旨味が感じられる滋味深い味わいで、朝から胃も温まり、栄養たっぷりで元気が湧いてくるような朝食でした。
おくひだマウンテンバスで奥飛騨の大自然を感じる

より奥飛騨の雄大な自然を身近に感じたい方におすすめなのが、2025年7月18日(金)までの期間限定で運行している「おくひだマウンテンバス」。「界 奥飛騨」から徒歩2分の平湯バスターミナルと新穂高ロープウェイの間、約20kmを結ぶオープンバスツアーです。


屋根がないオープンバスは、より山々が近く感じられます。東京よりは涼しい飛騨でも7月の日差しの下ではさすがに暑いですが、オープンバスが走り出すと木の香りがする風が吹き抜けて心地よさを感じました。特に木々が影を落とす緑豊かな山道や、トンネルの中を走り抜けるときは涼しくて爽快。
日本百名山として知られる槍ヶ岳や穂高連峰、活火山である焼岳など、北アルプスの美しい山々に囲まれたエリアを通っていくので、自然豊かでダイナミックな景色を楽しめます。

道中は、奥飛騨温泉郷観光協会に所属する温泉旅館のスタッフがガイドとして乗り込み、バスツアーの見どころや奥飛騨のストーリーについて実況しながら進みます。ただ眺めているだけではわからない小ネタをたっぷりと盛り込んでくれるので、より奥飛騨の自然を身近に感じられますよ。


往路の到着地点、新穂高ロープウェイに到着すると、特典としてしらかば平駅にある「アルプスのパン屋さん」で好きなパン1個とドリンクがいただけます。店舗の隣にはビューラウンジも備えているため、パンとドリンクを片手にこちらでゆったり過ごすのも癒やされるひとときです。


せっかくここまで来たら、しらかば平駅から新穂高ロープウェイに乗って、さらに山の上まで行ってみるのがおすすめ。
終着地点の西穂高口駅には、デッキやテラス、散策路などがあり3,000m級の山々の眺めが楽しめる「頂の森」があります。新緑が美しい夏は、一面グリーンの景色が広がっていました。
この日の気温は、なんと18℃。東京ではすでに30℃を超えているような時間帯でも、かなり涼しく過ごしやすかったです。

訪れた際は西穂高口駅屋上展望台が工事中で入れませんでしたが、7月19日(土)よりリニューアルオープンとなります。
また、「頂の森」からさらに山の上を目指して登山することもできますが、その場合はきちんと登山用の服装、装備で行ってくださいね。
北アルプスの雄大な自然と、活火山が身近にあるからこその温泉文化が楽しめる「界 奥飛騨」。自然豊かで、避暑地としても最適。ぜひ夏のご旅行先に選んでみてはいかがでしょうか。
問い合わせ先
- 界 奥飛騨
- 料金/1泊 ¥31,000~(2名1室利用時1名あたり、税・サービス料込、夕朝食付)
- TEL:050-3134-8092(界予約センター)
- 住所/岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯138
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 小林麻美