職場で、SNSで…誰かに対してふつふつと湧き上がる“イライラ”や“モヤモヤ”とした気持ちに、振り回されていませんか?
人は自分を周囲と比べることで、自己への理解を深める傾向をもっています。しかし、ときにはそれが嫉妬や不満に火をつけ、相手に対する“黒い感情”となって溢れ出してしまうことも…。
雑誌『Precious』9月号では、【ひとりでできる「愚痴供養」のススメ】と題し、心のザワつきをそっと手放す方法を特集。
心の“モヤモヤ”を誰かに吐き出せればラクにはなります。けれど、聞く側にとっては迷惑な重荷になるかもしれません。大人の愚痴はできれば自分で手放したいもの。
今回は「脳と心のプロ」たちに、ひとりで心の毒出しができる方法を尋ねてみました。
お話をうかがったのは…



なぜ、どうして溢れてくるのかを解明!大人の女性を悩ませる“黒い感情”の正体とは…?
ふとした瞬間に溢れるネガティブな“黒い感情”のなかから代表的な6つをピックアップ。感情の正体を明らかにすることで、「愚痴供養」の一歩が開けてきます。
●「嫉妬」
愛情や地位、人間関係など、自分が大切にしているものが他人によって脅かされる、または失われる恐れから生じる攻撃的な感情。
【感情の構成】恐れ、怒り、悲しみ、未来への不安
●「不満」
自分の欲求や願望が満たされない状態が継続するなかで生じる、悲しみや憤慨が入り混じった感情。
【感情の構成】怒り、悲しみ、寂しさ、嫌悪、憤慨
●「怒り」
不当な扱いや理不尽な言動にさらされたときに生じる、強い不快感や敵意の感情。
【感情の構成】基本感情
●「妬み」
成功や才能、財産など、他人がもっているものを自分がもてていないことに対する、社会的比較から生まれる感情。【感情の構成】欲求、不満、劣等感
●「嫉み」
他人の成功や幸福が許せずに否定したり敵視してしまう、悪意を含む感情。
【感情の構成】怒り、痛み、憎しみ、反発
●「僻み」
他人の成功や幸福と比較して自分を不遇だと感じてしまう、被害者意識や不公平感による感情。
【感情の構成】怒り、不満、悲しみ、痛み
〈“黒い感情”は心ではなく脳が生み出す反応だった!〉
日常生活のなかで心に影を落とす“黒い感情”。できれば感じたくないものですが、実は“黒い感情”は脳が私たちを守るために備えた“生存本能”の一種なのです。脳科学者の細田先生は、「“黒い感情”が生まれるのは、何か危機が迫るような出来事に遭遇して、脳が瞬時に反応するため」と語ります。
「例えば、自分の大切にしているものが脅かされそうになったとき。扁桃体が0.2秒ほどで反応して、不安や怒りなどの強い感情を引き起こします。これは外敵から身を守る必要があった、太古の昔からのごく自然な防衛反応。山道で蛇などに遭遇した際に、逃げなくてはと即座に反応できるのは扁桃体の働きです。現代社会における人間関係では社会的比較や不公平感、満たされない状況などから脳が反応して“黒い感情”が生じます」(細田先生)
また心理学の文脈では“黒い感情”を“身を守るアラーム”にたとえることも。
「“黒い感情”はこの状況に留まっていてはいけないと、変化を起こす原動力にもつながります。嫉妬や妬みは“こうありたい”向上心の裏返し。怒りは“大切なものを守りたい”本能です。どれも決して否定すべき感情ではありません。感情の中身を細かく見ていくことで、自分が本当に大切にしたい価値観も見えてきます」(玉井先生)
「アンガーマネジメントでは、怒りのもとになるその人の“こうあるべき”に着目します。キャリア採用やグローバル人材の登用などで組織に多様な価値観が共存する今、“べき”のぶつかり合いから生まれるズレは社会の課題。感情のセルフマネジメントが、より重要な時代になってきています」(戸田さん)
大切なのは“黒い感情”に振り回されずにいなしていくすべを知ること。
「“黒い感情”は嫌な状況を打破したい願望の現れであり、行動のエネルギーにもなります。そのなかに含まれている自分の本当の気持ちを突き止めることで、モヤモヤと心にうずまく愚痴の供養につながります」(玉井先生)
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- ILLUSTRATION :
- 三井ちかこ
- EDIT :
- 谷畑まゆみ、佐藤友貴絵(Precious)