知っているようで知らない!?トリュフにまつわるエトセトラ「トリュフトリビア 2025」日本人唯一!トリュフハンター・富松恒臣さんに聞きました

知っているようで、意外と知らないトリュフのこと。そこで、日本人唯一のピエモンテ州公認白トリュフハンターでありトリュフ商の富松恒臣さんに、トリュフについて教えていただきました! この秋は知識を深めて、トリュフを美味しく楽しみましょう。

日本人唯一のピエモンテ州公認白トリュフハンターでありトリュフ商の富松恒臣さん
 
富松恒臣さん
(とみまつ・つねお)京都のリストランテを経て2001年渡伊。ピエモンテ州アルバ在住。ソムリエであり「アルバのトリュフとワインの騎士」の称号をもつ。

1.そもそもトリュフとは?

黒トリュフのアップ画像
 

「トリュフは、特定の樹木(ナラなど)の根に胞子を介して寄生し、地中で育つキノコ・寄生菌糸です。トリュフは木から実となる有機体をもらい、土から水分とミネラル分を吸収して育ちます。一方、トリュフが寄生した木は、トリュフ経由でより簡単に水分とミネラル分をもらうことができます。 寄生するといっても共生関係にあるのです」(富松さん、以後同様)

2.初心者が知っておくべきトリュフの種類

「トリュフは世界中に100種類以上ありますが、覚えておくのは次の4種類で十分。

1.秋から冬にかけて収穫される香りが強くて価格が最も高い、世界一有名な白トリュフ『Tuber magnatum(トゥーベル・マニャトゥム)』。
2.冬に収穫されるフランスのペリゴール地方が有名な高級黒トリュフ『Tuber melanosporum(トゥーベル・メラノスポルム)』。
3.夏に収穫される黒トリュフ、サマートリュフ『Tuber aestivum(トゥーベル・エスティブム)』。表面は黒く中は白い。
4.秋に収穫される黒トリュフ『Tuber uncinatum(トゥーベル・ウンチナートゥム)』。表面は黒く中はグレーで日本では秋トリュフと呼ばれています。

3.黒トリュフと白トリュフ、何が違う?

「黒トリュフの菌糸は強く、表面が固く覆われているため劣化しにくく、繁殖力も強い。対して白トリュフは菌糸が弱く、表面も脆く、限られた環境のなかでしか育たないので繁殖力が弱く、あまり増えません。トリュフは独特の匂いを発することで野生動物に見つけてもらい、動物が食べた際、口の周りについた菌糸をほかの場所に運んでもらって繁殖する場所を増やしていきます。

白トリュフのアップ画像
 

白トリュフのほうが香りが強いといわれますが、それは香りの弱い白トリュフは動物に見つけてもらえず増えることができず、香りが強いものだけが残ったからだと考えられます。こうして数量のあまりとれない、香りの強い白トリュフに付加価値がついたのです。

さて、風味の違いですが、一般的に白トリュフはニンニク、チーズ、ハチミツで、ウィンター黒トリュフは土っぽさ、チョコレート、胡桃、甘草(リクイリス)のニュアンスがあるといわれています。また、価格は、白トリュフはウィンター黒トリュフの約3倍、サマー・オータムトリュフの約5倍の値段で取引されています」

4.トリュフのシーズンをおさらい!

トリュフの収穫スケジュール表
 

「80年代後半から始まった、ヨーロッパのトリュフを南半球のニュージーランドやオーストラリアで栽培、養殖する国家プロジェクトが成功。流通の発達もあり夏でも黒トリュフが楽しめるようになりました」

5.トリュフハンターという仕事

アルバ・トリュフハンター協会の会長がトリュフをハンティングする様子
アルバ・トリュフハンター協会の会長がトリュフをハンティングする様子。富松さんは、いいトリュフの見分け方など会長から直々に伝授された。

「公認ハンターとは、州が実施する試験に合格して与えられるトリュフハンターライセンス保持者のこと。ピエモンテだけで4000人以上がもっています。

トリュフハンターは、土の中に隠れているトリュフを犬を使って探し、小さな鍬で掘り出すことを仕事とします。定められた収穫時期と時間内で、最低でも15年以上の樹齢のトリュフだけを収穫。

アルバ・トリュフハンター協会の会長がトリュフをハンティングする様子
 

森の環境について熟知していることも重要。ライセンスは年に一度更新、安くないライセンス料も毎年納めます。森を守り維持する役割もあるのです」

6.2025年のトリュフ事情

「トリュフはきのこの仲間なので、よし悪しは雨に左右されます。白トリュフに関していえば、春先にしとしとした雨が降ることで地中まで水分が染み込み、6月にも地表が乾かない程度に降り、8月に突発的な嵐が1、2回来ることが重要です。

さらに朝晩の寒暖差が激しく、全体的な気温が下がるのが理想。8月現在、アルバは理想的な天候で、いいトリュフがそれなりの量収穫できるのではと予想。ただし円安なので日本では価格高騰は続くと思われます」

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PHOTO :
長谷川 潤、篠原宏明
EDIT&WRITING :
田中美保、奥山碧子(Precious)