創業200年を前にメゾンの軌跡を再解釈。現代に沿う新しい世界観を表現

1830年にパリで創業したラグジュアリー・シルバーウエアメゾン「クリストフル」。カトラリー1本1本に至るまでを、職人たちの巧みな技術を用いた手仕事で制作し、皇室や王室、著名人に美しい金銀細工のテーブルウエアや装飾品を提供してきました。

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左/代表コレクションのひとつである『マルメゾン』。水葉や蓮の花がモチーフの装飾が施されている。右/オーバルシェイプのケースの中に、カトラリーセットが収納された『ムード』。

そうして長きにわたり、日々の暮らしを彩ってきた「クリストフル」が、創業200年となる2030年に向けて、新コンセプト“レトロ・フューチャリズム”を掲げ、世界の旗艦店をリニューアル。パリの本店を皮切りに、今年9月には日本の青山本店が、新しい姿へと生まれ変わっています。

このリニューアルオープンを記念して、本国からCEOであるハムディ・シャティさんが来日。アジア初となるインタビューとして、「クリストフル」が提案する“アール・ド・ヴィーヴル(美しい生活)”や、日本のライフスタイルについて、お話を伺いました。

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ハムディ・シャティさん
「クリストフル」CEO
スイスのヌーシャテル大学でマイクロテクノロジーと時計製造の学位を、パリのESSEC(ビジネススクール)でラグジュアリーマーケティングの修士号を取得。「カルティエ」でキャリアをスタートさせたのち、「ピアジェ」「モンブラン」「ハリー・ウィンストン」と、数々のラグジュアリーメゾンにおいて幹部職を歴任。その後「ルイ・ヴィトン」のジュエリー&ウォッチ部門を創設したことでも業界に足跡を残し、今年、ライフスタイルメゾン「クリストフル」のCEOに就任。

まずはメゾンが掲げる新コンセプト“レトロ・フューチャリズム”とはなんでしょう。

「ひと言で表すならば、『原点に立ち返り、未来を見据える』という意味です。店舗デザインのことでいうと、メゾンが紡いできたこれまでの200年と、この先の200年を考えた世界観を体現しています」(ハムディさん)

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温かみのある、青山本店の内観。

パリのアパルトマンを模したという「クリストフル 青山本店」の空間は、落ち着いていて温かみのある雰囲気。ウォールナットの家具と大理石の床に、ブランドカラーである“インペリアルグリーン”が、アクセントとして効いています。

このインペリアルグリーンは、19世紀にクリストフル・ブイエ家によって、シルバーとその輝きを最も引き立てる色として選ばれた、最初のブランドカラー。晴れやかだけれど、決して華美ではなく、シルバーが上品に輝く様は、どこか私たち日本人にとっても、親しみ深いムードを感じます。

「メゾンの歴史を振り返り、カラーやロゴは初期のものにインスピレーションを受けています。とはいえ全く同じではなく、それを現代の目線で解釈し、モダンなテイストを加えた形へと刷新させました。さらに今回のリニューアルでは、世界の旗艦店において、お客様がパリ本店と同じ感覚が体験できることも目指しているんです」(ハムディさん)

ホームウエアがもたらす“分かち合う”ラグジュアリーとは

前述にもあるように、ハムディさんは、世界屈指の時計&ジュエリーメゾンで、数々の経験を積んだキャリアの持ち主。ラグジュアリーとは何かを知り尽くしている人物ですが、「クリストフル」はホームウエアを扱うがゆえに、お客様との距離がより近く、ラグジュアリーの意味合いも変わってくると語ります。だからお店の世界観も、より大切となるのだそう。

「ホームウエアは、家の中で毎日使うもの。簡単に変えられないから、自宅で手にしたらどんな雰囲気になるかを、お店の中で想像してもらえたら」(ハムディさん)

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青山本店の2階。よりくつろげる、自宅のような雰囲気が演出されている。

とはいうものの、お店はメゾンが提唱したいライフスタイルを表現する場だけではないそう。

「お客様には、お家に招かれたような感覚を味わっていただきたいとも思っています。それもすごく心地がよくて、帰りたくないという気分を感じてほしい。商品だけでなく、その感覚も、お家に持って帰っていただくのが理想ですね。

フランスでは“アール・ド・ヴィーヴル(美しい生活)”という概念が、古くから大切にされているのですが、クリストフルは“アール・ド・ヴィーヴル”を、「幸福感」ととらえています。テーブルセッティングにしても、食事をすることしても、人々に喜びを与えることができる。それはつまり幸福感であり、すなわち美しい生活といえるのではないでしょうか。

これはファッションや時計、ジュエリーといった、ほかのラグジュアリーと大きく違う、独自なジャンルだと思っています。それに『クリストフル』が提供するラグジュアリーは、自分だけではなく、大切な家族や友人と“分かち合う”ためのものでもある。だからこそ、そういった温かい気持ちもお渡ししたいと思っています」(ハムディさん)

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最近では、アーカイヴコレクションのティーセットから着想を得て駒をデザインした、スペシャルなチェスゲーム『デュエル・デ・テ』を発表。食だけでなく、ライフスタイル全体を通して、豊かな時間を提案している。

伝統とリノベーションが融合する日本のライフスタイル

最後に、日本人のライフスタイルについて、ハムディさんの印象を聞いてみました。

「日本人のライフスタイルは、すごく特別だなと感じています。伝統とイノベーションがうまく融合している印象ですね。僕の周りでは、ひとりで両方を併せもっている人が、日本以外にあまりいなくて。伝統的なものを大切にしている人、新しいものに目を向けている人、どちらもファッションやライフスタイルが、一方に統一されている。

ですが、日本人の場合はどちらの感覚ももっているところが、すごくスペシャルだなと思うんです。僕の友人が、いつもはカジュアルなデニムスタイルで過ごしてるのに、結婚式のような特別なシーンで着物を身につけていたことがあって、それが非常に新鮮で、ユニークでしたね。

要は、日本人は自分のスタイルをそれぞれがもっている。とてもすばらしいことですし、『クリストフル』のシルバーウエアも、上手に取り入れてくださると信じています」(ハムディさん)

【Shop Infoemation】


以上、「クリストフル」の新CEO、ハムディ・シャティのインタビューをお届けしました。「クリストフル」流の“アール・ド・ヴィーヴル”を体感したい方は、ぜひリニューアルした青山本店に足を運んでください。

問い合わせ先

クリストフル 青山本店

TEL:03-3499-5031

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この記事の執筆者
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WRITING :
湯口かおり
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)