連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、イギリス・ロンドンでレストラン「アプリシティ」を営む、オーナーシェフのシャンテル・ニコルソンさんにインタビュー!

開業後すぐ、食のサステイナビリティを実践する飲食店に贈られる「ミシュラン」グリーンスターを獲得。「おいしい料理を提供するだけでなく、地元の小規模生産者や再生型農業を実践するファーマーと連携し、そこで収穫される旬の食材を生かすメニュー構成を行う」と話すシャンテルさんに、日ごろ大切にしている取り組みなどについて詳しくお話しをうかがいました。

シャンテル・ニコルソンさん
「Apricity Restaurant」オーナーシェフ
(Chantelle Nicholson)ニュージーランド生まれ。’04年「ゴードン・ラムゼイ・スカラシップ・コンペティション」を機に渡英。「サヴォイ・グリル」で職を得たのち、’14年「トレッドウェル」の立ち上げを手がけ、のちにオーナーに。’22年「アプリシティ」開業。ロンドンの循環経済推進活動に取り組む機関「ReLondon」の理事として活動。

【London】持続可能なレストラン像をリアルに描く地球に優しいガストロノミーのパイオニア

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開業後すぐ、ミシュランのグリーンスターを獲得したレストラン「アプリシティ」。グリーンスターとは、食のサステイナビリティを実践する飲食店に贈られる称号だ。その店名はラテン語に古来する古語で “冬の日差しの温もり” を意味するもの。その名のとおり、人が自然とつながることを大切にする姿勢が空間全体に満ち満ちていて、日々温かいムードでゲストを迎え入れている。

「おいしい料理を提供するだけでなく、地元の小規模生産者や再生型農業を実践するファーマーと連携し、そこで収穫される旬の食材を生かすメニュー構成を行います。それは単なる需要と供給ではなく、お互いを支え合う循環型リレーションシップを築くことこそが大切だと考えているから。内装や什器にもリサイクル素材を多用し、落ち着きのあるインテリアを意識しました。電気や水の使用量などを含め、消費と廃棄に関しても環境への負荷を最低限に抑えることを心がけています」

そう語るのは、オーナーシェフのシャンテルさん。自然豊かなニュージーランドで生まれた彼女にとって、地産地消は身近な価値観として根づいていたもの。また料理を愛する家族のもとで育ったこともあり、大学で法律を治めたにもかかわらず、食の道へ進むのは自然の流れだった。地元のレストランで腕を磨いたのち、三つ星シェフ、ゴードン・ラムゼイ主催のスカラシップコンペティションに応募。ファイナリストに選ばれて渡英したあとは、英国のトップシェフのもとで研鑽を積み、’22年、満を持して「アプリシティ」をオープンしたのだ。

「’26年2月には、英国南部のウエスト・サセックスにて新プロジェクト『ザ・コーディア・コレクティブ』をスタートする予定です。自然に囲まれた歴史的建築物のなかにカフェやワインバー、ベーカリーが集まり、美しいガーデンを眺めながら持続可能な食文化を堪能できるという特別なもの。『アプリシティ』で培ったものを、大きなムーブメントとして展開するべく、力を注いでいきます」

◇シャンテルさんに質問

Q. 朝起きていちばんにやることは?
エスプレッソを飲みます。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
心からの言葉。形式的なものではなく、本当に感じたことを伝えてくれる言葉がうれしい。
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
自然のなかで過ごしたい。海や森、公園に出かけて、おいしい食事とワインを楽しむのが理想。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
陶芸に取り組んでいるので、そこにもう少し時間を費やしたい。
Q. 10年後の自分は何をやっている?
まったく想像がつきません。でも、海の近くにはいたいなと思っています。
Q. 自分を動物に例えると?
陸と海の両方で生きられる亀。理由は、海の静けさと不思議さを味わいながら、陸でゆったりと過ごすこともできるから。

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PHOTO :
Miki Yamanouchi
WRITING :
本庄真穂
取材 :
Yuka Hasegawa