プロが教える!カレーをおいしくするヒント4選

あなたのおうちの定番カレーはどんな味ですか? カレーライスをつくるとき、いかにおいしくつくるかをいつも考え、こだわっている人も多いのでは?

追求すれば切りがないカレーの味。そんな日々のカレーをおいしくするヒントを、AIR SPICE代表で、カレー研究家の水野仁輔さんに教えていただきました。

■1:カレーのベストな煮込み時間は「肉」で決まる!

カレーのベストな煮込み時間は「肉」で決まる!
カレーのベストな煮込み時間は「肉」で決まる!

煮込めば煮込むほどおいしくなるといわれるカレー。そもそも、カレーを最もおいしくするためのベストな煮込み時間というのは決まっているのでしょうか。

「最適な煮込み時間は、肉の種類と部位によって違います。挽き肉の状態なら10分程度で十分。骨なしの鶏もも肉なら20分~30分。鶏手羽元や骨付き鶏肉なら45分。豚肉や牛肉はバラや肩ロースの塊なら1時間、すね肉やすじ肉ならそれ以上かかります。ただ、それ以上に大切なことは、肉に残る味とソースに出る味の関係性です。煮込めば煮込むほど肉の味が外に出る。すなわち、ソースはおいしくなるが肉はおいしくなくなる。どちらにどの程度の味を残したいかによって最適な煮込み時間を決めるのがいいと思います」

■2:カレーライスのベストな具は?今後は鶏肉がブームに?

カレーライスのベストな具は?
カレーライスのベストな具は?

家庭のカレーライスの定番の具といえば、じゃがいも、にんじん、たまねぎ。肉は豚肉や鶏肉、牛肉のいずれかが一般的ですが、カレーに合うベストな具の組み合わせはあるのでしょうか?

「好みによると思うので、ベストな具は一概に言えません。じゃがいもは好みが分かれるところですし、肉は、関東では豚肉、関西では牛肉が多く、ホテルのレストランや高級なレストランなどはビーフカレーがスタンダード。ただ僕は、今後の日本のカレーのスタンダードは鶏肉になると思っています。地域性などによる好みの差が少ないのと、煮込みに時間がかからない上に、それほど高度なテクニックを必要としないため、おいしいカレーの再現性が高いためです」

■3:カレーの隠し味はバレたら失敗!

カレーの隠し味はバレたら失敗!
カレーの隠し味はバレたら失敗!

カレーの隠し味といえば、チョコレート、インスタントコーヒー、ソース、しょうゆ、トマトジュース、赤ワイン、はちみつ、ヨーグルトなど。人気カレー店「カレー屋パク森」では味噌と醤油を使っていることで知られています。このように選択肢が多い中で、隠し味として本当にカレーをおいしくするものはどれなのでしょうか?

「隠し味も好みによります。ある意味、何でもありです。隠し味の狙いは、メインのカレーの味、つまり中心となる味を引き立てることにあります。乳製品やナッツ、発酵調味料のような単純に旨味を増幅させるアイテムもありますが、酸味、甘味、苦み、辛味、風味、さまざまな味わいをちょっと追加することによって、そのカレーのメインの味を引き立てるものもあります。例えば、スイカに塩を振ると甘味が引き立つみたいなことも、隠し味のひとつだと思います。

ただ、カレーの隠し味の場合、もっとも大切なのは『隠して使う』ことです。食べた人に『しょうゆが効いてておいしいね』と言われたら失敗したと思ってください。『何が入ってるかわらからないけどおいしい』と言われたら成功です」

■4:カレー研究家による四種の神器!

カレー研究家による四種の神器!
カレー研究家による四種の神器!

具体的に、我が家のカレーをよりおいしくするにはどうすればいいのでしょうか?

「レシピはたいてい【材料】と【つくり方】に分かれていますが、カレーの味は【材料】をよくするか、【作り方】をよくするかでグレードアップすると思います。後者は経験を積んで技術を高めないといけないので、すぐには難しいかもしれません。ただ『玉ねぎをアメ色になるまで炒める』とか『水の代わりにブイヨン(スープ)を取って使う』とか、手間をかけるという方法は可能かと思います。

簡単なのは、【材料】に手を入れること。要するにおいしくなる材料を加えることです。これも好みによりますが、昔から私が一般的に話しているのは、四種の神器といって、『バター(もしくは油)、砂糖(もしくはその手の甘み)、にんにく、唐辛子』を加えたり増量したりするとカレーがおいしくなる傾向があるということです」

カレー研究家としての「最高に贅沢なカレー」とは?

AIR SPICE 基本のチキンカレー
AIR SPICE 基本のチキンカレー

四種の神器、早速トライしてみたくなりますね。そもそも、カレー研究家として、水野さんが最高に贅沢に感じるカレーとはどんなカレーなのでしょう?

「それはふたつあります。ひとつは、材料を“引いて”、手間や技術を“加えた”カレーです。もうひとつは、正体のわかっているカレーです。僕がカレーをつくるときの個人的なスタンスとして、トマトやトマトピューレは使ってもトマトケチャップは使いません。鶏がらスープを自分でとって使ってもブイヨンの素は使いません。正体がわかっているものだけでカレーをつくりたいからです。加工食品系は、それがどうつくられているかがわからなければ使わない。裏のラベルの原材料を見て、知らない言葉が書いてあったら使わない。そんな風に引き算をしていくと、おいしくするためにはその分、テクニックや手間を入れ込まないといけなくなります。例えば、最近は玉ねぎを炒める代わりに蒸し煮~蒸し焼きにしたり、鶏がらを強火でグツグツ煮込んで白湯スープのようなものを取ったりする手法が好きで、よく使っています。そうやってつくられたカレーが最高に贅沢なカレーだと思います」

カレーは奥が深いことはよく知られていることですが、最高に贅沢なカレーかどうかは、自分やそれを食べる人たちが決めること。自宅でとことん、追求してみるのもいいのではないでしょうか。

水野仁輔さん
AIR SPICE代表
(みずの じんすけ)1999年以来、カレー専門の出張料理人として全国各地で活動。『わたしだけのおいしいカレーを作るために』(PIE INTERNATIONAL)など著書は50冊以上。本格カレーのレシピつきスパイスセットを定期頒布するサービス「AIR SPICE」を運営中。
AIR SPICE
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石原亜香利
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