相反するふたつの感情に心が揺さぶられる。人間の本性を問うザドック・ベン=デイヴィッドの世界へ
繊細な金属彫刻から大規模なインスタレーションまで、幅広い作品を手掛けているイスラエル出身の国際的アーティスト、ザドック・ベン=デイヴィッドの個展が開催。そこであぶり出されるのは、現代を生きる私たち “人間の本性” です。
【今月のオススメ】セカンド・ネイチャー ―Second Nature―
巨大な金属の円盤型の彫刻作品。一面はカラフルな蝶の大群。裏側に回ると、美しい蝶の姿はゴキブリになり――。《The Other Side of Midnight》というタイトルに思索が深まる。
光と影、美と醜、幸福と悲しみ――。物事に二面性があることを、私たちは知っているはずでした。しかし、ザドック・ベン=デイヴィッドの作品を体験すれば、誰もが動揺してしまう。結局、人間は、都合のいい面しか見てこなかったのだと知って。もうひとつの面は、同じ分量で、同じ重さで、いつだって存在していると実感して。
「この40年ほど、私は一貫して『人間の本性(Human Nature)』というテーマに取り組んできました。動物や植物、樹木といった科学的なイメージを、人間の日常的な態度や行動のメタファーとして用いています。残念ながら、私たち人間は自分自身が自然の一部であることを忘れがちで、ときに破壊や絶滅にいたるほど、自然を自分たちの都合で利用してしまいます」
ベン=デイヴィッドはこう続けます。
「《Blackfield》というインスタレーションでは、『事実と選択』について、観る人の感情に訴えかけました。一輪の花が、幸福と悲しみの両方を象徴しています。《The Other Side of Midnight》では、蝶とゴキブリのモチーフを通して、先入観や判断について問いかけます。極端な状況で、世界のふたつの側面を意識してほしい、と」
作品を構成する花や草木、昆虫、人を含む動物といったひとつひとつの要素は、非常に繊細で、静かです。しかし、訴えかけてくる感情は重く、強い。ギャラリーという親密な空間で作品と対峙するからこそ、メッセージは直接心に届いてきます。まるで、作家から直接手渡されたかのように。(文・剣持亜弥)
<information>セカンド・ネイチャー ―Second Nature―
ロンドンとポルトガルを拠点とするザドック・ベン=デイヴィッド。その作品群を同じ空間に展示するのは日本初。大型インスタレーション作品《Blackfield》《The Other Side of Midnight》、19世紀の書物の図案をモチーフとした《Evolution and Theory》《Natural Reserve》、ループする映像作品《Conversation Peace》《Same place Other Times(Panorama)》、木や花のイメージを用いた新作のアルミニウム彫刻を展示する。
会期/開催中〜2026年4月19日(日)まで
会場/GYRE GALLERY(東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F)
問い合わせ先
関連記事
- 待ちに待った【決定版モネ展】満を持しての開幕!オルセー美術館の重要なモネ・コレクションが一挙来日
- 箱根「ポーラ美術館」で開館以来初となる “箱根” に根ざした展覧会『SPRING わきあがる鼓動』開催中
- 劇場アニメ『ルックバック』がどのようにつくられたかをひもとく展覧会『劇場アニメ ルックバック展 ―押山清高 線の感情』いよいよ開催!
- EDIT :
- 剣持亜弥

















