相反するふたつの感情に心が揺さぶられる。人間の本性を問うザドック・ベン=デイヴィッドの世界へ

繊細な金属彫刻から大規模なインスタレーションまで、幅広い作品を手掛けているイスラエル出身の国際的アーティスト、ザドック・ベン=デイヴィッドの個展が開催。そこであぶり出されるのは、現代を生きる私たち “人間の本性” です。

剣持亜弥
ライター・編集者
本連載のアートを担当。雑誌や書籍、Web媒体などで展覧会、本・マンガ、アニメ、映画、サブカル周りの仕事をする。取材・文を担当した単行本『ドラえもんと学ぶ日本美術超入門』(小学館)が発売中。

【今月のオススメ】セカンド・ネイチャー ―Second Nature―

展覧会_1
Zadok Ben-David《The Other Side of Midnight》 2012 Hand painted stainless steel and UV Lights. Dia. 240cm TBD

巨大な金属の円盤型の彫刻作品。一面はカラフルな蝶の大群。裏側に回ると、美しい蝶の姿はゴキブリになり――。《The Other Side of Midnight》というタイトルに思索が深まる。


光と影、美と醜、幸福と悲しみ――。物事に二面性があることを、私たちは知っているはずでした。しかし、ザドック・ベン=デイヴィッドの作品を体験すれば、誰もが動揺してしまう。結局、人間は、都合のいい面しか見てこなかったのだと知って。もうひとつの面は、同じ分量で、同じ重さで、いつだって存在していると実感して。

「この40年ほど、私は一貫して『人間の本性(Human Nature)』というテーマに取り組んできました。動物や植物、樹木といった科学的なイメージを、人間の日常的な態度や行動のメタファーとして用いています。残念ながら、私たち人間は自分自身が自然の一部であることを忘れがちで、ときに破壊や絶滅にいたるほど、自然を自分たちの都合で利用してしまいます」

ベン=デイヴィッドはこう続けます。

「《Blackfield》というインスタレーションでは、『事実と選択』について、観る人の感情に訴えかけました。一輪の花が、幸福と悲しみの両方を象徴しています。《The Other Side of Midnight》では、蝶とゴキブリのモチーフを通して、先入観や判断について問いかけます。極端な状況で、世界のふたつの側面を意識してほしい、と」

作品を構成する花や草木、昆虫、人を含む動物といったひとつひとつの要素は、非常に繊細で、静かです。しかし、訴えかけてくる感情は重く、強い。ギャラリーという親密な空間で作品と対峙するからこそ、メッセージは直接心に届いてきます。まるで、作家から直接手渡されたかのように。(文・剣持亜弥)

<information>セカンド・ネイチャー ―Second Nature―

ロンドンとポルトガルを拠点とするザドック・ベン=デイヴィッド。その作品群を同じ空間に展示するのは日本初。大型インスタレーション作品《Blackfield》《The Other Side of Midnight》、19世紀の書物の図案をモチーフとした《Evolution and Theory》《Natural Reserve》、ループする映像作品《Conversation Peace》《Same place Other Times(Panorama)》、木や花のイメージを用いた新作のアルミニウム彫刻を展示する。

会期/開催中〜2026年4月19日(日)まで
会場/GYRE GALLERY(東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F)

問い合わせ先

GYRE GALLERY

TEL:0570-05-6990(ナビダイヤル)

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剣持亜弥
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