【美しいひとの美しい部屋・夏スペシャル】目の前に広がる青い色と波の音。地球の恵みをダイレクトに感じる家で暮らす彼女たちのライフスタイルとは──「海辺での暮らし」がもたらしたもの

海の近くで暮らしてみたい。一度はそんな思いを抱いた人も多いはず。どこまでも続く豊かなブルーと潮の香り、心地よい波の音。海を身近に感じながら過ごす、おおらかな時間は、仕事や生き方、体や心にどんな影響をもたらしたのでしょうか。

二拠点暮らしや移住など、忙しく働く彼女たちのリアルな声を、開放感溢れる部屋と共にお届けします。

家_4,インタビュー_4
アトリエで製作中のMiccaさん。デニムの着物は東京・中目黒の着物店「KAPUKI」のオリジナル。帯は友禅作家・太田敬春氏のぬれがき友禅の帯。「太田先生の催事では、私の製作した陶器の帯留めとコーディネートしていただいています」
Miccaさん
陶芸作家・流木作家
(ミカ)21歳で上京し、ヘアメイクのアシスタントを経て、5年間ロンドンへ。帰国後、都内で人気ヘアメイクアップアーティストとして、CM広告やファッション誌などで30年、活躍。2014年、南葉山に移住。現在は陶芸作家、流木作家として活動中。個展や作品の詳細はインスタグラム@miccakanzaki参照。

「好きなものを全部詰め込んだ、おもちゃ箱みたいな空間です」 陶芸作家・流木作家・Miccaさんの海と大地を感じる家

家_1,インタビュー_1
裏庭の高台からの眺め。

南葉山の海まで3分。坂道を少し上がったところに、一見するとビーチテイスト、入ってみるとおもちゃ箱のような素敵な家があります。暮らすのは、陶芸作家・流木作家のミカさん。ロンドンでの生活を経て、帰国後はヘアメイクアップアーティストとして第一線で活躍。都内で一軒家を構えていましたが、下の子が生まれ、海が見える環境で育てたいと、一念発起したのが12年前のこと。

「知り合いが住んでいた葉山を中心に物件を探し、海が近く緑豊かな神社が目の前のここに決定。家のイメージは明確にあったので、すぐにデザイン画を描き、建築家に図面化してもらい、工務店に施工を依頼。嫌がられましたが(笑)、どうせ建てるなら、理想をすべて叶えたくて」

いちばん長くいる場所=キッチンが家の中心、そこから海が見えること、家族の気配が感じられること、吹き抜けの開放感…。自由で明るくて、海と大地を感じる、人が集う家。約2年かけて、“ほぼ” ミカさんスタイルの個性的な家が完成しました。

家_2,インタビュー_2
左/リビングの壁のインクアートはalcohol ink art(licca_rt)さんの作品。右/裏庭の階段は夫婦で製作。
家_3,インタビュー_3
左/SUPを吊っている壁は旦那様のDIY。右/アトリエの扉はインテリアショップ「クラップヴィンテージ」のアンティークドア2枚を観音扉に。塗装はミカさん。
家_5,インタビュー_5
 

天井高3.5m。吹き抜けと大きな窓が明るく、開放的なキッチン。テラスからは海を見渡せる。

「机と棚はこの家を建てた大工さんの造作です。アイランドキッチンの天板モルタルは大工さんにお願いして仕上げてもらいました。床も汚れたりヒビがいってもいいようモルタルに。住むほどに味が出て、気に入っています」

家_6,インタビュー_6
キッチンから2階へと続く階段の途中、大きな窓から見える、葉山の海。
家_7,インタビュー_7
 

アトリエ。壁一面の大きな棚と机は大工さんの造作。塗装はミカさん。棚にはミカさんの作品を中心に、地元のアーティストの作品が所狭しと並ぶ。作陶に夢中になるあまり、気付けば朝を迎えることもしばしば。

家_8,インタビュー_8
 

海外のキッチンのようなタイル使いが楽しい、アトリエのシンク。輸入建材販売「クラスプラス」のベトナム輸入タイル。

家_9,インタビュー_9
愛鳥のレモンちゃん。鮮やかな緑色がキュート。

「人生と一緒に、家も変化し、進化していく。おもしろいですよね。これからも一緒に年をとっていきたいです」(Miccaさん)

「子育てを通して、ママ友をはじめ本当の友人が増えました。みんな、新幹線みたいな速さでなく、のんびりゆっくり、各駅停車のスピードで季節の移ろいや海の色、豊かな自然を愛でながら、自分らしく、人生を思いきり楽しんでいるんです。その姿にはかなり影響を受けました」

それまでは、空を見上げ、花を見る余裕もなく、毎日分刻みのスケジュール。ヘアメイクという仕事は縁の下の力もち。常に周囲に気を遣い、いつも体の芯に深い疲れが残っているような状態だったというミカさん。

「移住と子育てを理由に仕事を徐々に減らしたこともありましたが、潮風を感じるゆったりとした海辺の暮らしで、やっと人間に戻れたというか…。不思議なことに、私も子供も、風邪をひかなくなりました」

50歳を機に、30年一線で活躍してきたヘアメイクを卒業。趣味で続けていた陶芸の道へと舵を切りました。

「人生はあっという間。挑戦するなら今しかない。人生を楽しむ友人たちを見て、残りの人生を考えました。自分がときめくことを全部やりたい! 陶芸作家としてはもちろん、流木作家、着物リメイクなど、興味があることは全部トライしたい。家族や周りの人に感謝をしながら、支え合う日々が今、幸せなんです」

根っからのアーティスト気質。陶芸で土に触れ、大地を感じる。すぐそばには海があって、散歩をするだけで、不思議な形の流木や石などに出合い、創作意欲が刺激される。身近にあるものがなんでも作品に変わっていくことが楽しい、と語ります。

「家づくりも、自分の “好き” やワクワクに忠実に、つくれるものはすべて自分で。夫もDIYが好きなので、一緒に壁を塗ったり造作をしたり。当初はスタジオスペースをつくっていましたが、陶芸家として生きていく決心をしてからは、そこをアトリエに改装しました。次は裏庭に陶芸の窯を設置する予定です。人生と一緒に家も変化し、進化していく。おもしろいですよね」

ただし、変わらないのは、この家の中心であるキッチン。海を見ながら家族が集い、友人が集い、おいしく食べて語り合う、大切な場所。

「段差が多いとか、寒いとか暑いとか。いろいろあるけれど(笑)、それを上回るくらい、私にとってこの家はやすらぎの場所です。同時に、クリエイティビティを生み出す場所でもあります。これからも、家族と家と一緒に年をとっていきたいです」

家_10,インタビュー_10
撮影当日、ミカさんがつくってくれたいちごのムース。うつわはすべてミカさんの作品。
家_11,インタビュー_11
パリの風景だったり、本棚風だったりと、随所にだまし絵のような壁紙が。壁紙は、輸入壁紙の専門店「WALPA」で購入。ハート形の流木アートもミカさんの作品。
家_12,インタビュー_12
左/増設したアトリエ。あえてヴィンテージ感を出したピンクは、ミカさんが塗装。うつわはもちろん、ヴィンテージ着物の展示会などにも使用。カフェスペースとして使うことも。右/ミカさん作の「M」のプレートは看板代わりに。
家_13,インタビュー_13
 

画像左/階段下のデッドスペースを有効活用した、機能的なキッチン。手前のカフェオレボウル/抹茶茶碗もミカさんの作品。作品には花や羽のある動物や虫が多くモチーフにされている。「羽のある動物や虫は神秘的。私たちの知らない世界を見ているから。虫たちによる受粉でいろいろな場所で咲く花も、可憐で力強くて惹かれます」

画像右/アトリエとガラスで仕切られたリビング。薪ストーブや、旦那さんの趣味であるDJブースも。照明類は、以前住んでいた家の近くのインテリアショップで購入。テーブルは大工さんが流木を加工、クッションは海外で手に入れたり、スタイリストの友人からのプレゼントなどを並べて。

家_14,インタビュー_14
左/バスルームの床とバスタブは大理石。壁のタイルは「ADVAN」。右/玄関はブルーに塗装。ミカさんが一時期ハマっていたサーフィンのボードが。忙しい日々のオフは、サーフィンをしにハワイへ通っていたとか。

◇MiccaさんのHouse DATA
●場所…南葉山
●間取り…リビング、ダイニング、キッチン、アトリエ×3、ベッドルーム、子供部屋、バスルーム
●ここに決めたいちばんの理由…海と神社が目の前

関連記事

PHOTO :
長谷川 潤
EDIT :
田中美保