ジュネーブで、時計文化は「体験」へと進化している!感性に響く“時の祭典”を特別レポート

去る4月に開催され、世界の名門が集った展示会、ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ2026。美しい空間や多彩なプログラムに込められた、時計文化をより広く伝えようとする想いを、その舞台づくりを率いるマチュー・ユメールさんにうかがいました。

お話しをうかがったWWG財団CEOのマチュー・ユメールさん
お話しをうかがったWWG財団CEOのマチュー・ユメールさん

世界最大級の高級時計サロン、ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ2026(以下、WWG)の会場で印象的だったのは、華やかな新作の数々だけではありません。美しいブース、職人技に触れる実演、市内へと広がるプログラム。そのすべてが、時計文化をより身近に、より感覚的に伝えるための装置となっていました。

「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ2026」会場の様子
会場には今年、初出展となった「オーデマ ピゲ」や「クレドール」を含む全65ブランドが集結。業界関係者から一般来場者まで、会期中は約6万人の来場者を迎え、一般公開の3日間で2万5000枚のチケットを販売した。

WWG財団CEOのマチュー・ユメールさんは、2023年に一般公開を始め、プログラムをジュネーブ市内へ広げたことを「大きな転機だった」と振り返ります。

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注目ブースの前には多くの来場者が詰めかけ、スマートフォンを掲げて熱気ある瞬間を記録。
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中国人アーティスト、シャン・ジアンのアニメーションが彩った「ヴァシュロン・コンスタンタン」の空間。

初めて時計の世界に触れる人にも、深く愛するコレクターにも、それぞれにふさわしい体験を用意すること。ユメールさんは「体験こそが、このイベントの核にあります」と続けます。新作との出合い、ガイドツアー、カンファレンス、展覧会、手を動かすワークショップ。来場者は自らの関心に合わせてプログラムを選び、時計づくりの世界へと少しずつ踏み入っていくのです。若い世代や家族も、ただ眺めるのではなく、関わる存在として迎えられていました。知るための場から、記憶に残る時間を持ち帰る場へ──そんな変化といえるでしょう。

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「カルティエ」は、独自のフォルムとそれを支えるサヴォアフェールに焦点を当てた。
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直径37mmという新しいケースサイズで発表された『オクト フィニッシモ』をはじめ、新作に話題が集まった「ブルガリ」。

主催者として、ユメールさんは今年の舞台づくりに込めた意図を端的に明かします。
「今年、私たちがWWGで明確に目指したのは、時計の『説明』から来場者の心に残る『体験』へと重心を移すことでした」

その言葉どおり、各ブランドの空間は、単なる展示の背景ではありませんでした。デザイン、クラフツマンシップ、ストーリーテリングが響き合い、来場者の感情を動かす舞台。時計の価値を、スペックではなく空気ごと伝えようとする試みです。

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「ヴァン クリーフ&アーペル」は “天文学者の魅惑的な庭園” をテーマに、星座を模るムラーノガラスや池を思わせる光で幻想的な空間を演出。
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フランスの人気TV番組「トップ・シェフ」で注目された若きシェフ、ダニー・ケザールが手がけるカフェ。

その入口は、専門知識をもつ人だけのものではありません。「複雑機構を理解していなくても、何かを感じ取ることはできるのです」とユメールさん。空間の美しさ、ブランドが描く世界観、細部への配慮、工芸の手触り、物語の余韻。そうした直感的な要素こそが、時計との最初の接点になりうるのです。知識より先に心が動く。だからこそWWGは、女性たちの感性にも自然に響く場所になったのでしょう。

「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ2026」会場の様子
左/「ジャガー・ルクルト」のブースでは、スイス人シェフ、ジル・ヴァローヌによる美食体験が用意された。右/「エルメス」は木製の構造体や滑車で、時を巡る劇場的インスタレーションを披露。(C)Team Whaaat

さらにユメールさんは、時計づくりとデザイン、アート、ジュエリーとのつながりを、今後ますます豊かに見せ、文化的な文脈のなかで深めていきたいと語ります。
「高級時計ならではの卓越性や憧れを守りながら、入口は閉ざさない。特別でありながら、排他的ではない。開かれながらも、ありきたりではない。質の高さと親しみやすさの両立。その繊細な均衡こそが、今のWWGの魅力を形づくっています」

「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ2026」会場の様子
上・左下/世代を問わず参加できる体験型企画も人気で、時計の仕組みや時の概念に触れ、時計文化を楽しく学ぶ入口となった。右下/会場には俳優でレーサーのパトリック・デンプシーの華やかな姿も。

そして、この祭典はサロン会場の中だけで完結するものではありません。一般公開日を通して、時計づくりはジュネーブの街へ広がり、スイスの文化やホスピタリティ、美しい時間の流れへと結び付いていきます。
「WWGは、単なる業界イベントではありません。それは目的地であり、ひとつの体験なのです」とユメールさんは結びます。

このジュネーブの舞台で、旅するように各メゾンの時計に触れることは、時を育んできた文化に出合うこと。その土地に流れる美意識に触れること。その旅の記憶が、手元の一本をより特別なものにするのです。

〈MEMO〉ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ 2026

開催期間/2026年4月14日(火)〜20日(月)
一般公開日/4月18日(土)〜20日(月)
入場料/1日券 CHF70(土・日)、CHF50(月)※12歳まで無料
公式HP/https://www.watchesandwonders.com
出展ブランド/全65ブランド ※五十音順
ウブロ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ヴァン クリーフ&アーペル、H.モーザー、A.ランゲ&ゾーネ、エルメス、オーデマ ピゲ、カルティエ、クレドール、グランドセイコー、シャネル、ジャガー・ルクルト、ショパール、ゼニス、パテック フィリップ、ピアジェ、ブルガリ、ロレックス and many more…

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EDIT&WRITING :
安部 毅、安村 徹(Precious)