【目次】
- 「温泉の日」とは? 9月9日になった「由来」をわかりやすく解説
- そもそも温泉とは? 「定義」や「天然温泉との違い」
- 温泉にはどんな種類がある? 泉質ごとの「特徴」
- 温泉の正しい「入り方」とは? 入浴前後に知っておきたい基本マナー
- 日本の温泉文化はいつからある?「歴史」や湯治との関係
- 「温泉の日」に知っておきたい豆知識|温泉マークの意味や世界の温泉事情も紹介
【「温泉の日」とは? 9月9日になった「由来」をわかりやすく解説】
語呂合わせにより、4月26日の「よい風呂の日」(日本入浴協会制定)や、11月26日の「いい風呂の日」(日本浴用剤工業会制定)が日本記念日協会に認定されていますが、今回紹介するのは9月9日の「温泉の日」。こちらは語呂合わせではなさそうですが…。
■なぜ9月9日?
日本一の「おんせん県」をうたう大分県。源泉総数5,094、湧出量毎分293,610リットルで、全国で1位を誇ります。その大分中西部の玖珠郡(くすぐん)に属する九重町(ここのえまち)と観光協会は、町名「九重」や町内に点在する温泉が「九重九湯」として親しまれてきたことなどにちなんで9が重なる9月9日に、町内の温泉施設の開放などのイベントを行っています。このことから九重町ではこの日を「温泉の日」としてPRしているのです。
【そもそも温泉とは? 「定義」や「天然温泉との違い」】
■温泉の定義
温泉法では、地下から湧出する温水、鉱水、水蒸気その他のガスのうち、源泉から採取されるときの温度が摂氏25度以上であるもの、または同法の別表に掲げられた物質のいずれかを規定量以上含むものを「温泉」と定義しています。つまり、25度未満でも、成分基準を満たせば法律上は温泉です。
泉質はさまざまあり、浴用、または飲用することで、治療や健康促進の効果が期待されるものも。
■天然温泉とは?
法律上は「天然温泉」という用語はありません。地下から湧出した温水や鉱水などが、温度または成分について温泉法の基準を満たしていれば、法律上の「温泉」に該当します。
・温度:湧出時の源泉温度/温泉源から採取されるときの温度が25度以上であること
・成分:温泉法の別表に掲げられた溶存物質の総量や、溶存物質総量やリチウム、硫黄、炭酸、ラドンなどのうち、いずれかひとつが規定以上含まれていること
■加温・加水があっても「天然温泉」?
上で見たように、源泉から採取されるときの温度が25度以上であるか、温泉法の別表に掲げられた物質のいずれかを規定量以上含むことが、法律上の「温泉」に該当する条件です。そもそも25度程度では入浴に心地いい温かさではないので、その程度の低温温泉であれば加温が必要。
湧出温度が高く、冷まさなければ入浴に使えない温泉もあります。その際、時間をかけて適温まで冷ましても、加水して冷ましても、いずれも「温泉」とうたってOK! ただし、水道水や地下水で加水すればそれだけ温泉成分は薄まり、かつ、ほかの成分も加わった温泉になります。
加熱や加水、循環ろ過を行っていても、元となる湯が温泉法の基準を満たしていれば、法律上は「温泉」「天然温泉」と呼べるというわけです。ただし、公共の浴用に供する施設では、加水・加温・循環ろ過・入浴剤の添加・消毒を行っている場合、その旨と理由を掲示する必要があります。
■「温泉分析表」をチェック!
温泉旅館やホテル、温泉を使用した銭湯や入浴施設には、温泉の成分、泉質、温度、分析年月日、禁忌症、入浴・飲用上の注意などを見やすい場所に掲示することが温泉法で義務づけられています。施設によっては、登録分析機関が発行した「温泉成分分析書」も確認できます。目を通してから利用するのがおすすめです。
【温泉にはどんな種類がある? 泉質ごとの「特徴」】
比較的日本に多く湧き、顕著な特徴を持つ泉質を紹介しましょう。
■単純温泉(岐阜県・下呂温泉、長野県・鹿教湯温泉など)
温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg未満で、湧出時の泉温が25度以上のもの。このうちpH8.5以上のものを「アルカリ性単純温泉」と呼んでいます。肌触りが柔らかく、肌への刺激が少ないのが特徴。アルカリ性単純温泉は、入浴時に肌がすべすべする感触があります。
・適応症:浴用/自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
■塩化物泉(静岡県・熱海温泉、石川県・片山津温泉など)
温泉水1kg中に溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が塩化物イオンのものを「塩化物泉」と言い、日本では比較的多い泉質です。塩分が主成分なので飲用すると塩辛く、塩分濃度が濃い場合やマグネシウムが多い場合は苦く感じられます。
・適応症:浴用/切り傷、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症 飲用/萎縮性胃炎、便秘
■二酸化炭素泉(大分県・長湯温泉、山形県・黄金温泉など)
温泉水1kg中に遊離炭酸(二酸化炭素)が1,000mg以上含まれているもの。入浴すると全身に炭酸の泡が付着し、爽快感があるのが特徴。飲用すると炭酸の爽やかな喉越しが楽しめます。日本には比較的少ない泉質で、「泡の湯」と呼ばれることもあります。
・泉質別適応症:浴用/切り傷、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症 飲用/胃腸機能低下
■酸性泉(秋田県・玉川温泉、岩手県・須川温泉など)
温泉水1kg中に水素イオンが1mg以上含まれているもの。日本では各地で湧出しています。酸性が強く、口に含むと酸味を感じる泉質です。皮膚への刺激が強い場合もあるため、肌が弱い人は入浴後に温水で洗い流すなど、施設の注意表示に従いましょう。
・泉質別適応症:浴用/アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症
■硫黄泉(栃木県・日光湯元温泉、神奈川県・小涌谷温泉など)
温泉水1kg中に総硫黄が2mg以上含まれているもの。硫黄型と硫化水素型に分類され、日本では比較的多い泉質です。卵の腐敗臭に似た特有の臭いは、硫化水素によるもの。
泉質別適応症:浴用/アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症 飲用/耐糖能異常(糖尿病)、高コレステロール血症
■放射能泉(鳥取県・三朝温泉、山梨県・増富温泉など)
温泉水1kg中にラドンが30×10-10キュリー以上(8.25マッヘ単位以上)含まれているもの。環境省の基準では、浴用の泉質別適応症として高尿酸血症、関節リウマチ、強直性脊椎炎などが示されています。利用にあたっては、施設に掲示された禁忌症や注意事項を確認しましょう。
泉質別適応症:浴用/高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など
【温泉の正しい「入り方」とは? 入浴前後に知っておきたい基本マナー】
旅館やホテルの大浴場や健康ランド、日帰り温泉など、大勢の人が利用する施設ではマナーを守って入浴したいもの。さらに温泉であれば、効果的な入浴についても知っておきたいですね。
1)かけ湯
いきなり湯船に入るのは、マナー的にも体調的にもNGです。まずは湯船の外で、心臓より遠い足元から徐々に湯温に体を慣らすようにお湯を掛けましょう。体の汚れを落としてから入ることは、浴槽の湯を清潔に保つためのマナーでもあります。
2)長湯は禁物
温度や泉質、体質によっても異なりますが、環境省は、温泉療養を始めたばかりの時期には、1回3~10分程度の入浴を1日1~2回とし、慣れてきたら1回15~20分程度の入浴を1日2~3回まで増やす方法を目安として示しています。高血圧症、心臓病、高度の動脈硬化の人は、42度以上の高温浴は避けると心得て。
3)温泉成分を残す
体に付着した温泉の有効成分は洗い流さないほうが、温泉の効果を得やすいといわれています。ただし湯ただれ(湯かぶれ)を起こしやすい人は、淡水で洗うか、しっかりふき取るといいでしょう。施設の掲示や注意事項を優先してください。
4)水分補給
入浴後は発汗によって体内の水分が少なくなっています。水や白湯などで水分補給を。入浴前にもコップ1杯程度の水分補給が効果的です。入浴後の冷えたビールは格別なおいしさですが、ビールでは十分な水分補給にはならないのでご注意を。
5)休息
入浴はエネルギーを消費する行為です。血圧も変動するので、入浴後は湯冷めに注意しながら安静に過ごすのが正解。脱衣所が混雑していなければ、意識的にゆっくりていねいにスキンケアをしたり、同行者と水分補給しながらおしゃべりしてはいかが? 強い疲労や体調不良、発熱、著しい衰弱があるときは無理に入浴せず安静に過ごしましょう。
【日本の温泉文化はいつからある?「歴史」や湯治との関係】
■古代人と温泉
そもそも温泉は、火山活動などが盛んな地域において、数万年前から自然に湧出していたものと考えられています。日本では、現存最古の歴史書である『古事記』や『日本書紀』、諸国の『風土記』などにも温泉の記述が。これらの歴史的文献に基づき、愛媛県・道後温泉、和歌山県・白浜温泉、兵庫県・有馬温泉が「日本三古湯」と呼ばれています。
また『出雲国風土記』にも温泉の記述が見られるため、島根県の玉造温泉にも古い歴史があることがうかがえます。古代から温泉が人々の暮らしに利用されていたのです。
古代は火をおこしてお湯を沸かすことは大変なこと。沸き出す湯である温泉は、昔の人々にとってはとてもありがたく貴重なものであったはずです。「神湯」や「薬湯」とも呼ばれていたことからは、その効能も知られていたことがうかがえます。
■平安貴族と温泉
奈良時代末期に編纂されたとみられる現存最古の和歌集『万葉集』にも、多くの温泉地を詠んだ歌が記載されています。前述の三古湯に加え、群馬県・伊香保温泉、神奈川県・湯河原温泉などが登場。
また和歌山県の湯峰温泉には、平安時代に流行した熊野詣の前に立ち寄り、入浴とともに温泉で炊いたお粥を食べて体の内外から身を清めて参拝したと伝わります。平安貴族にとっても、温泉は神聖なものだったのです。
■武士と温泉
鎌倉幕府が開かれ、政治の中心が京都から関東に移った鎌倉時代以降は、関東・東海・東北・甲信越などの温泉地が文献上に登場。「伊豆の走り湯」として知られた静岡県の伊豆山温泉には、武士や高僧が訪れた記録が残っています。伊豆長岡の古奈温泉は源頼朝が通ったと伝わります。また、信越地方には武田信玄や真田幸村など戦国武将の「隠し湯」と呼ばれる温泉地も。
鎌倉時代中期の高僧・一遍上人が、大分県・豊後の鉄輪(かんなわ)を訪れて温泉を開き、病の人々を湯治したとも。鉄輪温泉は大分最大の温泉郷である別府温泉郷のひとつですね。鎌倉、室町、南北朝時代には、武士が疲れた体や傷を癒やしたり、高僧や歌人などが温泉地を訪れました。平安時代初期に中国から真言密教の教えをもたらした弘法大師空海にも、各地に開湯伝説がありますよ。
■江戸時代の庶民と温泉
徳川家康が政権をとって血生臭い戦乱の世が終わり、庶民生活の文化レベルも格段に上がった江戸時代。全国に置かれた藩の大名が湯治したと伝わる温泉地も各地に存在するようになります。熱海や伊東など江戸近隣の温泉地からは、「御汲湯(おくみゆ)」と称された温泉が江戸城へ運ばれ、沸かして将軍の入浴に使用されたりも。
また、平和な世の到来や街道が整備されたことで、温泉は武士や一部の富裕層だけのものではなく、庶民の一大レジャーとして広まります。庶民の移動には制限があったとはいえ、公に認められやすい「病気やけがの治療」という名目で、行楽を兼ねた湯治旅行が大流行したのです。
「温泉の日」に知っておきたい豆知識|温泉マークの意味や世界の温泉事情も紹介】
■東の草津、西の有馬
江戸時代、温泉人気の高まりとともに、相撲の番付表をまねて全国の温泉地を格付けした「温泉番付」なるものも複数登場。東の大関に群馬県の草津温泉などが、西の大関に兵庫県の有馬温泉などがランクインし、旅のガイドブックとしても楽しまれました。
■温泉マークの意味
江戸時代初期の万治4(1661)年、付近の農民の土地争いに決着を付けるための評決文が江戸幕府から出された際、添付図に磯部温泉の位置を記した記号がふたつ描かれていました。泉源の湯壺と立ち上る湯けむりを組み合わせて記号にしたもので、これが私たちがよく知る「温泉マーク」の最古であるとされ、磯部温泉は温泉記号発祥の地といわれています。
中央が長く両脇が短い3本の湯気は、左から「入浴前に体ならしとしてかけ湯する」「じっくり入浴してしっかり温まる」「湯冷めしないようさっと上がって仕上げる」意味だという説もあるようです。
現在でもこの温泉マークは使用されていて、温泉法で定められている温泉や鉱泉を表示しています。
■世界の温泉事情
我が国では古代から利用してきましたが、ヨーロッパやアジア諸国でも古くから病気やけがを治すために温泉が使われています。日本で温泉が一般的に広まったのは、湯治というよりむしろ、温かい湯につかってリラックスすることを目的としたから。ところがフランスなど、ヨーロッパの一部の国では温泉は医学であり、飲用も重要視されてきました。また、レジャーや社交場としての役割も大きく、日本とは捉え方が異なります。
例えば、漫画『テルマエ・ロマエ』で古代の入浴事情を知ることになったイタリア。ヨーロッパ随一の地熱地帯であり、温泉文化が根付いている国ですね。イタリアの温泉[Terme(テルメ)]には古代ローマ時代から続く公衆浴場文化があり、さらに近代的なスパリゾートや自然景観が融合している点が大きな魅力。大自然を感じながら無料で利用できる野天風呂から、古代建築を活用したラグジュアリーなスパホテルまで、スタイルは多彩です。
フランスの温泉[Thermalisme(テルマリズム)]は、医師の処方に基づいて行う医療・健康増進のための「ハイドロセラピー(水療法)」として発展したんですよ。現在でも、認定された温泉療養施設で行われるこの温泉療法が医療制度の一部として位置づけられていて、一般的なスパやリラクゼーション利用とは区別されています。
■秀吉は大の温泉好き
豊臣秀吉は大の温泉好きとして知られています。戦の傷や疲れを癒やす「湯治」と、権力や風流を示す「社交・政治」の双方で温泉を活用したといわれています。
賤ヶ岳の戦いの直後や、嫡男・鶴松を失った傷心を癒やすためなど、幾度となく訪れています。戦乱や大地震で荒廃した有馬温泉を手厚く保護・整備して町を復興させただけでなく、自分のための温泉リゾート施設「湯山御殿(ゆのやまごてん)」まで建設。また、小田原征伐では箱根温泉をいわゆる“リゾート化”し、茶人を招いたりもしています。有馬には秀吉ゆかりの「湯山御殿」の遺構が残されています。
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地域によってはすっかり秋の気配という、9月9日の「温泉の日」。暑いとつい“風呂キャン界隈”になってしまうという人も、そろそろ湯船につかってリラックスしたくなる時期ですね。温泉雑学に触れたら、温泉に入りたくなった人もいるのでは? 突然、温泉旅館に行くのは無理でも、日帰り温泉施設なら…? 温泉を使用している銭湯が近所にあったらラッキー? 今夜は入浴剤でも入れて、ぬるめのお湯でゆっくり温まるとしましょうか。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『デジタル大辞泉プラス』(小学館)/環境省( https://www.env.go.jp/nature/onsen/outline/index.html )/一般社団法人日本温泉協会( https://www.spa.or.jp/ )日本秘湯を守る会( https://www.hitou.or.jp/static/spa_guide_howto_bathe )/安中市( https://www.city.annaka.lg.jp/page/2045.html )/国土地理院( https://www.gsi.go.jp/KIDS/map-sign-tizukigou-2022-onsen.htm ) :

















