【目次】

【「下水道の日」とは?9月10日の「由来」と「目的」「歴史」を解説】

■「下水道の日」とは?

「下水道の日」は9月10日です。下水道の役割や重要性について理解を深めてもらい、下水道の普及と十分な活用を促すことを目的として、当時の建設省、厚生省、日本下水道協会の前身団体が協議して「全国下水道促進デー」が始められました。現在は、国土交通省をはじめ、地方公共団体や関係機関などが、この日を中心にさまざまな広報活動やイベントを行っています。

■なぜ「9月10日」?「二百二十日」との関係

「下水道の日」が9月10日とされた背景には、下水道の役割のひとつである「雨水の排除」があります。例年この時期は、立春から数えて220日目にあたり、雑節のひとつ「二百二十日(にひゃくはつか)」です。古くから、農作業の目安となる暦として「二百十日(にひゃくとおか)」と共に用いられてきました。

「二百十日」は、台風などの風雨が農作物に被害をもたらしやすい時期として警戒されてきた日です。国土交通省は、「下水道の日」の日付について、台風シーズンである「二百十日」を過ぎた「二百二十日」が、雨水を排除する下水道の役割を考える時期としてふさわしいことから、9月10日に定めたとしています。

ただし、実際の台風来襲の時期はその年ごとにさまざまです。「二百二十日=台風が最も多い日」という意味ではなく、台風への警戒を促す暦の目安として覚えておくといいですね。「下水道の日」の9月10日は、こうした日本の伝統的な暦と、雨水による浸水を防ぐという下水道の役割を結びつけて定められた日なのです。

■「全国下水道促進デー」から「下水道の日」へ

「下水道の日」の前身は、「全国下水道促進デー」です。1961(昭和36)年、当時の建設省・厚生省・日本下水道協会の前身団体が協議し、全国的に下水道の普及を促すために「全国下水道促進デー」を制定しました。当時、日本の下水道整備は大きく遅れており、下水道の必要性を国民に広く知ってもらい、整備を促進することが主な目的でした。

その後、2001(平成13)年に名称を「下水道の日」に変更。これは、2000(平成12)年に旧下水道法の制定から100年を迎えたことや、2001年が21世紀の始まりにあたること、下水道に対する社会の認識が高まってきたことなどを背景に、より親しみやすい名称とするためでした。現在の「下水道の日」は、私たちの暮らしを支える下水道の役割を知り、その重要性を考える機会となっています。


【「下水道」とは? 暮らしを支える「仕組み」と「役割」を解説】

■そもそも「下水道」とは?「仕組み」を知りたい

「下水道」とは、家庭や工場、事業所などから出る汚水や、雨水などを集めて排除するための施設の総称です。下水を集める管路だけでなく、中継ポンプ場や下水処理場なども含まれます。

私たちが家庭で使った水は、台所や風呂、洗濯、トイレなどから排水されます。こうした汚水を下水道管に集め、下水処理場へ運び、処理したうえで河川や海などの公共用水域へ放流するのが、「下水道」の基本的な仕組みです。また、下水道には汚水だけでなく、雨水を排除する役割もあります。日本では、汚水と雨水を同じ管で運ぶ「合流式」と、それぞれ別の管で運ぶ「分流式」の2種類があります。

■「下水道」にはどんな「役割」がある?

下水道には、大きく分けて「水質保全」「浸水防止」「生活環境の改善」という3つの役割があります。

「水質保全」
家庭や工場などから出る汚水をそのまま河川や海に流すと、水質汚濁の原因になります。下水処理場で汚水を処理してから放流することで、公共用水域の水質を守ります。

「浸水防止」
下水道には、雨水を速やかに排除する機能があります。特に都市部では、舗装された道路や建物が多く、雨水が地面に浸透しにくいため、大雨の際に水がたまりやすくなります。雨水を下水道などで排除することで、浸水被害を防ぐ役割を果たしています。

「生活環境の改善」
汚水が住宅地などに滞留すると、悪臭が発生したり、ハエや蚊などの発生源になったりすることがあります。下水道によって汚水を速やかに排除し、さらに処理することで、衛生的で快適な生活環境を支えています。

このほか、下水道による汚水の排除と処理は、コレラや赤痢などの消化器系感染症の予防にもつながるなど、公衆衛生を守る役割も担っています。


【「汚水」はどうやってきれいになる?「下水処理場」の「仕組み」を解説】

処理方法は施設によって異なりますが、ここでは広く採用されている「標準活性汚泥法」を例に、代表的な処理の流れを見ていきましょう。

家庭や工場などから出た汚水は、下水道管を通って「下水処理場」へ運ばれます。下水処理場では、いくつもの工程を経て、汚れを取り除いていきます。

1)大きなごみや砂を取り除く

最初に「沈砂池」などで、下水に混じっている大きなごみや石、砂などを取り除きます。

2)沈みやすい汚れを沈める

次に「最初沈殿池」へ。水をゆっくり流し、細かなごみや泥など、沈みやすいものを底に沈めて取り除きます。

3)微生物に汚れを分解してもらう

ここが下水処理の大きなポイントです。「反応タンク」に微生物の集まりである「活性汚泥」を入れ、空気を送り込みます。微生物が汚水に含まれる有機物などを取り込み、汚れを分解します。

4)微生物と水を分ける

「最終沈殿池」で、汚れを取り込んだ活性汚泥を沈め、きれいになった水と分離します。沈んだ活性汚泥の一部は、再び反応タンクで利用されます。

5)消毒して川や海へ

最後に水を消毒します。こうして処理された水は、必要な基準を満たしたうえで、川や海などの公共用水域へ放流されます。

このように、下水処理場では「ごみを取り除く」「微生物に汚れを分解してもらう」「水と汚泥を分ける」「消毒する」という工程を重ねて、汚水をきれいな水にしているのです。


【「下水道」と「浄化槽」の「違い」とは?「処理方法」や「管理方法」を比較】

「下水道」と「浄化槽」は、どちらも家庭などから出る汚水をきれいにするための仕組みですが、大きな違いは「どこで処理するか」にあります。

■下水道は「まとめて」処理する

下水道では、家庭や事業所から出た汚水を下水道管で集め、地域の下水処理場へ運びます。多くの家庭の汚水を1か所に集めて処理する「集合処理」が基本です。

■浄化槽は「家の近く」で処理する

浄化槽は、主に住宅や施設の敷地内またはその近くに設置し、各家庭や施設などから出る汚水を地域内で処理する、分散型の汚水処理施設です。

■管理の方法も違う

下水道の場合、利用者が自宅の下水道管や処理場を管理するわけではなく、自治体などの下水道管理者が施設を維持・管理します。浄化槽については、浄化槽管理者に保守点検、清掃、法定検査が求められます。

つまり、「下水道につなぐ」のと「浄化槽を設置する」のでは、汚水をきれいにするという目的は同じでも、処理する場所や維持管理の方法が異なります。これはどちらが優れているという単純な違いではありません。人口密度や地形、住宅の分布など、地域の実情に応じて適した汚水処理の方法が選ばれています。


【「下水道」に流してはいけないものは?「油」「薬品」「水に溶けないもの」に注意】

下水道は、家庭から出るさまざまな排水を受け入れてくれますが、何でも流してよいわけではありません。下水道管を詰まらせたり、傷めたり、下水処理場の働きを妨げたりするものについては、「流してはいけないもの」とされています。

■油を流さない

天ぷら油やサラダ油などを排水口に流すと、冷えて固まり、排水管や下水道管に付着して詰まりの原因になります。使い終わった油は、新聞紙や古い布などに吸わせるなど、自治体のルールに従って処分しましょう。

■水に溶けないものを流さない

ティッシュペーパー、野菜くず、食べ残し、ビニール片、割りばしなど、水に溶けにくいものを流すのもNGです。排水管や下水道管に引っかかり、詰まりを起こす原因になります。

■薬品などを流さない

ガソリン、灯油、農薬、強い酸やアルカリなどを流すと、下水道管や処理施設を傷めたり、処理を担う微生物に悪影響を与えたりするおそれがあります。火災や有毒ガス発生の危険もあるため、不要になった薬品などは、排水口には流さず、製品の表示や自治体のルールに従って処分しましょう。

■熱湯にも注意!

熱湯をそのまま流すと、排水管の材質によっては変形する可能性があります。熱い料理の湯やゆで汁などは、冷ましてから流すようにしましょう。

「これくらいなら大丈夫」と思って流したものが、詰まりや下水処理のトラブルにつながることもあるのですね!


【「下水道の日」に知っておきたい「豆知識」】

■「マンホール」の「デザイン」に込められた意味とは?

道路を歩いていると目に入る「マンホールの蓋」は、全国どこでも同じデザインというわけではありません。地域の名所や名産品、キャラクターなどを描いた「デザインマンホール」が各地にあります。そのため、足元にあるマンホールの蓋を見れば、その土地の魅力がわかることも。国土交通省も、マンホールの蓋を「まちの顔」として紹介しています。

■「マンホールカード」って知ってる?

デザインマンホールの人気をさらに高めているのが「マンホールカード」です。地域のデザインマンホールをカードにしたもので、下水道広報プラットフォーム(GKP)が企画・監修しています。2025年7月に配布が始まった第26弾までに、マンホールカードは累計1,189種、参加する自治体・団体は750に達しています。

カードを集めるために各地を訪れる人もいるそうで、下水道を身近に感じてもらうだけでなく、地域の観光にもつながっています。

■下水道マンホールの蓋の「役割」とは?

下水道のマンホールの蓋は、地下にある下水道管などを点検・清掃するための出入口をふさぐものです。普段は何気なく歩いている道路の下にも、汚水や雨水を運ぶ下水道管が張り巡らされています。

■下水から「電気」がつくれるってホント?

下水処理の過程で出る「下水汚泥」からバイオガスを取り出し、発電などに利用する取り組みがあります。下水道は「汚れた水をきれいにするだけ」ではなく、エネルギーを生み出す場所にもなっているのです。

■「下水汚泥」から「肥料」もできる?

下水処理で生じる汚泥には窒素やリンなどの栄養分が含まれています。国土交通省では、重金属などの成分を確認し、安全性と品質を確保しながら、下水汚泥資源の肥料利用を拡大する取り組みを進めています。

■江戸時代にも「下水」のリサイクルはあった?

江戸では人の排泄物を「下肥」として農家が買い取り、肥料として利用する循環が成立していました。つまり、現代の下水道や下水汚泥の肥料利用とは仕組みが違いますが、「人の暮らしから出るものを資源として循環させる」という考え方自体は、江戸時代にもあったのですね!

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私たちが毎日何気なく使い、流している水。その多くは下水道を通り、下水処理場へと運ばれます。

「下水道」が汚水をきれいにするだけでなく、エネルギーや肥料などの資源を生み出す役割も担っているとは、ちょっと意外なトリビアでした。「下水道用マンホールの下に、暮らしを支える施設が広がっている」と考えてみると、いつも通る道にある見慣れたマンホールも、少し違って見えてくるような気がしませんか?

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /国土交通省「9月10日『下水道の日』」(https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_000689.html?utm_source=chatgpt.com) /国土交通省「上下水道」(https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply_sewerage/index.html) /国土交通省 近畿地方整備局「下水道」(https://www.kkr.mlit.go.jp/river/gesui/sikumi.html?utm_source=chatgpt.com) /公益財団法人日本下水道協会「下水道について」(https://www.jswa.jp/sewage/) /環境省「浄化槽サイト」(https://www.env.go.jp/recycle/jokaso/?utm_source=chatgpt.com) /環境省「よりよい水環境のための浄化槽の自己管理マニュアル」(https://www.env.go.jp/recycle/jokaso/manual/maintenance/jokaso_manual.pdf?utm_source=chatgpt.com) /環境省「令和7年度末の汚水処理人口普及状況について」(https://www.env.go.jp/press/press_05421.html?utm_source=chatgpt.com) /国土交通省「下水道と化学物質」(https://www.mlit.go.jp/common/000149572.pdf?utm_source=chatgpt.com) /国土交通省Grasp「トリ・アングル INTERVIEW」(https://www.magazine.mlit.go.jp/interview/vol44-a-1/?utm_source=chatgpt.com) :