ビジネスにおいて第一印象は非常に重要。仕事を通じて、日々さまざまな人との出会いがありますが、初対面で「この人、何だか感じが悪いな」とマイナスイメージを持たれると、それが尾を引いて大切なビジネスチャンスを台無しにするおそれも……。

しかも厄介なことに、自分では「よかれ」と思っての言動が、逆に相手の心象を害してしまうこともあるようなのです! もしかするとあなたも、知らず知らずのうちに第一印象で大損しているかもしれません。

そこで今回は、池坊短期大学教授で『新社会人のためのビジネスマナー講座』の著者である寿マリコさんから、初対面の人と話すときのNGマナーについてお話をうかがいました。

初対面の相手と会話するときのNGマナー8選

■1:相手の容姿を褒める

人間関係を円滑にするうえで、相手を褒めることは重要だといわれます。とはいえ、初対面で相手の容姿を褒めることは、基本的には避けたほうがいいでしょう。

たとえば、「スマートでスタイルがいいですね」など、お世辞ではなく本心からの褒め言葉であっても、相手が自分の体型を痩せすぎだとコンプレックスを抱いていたり、そもそも容姿で評価されることを潔しとしていなかったりすれば、失礼に当たりかねません。

同様に、「芸能人の●●さんに似ていますね」というのも、言った側は褒めるつもりだったとしても、相手にとっては心外というおそれもあります。とくに、まだ気心が知れない間柄のうちは、自分目線ではなく、相手がどう感じるかに十分配慮して、褒め言葉を選ぶようにしましょう。

■2:「それお高いんでしょ?」と相手の持ち物の値踏みをする

褒めるつもりが逆効果のおそれも
褒めるつもりが逆効果のおそれも

「素敵なネクタイですね」など、相手の持ち物を褒めること自体は悪くはありません。ただ、相手の経済力やセンスに賛辞を送るつもりであっても、初対面で「それお高いんでしょ?」「おいくらくらいするんですか?」など値踏みするような質問をするのはNG!

もちろん、人によっては高級品を所持しているのを「褒められたい」という人もいます。しかし、初対面で相手のパーソナリティーを把握していないうちに、むやみにお金に関連することを話題にするのは、考えもの。品性を疑われるリスクのほうが高いので、控えるようにしましょう。

■3:血液型を質問する

血液型の質問はNG
血液型の質問はNG

初対面の人と話すときに、政治や宗教の話題、そして「ご結婚はされていますか?」「お子さんは?」などプライベートな質問は避けるべし、というのはよく知られているルール。これは実践できている人が多いことでしょう。

このほか、初対面で避けたほうがいい話題や質問として「血液型ネタ」が挙げられます。日本人は血液型占いが大好きだとよくいわれますが、「A型といえばこんな性格」などの安易なレッテル貼りに辟易している人も、少なくないからです。

相手に関心を持つのはよいことですが、「血液型は何型ですか?」は、初対面ではNG質問だと心得ましょう。

■4:聞き取りづらい声で発話する

小さい声でボソボソ話すと、自信のない印象を与えてしまいます。また、滑舌が悪かったり、声がこもっていたりして聞き取りづらいと、相手に余計なストレスを負わせることになりかねません。

「声で印象を悪くする要素としては、声が小さい、声の印象が暗い、滑舌が悪い、きつい口調などが考えられますが、これらは面と向かって指摘してくれる人もあまりいませんし、自分ではなかなか気づきにくいものです。
ただ、日頃から誰かと会話しているときに“今、何て?”とよく聞き返される人は、声の印象がよくない可能性があります。適度なボリュームでハキハキと話すようにしましょう。

また、声がこもるのは、口の開き方や姿勢に原因があることも多いです。発話の際に口をしっかり開き、姿勢を正すことで、声の印象が改善することもあるでしょう」(寿さん)

アナウンサーのような美声とはいわなくても、ちょっとした心がけで声の印象をUPさせましょう。

■5:「声のトーン」と「顔の表情」が合っていない

声のトーンと顔の表情が合っていないと……
声のトーンと顔の表情が合っていないと……

楽しい話題では、心持ち高めの声で明るいトーン。謝罪の場面や葬儀の席では、低く落ち着いたトーン。このように、声のトーンは常に一定ではなく、臨機応変に使い分けることも大切です。

それとともに気をつけなければいけないのは顔の表情。たとえば、おめでたい席で明るいトーンの声で話しているのに、表情が冴えなければ、相手に違和感や不信感を与えかねません。

「表情も自分ではわからないので、要注意です。とりわけ普段、表情筋をあまり使っていない人の場合、本人に悪気はなくても、相手から見ると表情がかたくて『何か不愉快なのだろうか?』『こちらに失礼でもあったのでは?』と心配をかけるおそれがあります」(寿さん)

会話中に相手からどのように見られているのかは、自分ではチェックできないので、知らず知らずのうちにネガティブな印象を与えてしまっては大変ですよね。無理につくり笑いをするのではなく、自然な笑みを浮かべられるように、日頃から口角を上げるトレーニングなどで表情筋を鍛えましょう。

■6:語尾が間延びする

大人のキャリア女性たるもの、第一印象から知的に見られたいですよね。それとは正反対のイメージを持たれてしまう話し方の特徴は、語尾を無駄に伸ばすこと!

「私はぁ~」や「それでぇ~」など、語尾に抑揚をつけて伸ばすと、幼稚な印象で品格が感じられません。語尾の一音を歯切れよく発音するように心がけましょう。

■7:相手の目を凝視する

見つめすぎるのは考えもの
見つめすぎるのは考えもの

相手と親密になりたい場合は、コミュニケーションをとりながら、視線を合わせることが大切だとよくいわれますよね。とはいえ、アイコンタクトをとろうとするあまり、相手の目を凝視するのはNG。「親密になりたい」というメッセージではなく、威圧感を与えてしまいます。

「もちろん、相手のほうをまったく見なかったり、キョロキョロと視線が泳いだりするのも失礼に当たりますので、アイコンタクトは大切です。ただ、相手の目を直接じっと見るのではなく、相手の目元から鎖骨のあたりに、やわらかい目線を送るようにしましょう」(寿さん)

目に力を入れすぎるのもよくないのですね。笑顔のトレーニングとともに、相手にさりげない視線を送る練習も、普段から積み重ねておきましょう。

■8:相手の話にオーバーリアクションする

リアクションはほどほどに
リアクションはほどほどに

初対面での会話では、相手に自分の話がどのように伝わっているのか、不安になることも往々にしてありますよね。そうした不安を感じさせないためには、適度な相槌で「あなたの話に関心があります」というメッセージを伝えることが欠かせません。

「ただ、相手への関心を示さなくては、と気遣うあまり、オーバーリアクションになってしまうのは好ましくありません。大げさな反応は、逆にマイナスのイメージとなりますので注意しましょう」(寿さん)

たとえば、相槌を連発したり、ちょっとした世間話に対して”世紀の大発見”のように大声で感嘆したりしては、芝居がかっているように見えて、不信感を持たれてしまうかもしれませんね。相手への気遣いのつもりが、過剰反応につながっていないか一度、自身を振り返ってみましょう。

冒頭でも述べた通り、ビジネスにおいても第一印象は非常に大切。今回ご紹介したNGマナーを改善して、これから出会う人々と、よりよい関係を築いていきましょう。

寿 マリコさん
池坊短期大学教授
(ことぶき まりこ)日本女子大学大学院人間社会研究科修了。大学卒業後、銀行勤務を経て渡仏。´Ecole de Maquillage CHRISTIAN CHAUVEAUに留学。身だしなみや所作などの、外見印象をはじめとするノンバーバルコミュニケーションに着目し、研究や実践活動に取り組んでいる。池坊短期大学では、サービスマナー演習などのキャリア関連講座等を担当、企業や官庁関連機関ではマナー講座や就労支援講座などを行っている。著書に『新社会人のためのビジネスマナー講座』(ミネルヴァ書房)がある。
この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美
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