戦後アヴァンギャルドなのに1983年生まれ?架空の画家ユアサヱボシに注目!

現代美術家・ユアサエボシは、今を生きる現代人。しかし、描く作品は戦後の前衛絵画です。なぜならユアサは「大正生まれの架空の三流画家 ユアサヱボシ」だから。え? どういうこと? そのユニークなコンセプトの向こうに、何が見えてくるのか。展覧会の見どころについて、美術ライターの浦島茂世さんにご紹介いただきました。

浦島茂世さん
美術ライター・All About「美術館」ガイド
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【今月のオススメ】『ユアサエボシと戦後アヴァンギャルドの変身寓話集』

今回の展覧会に合わせて制作された新作。戦禍による荒廃を感じさせる背景のなか、鞭を持ったガスマスク姿の騎手と、王冠をかぶったドラゴンが描かれる。口から火を吹くトグロを巻いた蛇は、おもちゃのようにも見える。

展覧会_1
ユアサエボシ《傀儡(くぐつ)の王》 2026年 アクリル・キャンバス 作家蔵

1983年生まれのユアサエボシというアーティストの成り立ちは、かなりユニークです。彼は大学で経済を学び、金融系の会社に就職するもそこが半年で倒産。無職になったことを契機に「画家になる」と決め、美術の専門学校で基礎だけを学んで、あとは独学。

注目を集めたのは、’17年に発表した、150枚の瓦に米兵の顔を描いた《GHQ PORTRAITS》という作品でした。この制作中に彼は、「もし自分が戦後に生きていたら、こういう作品を描いていたかもしれない」と考え、「進駐軍に似顔絵を売って日銭を稼ぐ三流画家・ユアサヱボシ」という設定を思いつきます。そこから、自分が描いた絵をヱボシの作品として、その架空のプロフィールに追加していくようになりました。

ちょっと複雑なのですが、「架空のヱボシになりきって描く」のではなく、「描きたいものを描いてから、ヱボシの画業を後づけでつくっていく」ところがミソです。そこには、単純なリバイバルやオマージュにありがちな「要するにこんな感じでしょ?」のような粗は見当たりません。

こうなると、その作品を、1950年代あたりに活躍した戦後アヴァンギャルドの画家たちの作品と並べて鑑賞してみたくなります。「ユアサエボシと戦後アヴァンギャルドの変身寓話集」展では、ユアサエボシによる現代作品と、戦後美術を同時に展示。ユアサエボシの作品をとおして、ユアサヱボシが生きた時代の美術を鑑賞し、現代の目でとらえ直す…うん、やっぱり複雑ですね(笑)。過去と現在を行き来するような、奇妙な展覧会になりそう。(談)

<Information>『ユアサエボシと戦後アヴァンギャルドの変身寓話集』

古い雑誌や新聞、インターネットから集めたイメージを組み合わせて絵画を制作している現代美術家・ユアサエボシ。同時に彼は、戦後を生きた架空の物故画家「ユアサヱボシ」を創作し生涯の物語を発表、更新を続けている。この展覧会では、新作を含むユアサの作品と、戦後の日本でアヴァンギャルド芸術を志した池田龍雄、高山良策、中村宏らの作品を、「変身」をキーワードに紹介する。

会場/練馬区立美術館
会期/開催中〜2026年12月27日(日)

問い合わせ先

練馬区立美術館

TEL:03-3577-1821

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EDIT :
剣持亜弥
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