『風と共に去りぬ』の スカーレットは、自分らしさを貫く現代的な女性です

アメリカ人作家マーガレット・ミッチェルが1936年に発表した長編小説『風と共に去りぬ』。南北戦争を物語のきっかけとし、戦中戦後の混乱のなかで強く生き抜いた女性スカーレット・オハラの一代記を、林真理子さんが新たな小説として書き始めました。時代に翻弄されるのではなく、変化する時代と共に成長していくスカーレット。変わることを恐れず、けれど自分を貫き通す女性。この魅力的なスカーレットを通し、現代女性の生き方についてお話をうかがいました。

林 真理子さん
作家
(はやし まりこ)1954年、山梨県生まれ。コピーライター時代の’82年に発表したエッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』が、デビュー作にしてベストセラーに。’86年『最終便に間に合えば/京都まで』で、第94回直木賞を受賞。以降、数々の文学賞を受賞。現代女性の仕事、生活、性もリアルに描く小説から、時代もの、エッセイまで、衝撃のデビューから35年、筆を休めることなく執筆活動を続けている。近著に、NHK大河ドラマの原作小説『西郷どん!』など。 

13歳の少女を虜にした、強く美しい女性の一代記

林真理子さん

—私はいわゆる美人、というのではない。けれどもいったん私に夢中になると、男の人たちはそんなことにまるで気づかなくなる。そしてたいていの男の人たちは私に夢中になるから、私はこの郡いちばんの美人ということになっている—

こんな出だしで始まる林真理子さんの新しい小説『私はスカーレット』。原作の『風と共に去りぬ』は、アメリカ南部の大農園の娘であるスカーレット・オハラが体験した激動の15年間を描いた、長い長い物語です。

「中学2年のときにたまたま図書館で借りたんです。本のオビに、南北戦争中にふたりの夫を…みたいな、つまらないキャッチコピーがあったのを覚えています。おもしろくなさそうだなって思いながら読み始めたのに、ふた晩くらい徹夜して一気に読んでしまいました。そのあとすぐ映画も観たのですが、私の心に刺さりすぎてしまって。映画館の中で本当に泣けました。物語に感動して…ではなく、こんなドラマティックな世界があるのに、なんで私は山梨の田舎に生まれたんだろうと(笑)。私はスカーレットだ、って空想しながら寝ても、起きると節だらけの天井が目に入って現実に戻される。私は平凡な女の子としてこんな田舎で暮らすんだわって思ったら、また泣けてくるんです。なんで私はスカーレットじゃないんだろう、あの時代に生まれてこなかったんだろうという想いが、ずっとありました」

中学生だった林さんに、「生まれ変われるのならスカーレットのあの時代に…」とまで思わせたという『風と共に去りぬ』。何が多感な少女の心をそこまでとらえたのでしょう。

「こんなおもしろい小説、今の人はなんで読まないのかしらって思います。『風と共に去りぬ』には、秀逸な小説の要素がすべて詰まっているんです。見事な男女の三角関係に、没落と成功。女性の一大長編ドラマ、大河ドラマですよね。私たちが好きなエレガントなシーンも、素晴らしい自然描写もある。白いモスリンのドレスを着た少女が美男子に囲まれて、マグノリア(注:木蓮)が咲く円柱付きの白亜らの邸宅でって、もうこれだけで心をつかまれませんか? 少女漫画の世界、そのままですよね。そこに、お転婆でちょっとドジな女の子を、かわいいなぁとか言いながら笑って見守る素敵な大人の男性が登場するんですから(笑)」

確かに、『キャンディ・キャンディ』も『はいからさんが通る』も『ガラスの仮面』も…みんなそうでした!

自分を貫くために戦う、その強い姿勢も女性の美しさ

©三浦憲治

「日本人の女性は、戦後この物語に出合って魅了され、昭和のあいだ脈々と読み継がれ、スカーレットという女性を愛した。小説としておもしろかっただけでなく、こういう女性になりたいと強く刺激されたのだと思います。今は、Preciousの読者の皆さんのようにちゃんと自立して、恋をして、結婚して、子供をもち、出世もしたい、趣味もおしゃれもと、頑張ってスカーレットのような女性になれる。だからこういう物語に感動し、憧れなくなったのでしょうか」

一瞬にしてすべてを奪う“戦争”を背景にした『風と共に去りぬ』。理不尽な運命に立ち向かい、決してあきらめず、人生を切り開いていくスカーレット。環境は大きく違いますが、社会の中で戦いながら自己実現していくこの女性は、現代の日本を生きる私たちにとっても十分魅力的なはずです。

原作『風と共に去りぬ』はこんな作品です

  • 『風と共に去りぬ』の1シーン ©Collection Christophel/アフロ
  • 『風と共に去りぬ』の1シーン ©Collection Christophel/アフロ
  • 著者のマーガレット・ミッチェル ©Everett Collection/アフロ

ジョージア州アトランタの大農園タラに生まれたスカーレット・オハラの激動の半生を綴った、マーガレット・ミッチェルの小説『風と共に去りぬ』。1936年に発表後、瞬く間にベストセラーとなり、翌年ピューリッツァ賞を受賞。1940年にはビビアン・リーとクラーク・ゲーブル主演で映画化され、アカデミー賞で9部門を受賞。日本でもストレートプレイやミュージカルとして、1966年から何度も舞台化されている。

インタビューの続きは、7月6日(金)発売の「Precious8月号」で読めます。林真理子さんが本連載にかける意気込みを、さらに詳しく語っています。

 

<出典>
Precious8月号「洗練モノトーン」特集号
【内容紹介】ミラノ&N.Y.のマダムスナップ/涼感ジャケット/大人ベーシックレッスン/夏の太眉で若返る/バカンスコスメ/杏さんin浴衣/期間別大人の夏休みプラン
2018年7月6日発売 ¥850(税込)

文芸誌『きらら』で林真理子さんの『私はスカーレット』の連載が始まりました!

『qui-la-la きらら』
小学館発行 毎月20日発売 年間購読¥2,000(税・送料込み)
恋愛小説から時代小説まで、女性向きの作品をそろえる月刊文芸誌『きらら』(小学館刊)。同誌6月号(5月20日発売)で連載が開始された林真理子さんの『私はスカーレット』は、マーガレット・ミッチェルの大ベストセラー『風と共に去りぬ』を原作に、主人公スカーレット・オハラの一人称という新たな手法と視点で描く超釈小説。
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PHOTO :
三浦憲治
EDIT :
小竹智子
RECONSTRUCT :
難波寛彦