「お客様用に、お菓子を買ってきて」「来月の懇親会のお店を予約しといてくれる?」など、職場で後輩などにちょっとしたお使いを頼む機会は少なくないはず。
その際、相手が自分の想定外のものを買ってきてしまい、仰天したことはありませんか? 「なんでこんなものを!?」「まったく最近の若い子は……」という言葉は、ぐっとこらえて。相手があなたの期待に沿う行動を取れなかったのは、決して相手のせいではありません。あなたの指示の仕方に問題があったと心得るべきなのです!
そこで、あなたが相手にダメ出ししたり、言葉には出さずともあからさまに不機嫌な態度を取ったりすれば、あなたのほうこそ職場での評価を落としかねません。今回は、印象力アップトレーナーの柳沼佐千子さんから、買い出しや注文をお願いするときに、やってはいけないNG行動について教わりました。
買い出しや注文のお願いで「やってはいけないNG行動」6選
■1:「何でもいいから」「適当に」などと相手の自由裁量に任せる
冒頭でもお伝えした通り、お使いを頼んだ相手が、想定外のものを買ってきてしまうのは、指示の出し方に問題があったせいです。NGな指示の典型例は、「なんでもいい」「適当に」などの、あいまいな表現。このような指示は、文字面では、相手の自由裁量に委ねるものですが、実際には「なんでもいい」はずもなく、きわめて”不自由”な指示なのです。
実際には、いいか悪いかの判定は、指示を出した側の常識や主観によりますので、依頼した相手に「『なんでも』ってどういうことだろう」「『適当』と言われても……」と考え込ませてしまいます。
「あいまいな指示は、相手にものすごくプレッシャーをかけるものだといえます。たとえば、『どこでもいいから、懇親会のお店を予約しといて』などと指示を出したケースで考えてみましょう。人は他者の評価を気にしますので、『どこでも』と言われても、好き放題に選べず、過去にはどんなお店で懇親会を開催していたのかなど、いろいろリサーチしなければなりません。
そんなふうに後輩に手間を取らせるくらいなら、指示の段階で、参加人数や予算、お店の雰囲気はラグジュアリーなのかカジュアルなのか?、立地はどのあたりかなど、ある程度、要望を具体的に出したほうがよいかと思います。
あわせて、『取引先の部長はタバコを嫌うから、完全禁煙のお店にしてほしい』など、禁止事項があれば伝えておくといいでしょう」(柳沼さん)
“なんでも”と同様、“適当に”という表現も、何をもって適当なのかは人の主観ごとにバラバラです。指示を受けた側に「それってどういうこと?」と忖度させるような、あいまいな指示は控えましょう。
■2:「お茶買ってきて」など抽象的な指示を出す
“なんでも”や“適当に”ほど広範な表現ではなく、もう少し範囲を絞った指示であっても、相手にちゃんと伝わっているとは限りません。
たとえば、「近所のコンビニで500mlのペットボトルのお茶を5本、買ってきて」という指示。一見すると、買う場所、モノ、数量は出ているので問題ないようにも思えますが、これだけではまだ不十分。
「お茶と言ってもいろいろな種類がありますし、人によっては茶葉つながりで、紅茶まで含める人もいるでしょう。また、その5本というのが全部、違う種類もののほうがいいのか、それとも5本ともウーロン茶でもいいのかという点も、上記の指示だけでは伝わりません。
もちろん、本当にこだわりがなくて、後輩にすべておまかせするなら問題がないのですが、頭の中に少しでも『こういうものを買ってきてほしい』というイメージがあれば、できるだけ具体的に伝えたほうがよいでしょう。
たとえば、『ほうじ茶系と緑茶系を必ず混ぜてほしい』とか、逆に、『なるべく早く買ってきてほしいから、迷うくらいなら全部ウーロン茶で』とか、『もしウーロン茶が5本なければ、足りない分は●●茶にしてほしい』などですね。人に指示を出す際は、必ず“自分と相手の前提にはズレがある”ということを肝に銘じましょう」(柳沼さん)
お茶とは別の例を挙げると、カスタードプリンのつもりで「プリン買ってきて」と指示を出しても、相手はゴマプリンやカボチャプリンを買ってくるかもしれません。それくらい、自分と相手の前提にズレがあることを念頭に、指示を出す際は、相手とすり合わせを行うほうがいいでしょう。
■3:こだわりがない場合に「あなたの感性に任せるわ」とお願いする
すり合わせを行うほど重要なおつかいではなく、本当に「コンビニに売っているお茶なら、なんでもいい」というような場合もありますよね。そうした場合に、できれば避けたい表現のひとつが「あなたの感性に任せるわ」なのだそう。
「この言い方は、一見すると相手を信頼しているようですが、受け手には『センスの悪い人に見られたくない』と余計なプレッシャーを感じさせるおそれがあります。本当に何でもいい場合は、『あなたの感性に任せる』よりも『あなたの好きなものを買ってきて』のほうがおすすめです。
好き嫌いはいい悪いではなく、完全に各人の主観の世界。好きなものは好きで済む話ですから、この言い方なら、お使いする側が、気楽に選べるのではないでしょうか」(柳沼さん)
本当に相手にお任せしたいときのフレーズとして、「好きなものを買ってきて」をぜひ押さえておきましょう。
■4:大雑把な指示を出したのに、後から文句を言う
何度も繰り返しますが、あなたの指示を受けた相手が、予測の斜め上をいく珍行動を取ったとしても、それは相手ではなく、あなたの指示の出し方のほうに問題があったのです。ですから、相手の買ってきたものに「これじゃないのに……」と心の中で不満を覚えたとしても、絶対に態度に出してはなりません。「ありがとう」と笑顔で感謝を示すに尽きます。
自分の指示と相手のアウトプットが相違した際は、相手に責任転嫁するのではなく、「自分の伝え方のどこが足りなかったのか」を振り返ってみましょう。また、「好きなものを買ってきて」と指示しておきながら、「えっ、よりにもよってそれ!?」などと、否定的な反応をするのも言語同断。どんなに自分とは趣味が合わなくても、「こういうのが好きなのね」と、相手の好みを受け入れることが大切です。
■5:ギリギリの金額を渡す
「2,980円だから、これでお願いね」と3,000円を渡す。一見すると、特に問題ないようにも思えますが、ギリギリの金額を渡すのも避けたほうがいでしょう。郵便局で切手を買ったり、自販機で決まった商品を買ったりするのであれば、金額はほぼ一定でしょうが、買い物の種類によっては、金額が足りなくなるおそれがあります。
「たとえば、知らないうちに商品が値上げしていたり、セール期間中のつもりが終了していたりすると、ギリギリの金額では指定されたものが買えません。
その場合、立て替えてでも買ったほうがいいのか、予算内で別の商品を買ったほうがいいのか、別の安いお店を探したほうがいいのか、それとも、買わずに一旦帰社するべきなのか……。いろいろ選択肢があるので、お使いを頼まれた側を悩ませることになります。
不測の事態に備えて、『もし足りない場合は、こういうふうにしてほしい』と指示しておく。そして、大目の金額を渡しておく。この2つを意識すると、お互いの先入観によるトラブルを、未然に回避できることでしょう」(柳沼さん)
スムーズにお使いを遂行してもらうためには、自分と相手の前提のズレだけでなく、さまざまな状況の変化がありうることを念頭に置くとよいかもしれませんね。
■6:冴えない表情や声色で依頼する
“何を伝えるか”と同じくらいか、それ以上に大切なのは“どんな雰囲気で伝えるか”です。たとえば、「●●を買ってきて」と同じ依頼をするのでも、にっこり微笑みながらなのか、険しい表情や仏頂面なのかで、受け手の印象は大きく異なります。声のトーンも同様です。
表情や声に「これくらいやってくれて当然」という雰囲気がにじみ出ていると、指示を受ける側もやる気が起きるわけがありません。
「残念ながら、その人の感じがいいか悪いかというのは、本人が自覚していないことが少なくありません。大人になると、面と向かって『ちょっとあなたのその目つきが気に食わない』などと指摘してくれる人もいないので、本人は至って普通にしているつもりが、周囲にはとても感じが悪いように受け取られていることもあるのです。
普通のなかで、多くの人が陥ってしまいがちなのが、真顔であれば問題ないというもの。実は真顔は、自分が思っている顔と、人が感じ取っている顔とでは、かなり違うものなのです。ですから、自分で自分のことを『普通=そんなに感じ悪いはずない』などと思わずに、印象をアップさせるためのトレーニングを意識的に行いましょう。
たとえば、表情が硬くて感じが悪い人というのは、表情筋が鍛えられていないのです。鏡の前で何度も何度もトレーニングを繰り返して、いつでも一瞬で感じのいい笑顔を出せるように、表情筋に形状記憶させましょう」(柳沼さん)
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後輩などが、自分の思ったとおりに動いてくれない……。そんな悩みを抱えている人は、いつまでも相手に責任転嫁するばかりではなく、ぜひこの機会にお願い上手になるべく、自分の伝え方を振り返ってみましょう。ちょっとしたコツを取り入れて、お互い快適に過ごせるようにしたいですね。
印象エキスパート
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美