「本日中に報告しなきゃいけないのに、上司が何だかピリピリして話しかけづらい……」

不機嫌な人とはなるべく関わりを持ちたくないものですが、仕事上、そういうわけにいかないこともありますよね。こんなとき、あなたはどのように対応していますか?

万が一、地雷を踏もうものなら、その場で理不尽な怒りをぶつけられて嫌な思いをするだけでなく、「あいつはけしからん奴だ」などという悪印象が、後々まで尾を引くなんてことにもなりかねません。そこで、不機嫌な人に対してやってはいけないNG対応について、印象力アップトレーナーの柳沼佐千子さんから教わりました。

職場で「不機嫌な人」に対してやらない方がいい対応5選

■1:事前にメモを用意せず、いきなり突撃して話が長くなる

要点をメモしてから話しかけよう
要点をメモしてから話しかけよう

不機嫌な人と対応するための鉄則のひとつは、“なるべく手短に切り上げること”。不機嫌な人の地雷ポイントはどこに潜んでいるのかわからないので、滞在時間が長ければ長いほど、うっかり踏んでしまうリスクが高くなるのは必然だからです。

「不機嫌な人との接点を少なくするには、何か用件があるときにも、なるべく要点だけを事務的に伝えるのが大切です。そういう意味では、事前にメモを用意せず、いきなり話しかけるのは得策ではありません。話が長くならないように、伝えなければならない最低限のことをメモにまとめてから、臨むようにしましょう」(柳沼さん)

ぶっつけ本番で相手と対峙して、「えーと、あのー」としどろもどろになっては、ただでさえ不機嫌な相手を余計にイライラさせることにもなりかねません。一発で相手に伝えられるように、必ずメモを作成して伝えることの要点を整理しましょう。

■2:プロセスを長々と話す

長話は機嫌の悪さを増長させやすい
長話は機嫌の悪さを増長させやすい

これも手短に切り上げるためのコツですが、不機嫌な人と話すときは、ズバリ結論から話すこと。「まずAで、次にBになって……」というプロセスから話すと、いたずらに話が長くなってしまいます。

「結論はCです」とまずは簡潔に伝えましょう。それで相手が「わかった」と納得してくれれば御の字ですし、もし「何でCになったの?」と相手から質問があれば、そこで初めて1つ前のプロセスのBを説明すればいいのです。

「人の話し方には、結論タイプとプロセスタイプの2つがありますが、不機嫌な人への対応では、結論タイプがおすすめです。ちなみに、普段の生活においては、結論タイプとプロセスタイプのどちらがいいかは、状況によります。この2つにはそれぞれ個性があり、どちらが絶対的にいい悪いというものではありません。

ただ、自分や話す相手がどちらのタイプであるかは、常に意識しておくといいでしょう。自分と相手が同じタイプであれば話しやすいのですが、別のタイプと話す際は、相手に配慮することが大切だからです。

たとえば、結論タイプの人は、プロセスタイプの人が話している最中に、『で、結局はどうなったの?』などと話の腰を折らないように気をつけたいですし、逆に、プロセスタイプの人は、相手から結論を急かされたことに腹を立てるのではなく、『ああ、この人は結論タイプなのだな』と、相手の感覚を受け入れるとよいでしょう。

このように、自分と相手の話し方タイプを把握しておくことは、コミュニケーションを円滑にすることにつながります。職場で誰かが不機嫌になるのを予防する効果もあるでしょう。他方で、すでに不機嫌になっている人への対応としては、相手がどちらのタイプであっても、なるべく接点を少なくを最優先として、結論タイプでいくべきです」(柳沼さん)

あなたは結論タイプとプロセスタイプのどちら? もし、プロセスタイプであれば、特に、不機嫌な人と対応する際にはモードチェンジを強く意識しましょう。

■3:前置きをせず、いきなり話しかける

急に話しかけるのはNG
急に話しかけるのはNG

普段からも心がけたほうがよいことですが、とりわけ不機嫌な人に話しかける際には「今、お時間よろしいですか?」という前置きを欠かさないようにしましょう。これがあるのとないのとでは、相手の受ける印象が大きく変わるようです。

「人は誰しも、他者から押し付けられるのを嫌い、自分で選択することを望みます。この点、『今、お時間よろしいですか?』というのは、相手に選択権を与えるという行為なのです。いきなり『あの、●●さん……』などと話しかけると、相手は自分の話したいタイミングじゃないことに、イラッとくるかもしれません。

でも、『今、お時間よろしいですか?』があれば、YESかNOか自分が選択することになりますよね。ここで、『いいよ』と答えたら、自分が納得して話すのを選んだ、ということで、その後の会話において文句が出にくいのです」(柳沼さん)

「今、お時間よろしいですか?」は、相手のイライラを少しでも緩和するフレーズとして、ぜひ押さえておきましょう。

■4:会話中に否定的なフレーズを使う

「~ですが」「でも」「いや」は使わないで
「~ですが」「でも」「いや」は使わないで

平常モードであっても、相手から否定的な言い方をされると、イラッとくるもの。ましてや、不機嫌な人は、何気ないフレーズにも「自分を非難された」「口答えされた」と過剰反応するおそれがあるのでとくに注意が必要です。

「相手を否定するつもりがなくても、そうとらえられるおそれがあるNGフレーズがあります。『~ですが』『でも』『いや』の3つです。とくに、『いや』は、別に反対意見を述べるわけでもないのに、会話中に相槌的に使ってしまっている人がよくいます。

これは話し方のクセで、不機嫌な人の前でだけいくら気をつけても、ポロッと出てしまうことがあるので、ぜひ普段から使わないように心がけましょう」(柳沼さん)

逆に、意識的に使っていきたいOKフレーズは、「~ということですね」「そういう考え方もありますね」「勉強になりました」、そして「ありがとうございます」とのこと。不機嫌な人との会話は、これらのOKフレーズで乗り切りましょう。

■5:相手に共感してしまう

マイナスの感情は共感しないほうがいい
マイナスの感情は共感しないほうがいい

人とコミュニケーションをとるうえで、相手に共感するというのは大切なことだといわれます。しかし、不機嫌な人との応対に限っては、共感はNG! 不機嫌な相手に共感すると、自分がマイナスの感情の影響をもろに受けてしまうからです。共感しすぎる、空気を読みすぎる人は、相手の感情の影響を受けて疲れてしまいます。

「もちろん、うれしいとか楽しいなどの、プラスの感情はどんどん共感したほうがいいのですが、イライラなどのマイナスの感情まで引き受けてはいけません。そもそも相手が不機嫌だったりイライラしたりしているのは、その人の受け止め方の問題であって、あなたの責任ではありません。

目の前の人が怒っている、という事実を理性的に受け止めるだけにとどめて、共感はしないようにしましょう。相手の感情に引きずられないためには、自分の心の状態をしっかりチェックすることも大切です。イライラしている人に対応した後、3つの質問『今、気分がいいかな?』『楽しいかな?』『リラックスしているかな?』を自分に問いかけ、もしNOがあればトイレで気分転換を。

鏡に向かって、にこっとしてみましょう。気分は乗らなくても笑顔をつくれば、副交感神経のはたらきで気分も上がってきます。そうやってまずは自分をご機嫌にすることを心がけていれば、それがまわりにも伝染して職場全体の雰囲気がよくなり、いつかは不機嫌な人がいなくなる効果も期待できますよ!」(柳沼さん)

逆に、不機嫌な人の感情に共感してしまうと、ネガティブな感情がどんどん職場内に蔓延してしまうおそれがあるのですね。不機嫌な人に対しては、あくまでクール&事務的を通しましょう。

不機嫌な人に対して「自分のことを怒っていないかな?」とビクビクしながら接すると、自分の心がすり減るだけでなく、ネガティブな感情が増幅して、職場全体にマイナスな影響をもたらしかねません。ぜひ今回ご紹介したNG対応は回避して、職場がハッピーオーラに包まれるように心がけたいものですね。

柳沼佐千子さん
印象力アップトレーナー
(やぎぬま さちこ)子どもの頃から人間関係に悩み、「嫌われ続けの人生」を好転させるべく、海外生活、保険営業、事務員、ラジオパーソナリティ、テレビアナウンサーなどたくさんの職を経験し、さらに結婚、離婚を経て、二人の子どもを女手一つで育てながら起業するなど人生経験を積むかたわら、心理学、コミュニケーション法、脳科学などを20年以上研究。自らを実験台にして実践を繰り返し、独自に編み出した、誰でもできる、誰に対しても効く、好感度アップの手法「インプレッショントークメソッド」を企業へ提供している。著書に『空気を読まずに0.1秒で好かれる方法。』がある。
印象エキスパート
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
中田綾美