食事の仕方には育ちが出る……とよくいいますが、同じく食品を扱うという点で、調理の仕方にもその人の品性が現れます。あなたのキッチンでの所作は人に見られても大丈夫でしょうか?

もしも下品な振る舞いをしていたとしたら、自宅にお客様を招いたり、ホームパーティーを開いたりした際に、自分自身が知らないうちに恥をかくこともありますし、周りの人にも「ちょっとこの人の料理は食べたくない!」などと不快な思いをさせることにもなりかねません。

そこで、エレガントマナー講師の髙田将代さんから、料理をしているときにやりがちだけど実は下品に見える所作について教えていただきました。

下品な人だと思われる「料理中のNG所作」7選

■1:調理中に髪をさわる

調理中に髪をさわるのはNG
調理中に髪をさわるのはNG

調理をする、口に入れるものを扱うということは、何よりも清潔感のある身だしなみが欠かせません。なかでも、飲食店勤務でまず指導されるのは髪型ですが、ヘアスタイルではどのような点に注意すればよいのでしょうか?

「調理中には、髪の毛が料理に入らないように配慮が必要です。髪の毛が落ちそうな髪形は避けるべきでしょう。また、髪をかきあげる必要がないようにすることも大事です。

髪をかきあげるのは女性らしい仕草という見方もありますが、調理中にはNG。食材を扱う手で髪をさわることは不衛生だとして、周りの人に不快感を与える恐れがあります。

家庭での調理の場合、ロングヘアでも必ずしも束ねなくてよいかと思いますが、例えばハーフアップにするなど、髪が顔にかからないようにすっきりまとめましょう」(髙田さん)

肩につかない長さであっても、ショートボブのようなサイドにボリュームのある髪型の場合、調理中に髪が邪魔になる恐れがあるので、三角巾などでまとめたほうがよいかもしれませんね。

■2:エプロンで手を拭く

食材を扱う前後に必ず手を洗おう
食材を扱う前後に必ず手を洗おう

調理を始める前にまず手を洗うのは、マナー以前の常識ですよね。加えて、調理中にも食材を扱う前後などには面倒がらずにこまめに手を洗いましょう。

その際、手の汚れをさっと洗い流すだけで満足するのではなく、しっかりとタオルで手を拭かないと意味がありません。手に水気が残っている状態で調理に取りかかったり、あるいは、タオルではなくエプロンで手をゴシゴシ拭って済まそうとしたりすると、周りから白い目で見られる恐れが……。人前に限ったことはではありませんが、濡れた手はしっかりタオルで拭きましょう。

■3:お玉から直接味見をする

衛生面ではもうひとつ、味見の所作でその人の品性が現れてしまうようです。

「お玉から直接味見をするのは下品ですし、直接味見をしたお玉を鍋につけるのは不衛生。一旦、小皿にとって味見をしましょう。また、味見用のスプーンを使う場合にも、ちょっと気をつけたほうがいいことがあります。スプーンをぱくっと口に入れてしまうより、スプーンを唇にそっとあて、すっと口の中に流し込むようにして味見するほうがエレガントに見えるでしょう」(髙田さん)

人前でだけ気をつけても普段のクセが出てしまことがあるので、ひとりで調理しているときから、スマートな味見の仕方を心がけるとよいですね。

■4:大きな音をたてる

大げさな音はたてないで
大げさな音はたてないで

料理スキルの高い人の包丁音や鍋を振る音などは、耳にも心地がいいものですよね。ただ、こうした調理中に必然的に生じる音ではなく、過度に騒がしく音を立てる人は下品な印象を与えかねません。具体的にはどのような音がNGなのでしょうか?

「例えば、鍋などをテーブルにドンと置いたり、冷凍庫や冷蔵庫のドアをバタンと閉めたりする音です。職場でパソコンのキーを打つ音などもそうですが、過度に音を立てるのは、動作が雑な証拠ですし、いかにも“やってます感”を出しているようであまりよい印象を与えないと思います」(髙田さん)

例えば、泡立て器を力任せに使ってガシャガシャ音をたてるなどもこれにあたりそう。丁寧な動きはそれほど大きな音はたたないものです。調理中にどうしても音は出てしまいますが、不快に感じさせる音にならないよう器具や食材を丁寧に扱いましょう。

■5:物を持つときに指先がそろっていない

指先まで美しく
指先まで美しく

調理器具や食材を扱う際には、“むやみに音を立てない”という以外にも注意すべき点はあるのでしょうか?

「物を持つ際は、指先をそろえることを意識しましょう。指が広がった状態で持つと、掴んでいるように見えて、男っぽい仕草になります。

また、なるべく片手でものを扱うのではなく、軽いものや小さなものでも両手で持ったり、動作の際にもう一方の手を添えたりなど、できるだけ丁寧に扱いましょう。器やボウルなどを動かすときに、引きずらないようにすることも大切です」(髙田さん)

ワンランク上のエレガントな女性を目指すなら、調理中にも指先まで神経を行き渡らせるようにしましょう。

■6:正しいお箸使いができていない

調理中にも見られているお箸使い
調理中にも見られているお箸使い

調理中といえば、お箸使いもしっかり見られています!

「調理中に使う菜箸は、食事で使う通常の箸よりも長いので、箸使いがきちんとできているかどうかが現れやすいと思います。また、会話しながら調理していると、無意識のうちに箸先が人に向いて“指し箸”になってしまうこともあるので要注意です」(髙田さん)

調理は流れよく手際よく行う必要があるので、TPOにもよりますが、できれば会話する際には一旦、箸を置いたほうがよいかもしれませんね。

■7:ゴミや器具を広げっぱなしにする

キッチンをむやみに散らかさない
キッチンをむやみに散らかさない

調理中に出たゴミや使用済みの器具などはどのように扱うのがよいのでしょうか?

「使わない調理器具や調味料、食材、そして調理中に出たゴミなどは、できるだけ散らかさないように片付けながら調理を進めるほうがよいでしょう。最後に全部片付けるからそのままにしておいてよい、という考え方もあるかと思いますが、ゴミや器具を広げながら調理するとだらしがないように見えたり、段取りが悪いような印象を与えたりする恐れがあります」(髙田さん)

ゴミや使用済みの器具の扱いによって、日ごろの生活態度が見透かされてしまいそうですね。必要のないものやゴミはこまめに片付けて、すっきりしたスペースで調理に取り組みましょう。

日ごろ、自宅で調理する際には、「どうせ誰も見ていないから」「自分や家族だけが食べるものだから」と油断して、上記の下品な所作をやっている人も多いのでは? 人前でだけ気をつけても、うっかり普段の癖は出てしまうものなので、日常においてもエレガントな所作で調理することを心がけましょう。

髙田将代さん
エレガントマナー講師
(たかだ まさよ)小学1年生から茶道・華道を習い、着物着付け講師の資格も持つ。大学卒業後、伊藤忠商事に勤務。結婚出産を経て、女性としてのよりよい生き方を求め、グレース・ケリーやジャクリーン・オナシス等が卒業生である、NYに拠点をおく名門フィニッシングスクールにて学ぶ。現在は企業にて接遇マナー等の研修に携わりつつ、輝く女性をもっと増やしたいとの想いから、マナースクールL’embellir(ランベリー)を主宰。
公式ブログ
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
中田綾美