仕事でもプライベートでも使用する機会の多い「タクシー」。あなたは、きちんとマナーを守って利用できていますか?

誰かと一緒に利用する際は上座・下座に気をつける、運転手に横柄な態度をとらない、酔っていても車内で熟睡しない……などは、大人の女性であれば誰しも心がけていることでしょう。しかし、こうした当たり前のルールは守れている人でも、意外と見落としがちな「タクシー乗車のマナー」が、いろいろあるようなのです。

もしかすると、あなたも知らず知らずのうちに、タクシードライバーや周囲の人を困らせているかも……!?

当記事では、マナー講師の金森たかこさんから、タクシーに乗るときのNGマナーについて教わります。金森さんは、今回の取材に先立ち、タクシー会社に問い合わせて、現役ドライバーたちの声もヒアリングしたとのこと。はたして、運転手さんや周囲の人に迷惑になりかねないのは、どのような振る舞いなのでしょうか?

「タクシーに乗る」とき意外とやりがちなNGマナー8選

■1:交通量の多い交差点などでタクシーを拾う

踏切付近ではタクシーを止めないで

先日、プロ野球・阪神タイガースの選手たちがタクシー乗り場の降車専用のスペースからタクシーに乗ろうとして、球団側が謝罪するという騒動がありました。このケースはマナー以前の明らかなルール違反ですが、常識をわきまえている人でも、タクシーの乗車時についやってしまうマナー違反はあるのでしょうか?

「タクシー乗り場から乗るのではなく、流しのタクシーを拾う場合には、交通の妨げにならないかどうか注意しなければなりません。

典型例は、交通量の多い交差点。タクシー会社の方のお話によれば、交通量の多い交差点での急停車は危険を伴い、後続の車の迷惑にもなりやすいとのことです。交通量の多い交差点の場合、付近に正式なタクシー乗り場があることが多いので、そこまで移動したほうがいいでしょう。

また、意外と盲点なのは、踏切の前後。踏切の前後は道路交通法上、停止が禁じられているので、無理にタクシーを止めようとするのはNGです。少し離れたところに移動してタクシーを待ちましょう」(金森さん)

交通量が多い場所こそタクシーを拾いやすいとも思えますが、交通の妨げになってしまうおそれがあるのですね。面倒がらずに、正式なタクシー乗り場まで移動したほうが、トラブルなくスムーズに乗車できそうです。また、踏切付近では、たまたまタイミングよくタクシーが来ても、無理に止めないようにしましょう。

■2:先に待っている人の前方でタクシーを拾う

知らずに順番抜かしをやっていない?

タクシー乗り場ではきちんと列に並びマナーを守っている人でも、公道ではうっかり“順番抜かし”をやらかしてしまうことがあります。

タクシーを拾う際には、自分より前にタクシー待ちをしている人がいないか、必ず状況をよく確認しましょう。急いでいるからといって、タクシー待ちをしている人の前方に回りこんで、先にタクシーを止めてしまうなど、思いやりに欠けたマナー違反だといえます。

■3:上座・下座にこだわりすぎる

時と場合によっては助手席でもOK

タクシーの座席では、もっとも下座が助手席で、その次は後方座席の真ん中。その次は助手席の後ろで、もっとも上座は運転席の後ろ……というマナーはきちんと押さえている人が多いことでしょう。ただ、この上座、下座の順序は絶対的なルールではなく、敢えてはずしたほうが親切でマナーにかなっていることも。

「たとえば、足の不自由な方や、ミニスカートの女性、タイトスカートの女性、お着物姿の方などは、運転席の後ろよりも、助手席の後ろのほうが乗り降りがしやすく、ありがたいかもしれません。また、後方座席の真ん中は、助手席よりもかなり窮屈です。

自分自身が助手席に座るべき立場であっても、荷物の多い人が後方座席の真ん中に座りそうな場合には、『そちらでよろしいでしょうか?』と一声かけて相手の意向をうかがい、席を替わるほうがよい場合もあります。もちろん、座席を替わるだけで、立場まで変わるわけではないので、後方座席の真ん中から運転手さんに行き先の指示を出したり、運賃の支払いをしたりなど、本来の役割を果たすようにしましょう」(金森さん)

あまり座席位置にこだわりすぎず、その場の状況によって判断していきましょう。

■4:濡れた折りたたみ傘などを座席に置く

キャリーケースはなるべくトランクへ

タクシーに乗る際に、荷物のマナーで何か気をつけるべき点はあるでしょうか?

「キャリーケースをトランクに入れず車内に持ち込む場合は、座席には置かず、必ず床に置くようにしましょう。座席に置くと、キャスターで座席を汚してしまうおそれがあります。それから、よくありがちなのは、濡れた折りたたみ傘。これもうっかり座席に置くと、シートを濡らしてしまうので、足元に置くか、ビニール袋等に入れて保持するようにしましょう」(金森さん)

もし、マナー違反をやっていても、運転手さんのほうから「やめてください」とは言いづらいので、知らずに迷惑をかけてしまっているかもしれませんね。自分の後に乗る人のことも考えて、座席を汚したり濡らしたりしないように気をつけましょう。

■5:高齢のドライバーにスマホの地図を見せる

スマホの地図はわかりにくいと感じるドライバーも

ドライバーに行き先を告げる際に、やってしまいがちなマナー違反はあるでしょうか?

「自分のよく知っている場所や、メジャーなスポットであれば、行き先の伝え方でとくにトラブルになることはないかと思います。ただ、初めての行き先などで、自分にもドライバーにもなじみのない場所だと、少し注意が必要かもしれません。

ときどき、スマホの地図を運転手さんに見せて『ここへ行って』という方がいます。この方法は、わかりやすいという運転手さんもいらっしゃるようですが、高齢のドライバーの方では、スマホの小さい画面が見づらかったり、そもそもスマホの扱いに慣れていなかったりで、当惑されることもあるようです。

行き先の伝え方でもっとも確実なのは、住所を番地まで伝えること。今は、ナビが入っているので、住所を正確に伝えれば、ほぼまちがいなく目的地にたどりつくことができます。お店の場合、万が一、問い合わせする必要がある場合に備えて、電話番号まで控えておけば、より確実でしょう」(金森さん)

スマホの地図を見せるのは、一概にNGというわけではないとのことですが、マイナーなスポットでうまく説明できるか自信がない場合は、住所を口頭で伝えるようにしましょう。

■6:「とにかく急いで」とむやみにドライバーを急かす

急いでいても運転手への無茶ぶりはNG

タクシーを利用するのは、電車やバスでは間に合いそうにないと焦っているシチュエーションのことも多いのではないでしょうか? その際、「とにかく急いでください!」とむやみにドライバーを急かすのはNG!

「『とにかく』という言い方ではなく、『●時~分の新幹線に乗りたいのですが、東京駅に間に合うでしょうか?』や『15時開始の会議で、会場は~~なのですが……』のように、時刻と場所を具体的に伝えましょう。どの経路で行くのがもっとも早いのかは、プロであるドライバーさんが一番よくご存知です。

たとえば、同じ行き先であっても、どのルートで行くのが最短かはケースバイケース。時間帯によって道路の混雑状況が異なったり、あるいは、その日、工事している地点は迂回したほうがよかったりなど、ドライバーさんのほうが豊富な情報を持っているので、急いでいるときこそ、ドライバーさんに判断を任せるのをおすすめします。くれぐれも、運転手さんに向かって、交通ルールに反するような指示を出すのは控えましょう」(金森さん)

早く目的地に着きたいときは、ドライバーを急かすのではなく、彼らが最適な判断ができるように具体的な場所と時刻を伝えるようにしましょう。

■7:政治の話題をドライバーに振る

実は車内で禁句の話題とは?

車内での運転手さんとのコミュニケーションにおいて、やってはいけないことはあるのでしょうか?

「ドライバーの皆さんは、お客様に向かって、政党とプロ野球チームの話題は、自分たちからは振らないようにしているとのことです。逆に、乗客の側から、これらの話題を持ち出した場合、ドライバーの皆さんは、おそらくお客様にうまく合わそうとはしてくれるでしょう。

ただ、とりわけ政治の話題というのは、その人の内心や信条に深く関わることもあり、非常にセンシティブです。単に、景気がいい、悪いといった世間話にとどまらず、乗客が政治について立ち入った発言をすると、運転手さんも反応に困ってしまうかもしれません。車内では深刻にならない、軽いコミュニケーションを心がけましょう」(金森さん)

タクシーではラジオで政治ニュースが流れることもありますが、それについて思うことがあっても、わざわざ口には出さないほうがよいかもしれませんね。

■8:事前の予告なしに1万円札で支払う

近距離なのに高額紙幣で支払うのはアリorナシ?

最後に、支払い時のマナーについて。近距離なのに、1万円札で支払いをするのは、運転手さんにとって迷惑なのでしょうか?

「一概にそうとは言い切れません。ただ、近距離の利用で、財布のなかに1万円札しかない場合には、乗車して行き先を告げる時点で、『1万円札しか持ち合わせがないのですが……』と、ドライバーの方に一声かけておくのが親切でしょう。

というのも、最近では防犯の観点から、車内にあまり大金を置かないようにしているタクシーが多いそうなのです。このため、1,000円未満の料金に対して、1万円札で支払う乗客が続くと、お釣りに使う1,000円札が足りなくなるおそれもあります。支払いの時点で、それが発覚するのは、乗客とドライバー双方にとって、気分のいいものではありません。

乗車時に伝えておけば、もしお釣りが足りない場合でも、ドライバーさんがコンビニや銀行に立ち寄るなどして、不足分を補うことができますので、“1万円札での支払いがNG”ということではなく、事前の通知が大切だといえます」(金森さん)

急用などで、タクシーに飛び乗った際にも、なるべく早めに財布の中身を確認して、お釣りがたくさん出そうな場合は、運転手さんにその旨、伝えるようにしましょう。

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タクシードライバーと乗客の関係はまさに一期一会。お互いにちょっとした心配りで快適なひとときを過ごしたいですよね。今回ご紹介したマナー違反で、知らずにドライバーさんに迷惑をかけたり、不快な思いをさせたりしないようくれぐれも注意しましょう。

金森たかこさん
マナー講師・話し方マナーコミュニケーション講師
(かなもりたかこ)一般社団法人マナー教育推進協会代表理事副会長。ウイズ株式会社社長。officeT代表。大阪府出身、京都市在住。大手食品メーカー人事部にて人材育成・秘書業務などに携わった後、フリーアナウンサーとして独立。その後、マナーコンサルタント西出ひろ子氏に師事し、ビジネスマナー講師として、企業、行政機関、教育機関、病院・歯科医院などの医療機関にて、講演・研修・コンサルティングを行う。著書に『入社1年目ビジネスマナーの教科書』『入社1年目 人前であがらずに話す教科書』がある。
ウイズ株式会社
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
中田綾美
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