ビジネスシーンで、若い世代の方々と関わる機会は多いもの。そんなとき、感覚の違いを気にするあまり、接し方に戸惑うことはありませんか?

時代が変われば文化も変わり、自分にとっての当たり前が相手にとってはもってのほかなんていうこともしばしば。世代間ギャップを感じると、途端に話しづらくなりますよね。

アドリブトークの専門家である渡辺龍太さんによると、年下の相手とのコミュニケーションにおいてNGなのは頭ごなしに相手を否定することなのだそう。自分のことを話しやすい相手だと思ってもらうため、まずは相手の言動を肯定することを意識してみてはいかがでしょうか。

以下から、年下の相手との関係を深められる気配りの一言を紹介していきます。コミュニケーションの基本は相手への思いやり。誰もが自由に意見を言い合える空気をつくりましょう。

かなり年下の人とも楽に関係を深められる一言5選

■1:「(笑いながら)へー、そうなんだ!」

笑顔で相槌を打つとみるみる打ち解けられる!
笑顔で相槌を打つとみるみる打ち解けられる!

普段あまり表情が変わらない人と、喜怒哀楽の感情が素直に表に出る人だと、感情表現が豊かな人のほうが気軽に話しかけられますよね。対面でのコミュニケーションにおいて、表情は重要な要素のひとつ。

自分が相手に話しかけているとき、相槌を打ってくれたり笑顔で聞いてくれていたりすると、より打ち解けた話もしやすいものです。渡辺さんは、「人はお互いの情報をよく知るほど、打ち解けた関係になることができます」と言います。

「そうなるためには、お互いのことを楽しく話せる空気が不可欠です。年上の人がムスっとしているより、なるべく会話の最中に『あっはははは!』と笑いながら『へー、そうなんだ!』などと相槌を打ってあげれば、若手は圧倒的に話しやすく感じるはず。これにより会話がはずみ、お互いの情報をより共有できるようになります」(渡辺さん)

自分が年上という立場であるからこそ、年下の相手が委縮しないような空気づくりが第一歩。積極的に笑いつつ、話を聞く姿勢をはっきり示してあげることで、自然と相手も緊張を解いてくれるでしょう。

■2:「◯◯って、どういうことなの?」

積極的な質問は好印象につながる
積極的な質問は好印象につながる

話していて楽しい話題は人それぞれ。ですが、そこには大抵共通点があります。すなわち自分が詳しく知っている事柄に関する話題だということ。テレビや本、音楽など、大好きな趣味の話題を共有できる相手との会話は、得てして盛り上がるものですよね。

これはプライベートだけでなく、職場やビジネスシーンでも同じ。たとえ共通の趣味の話でなくても、自分の話を熱心に聞いてもらえると、話し手側も気分がよいものです。

「若手との距離を縮めるためには、自分(若手)が詳しいことについて語らせてみましょう。もし若手が、あなたの知らないことを語りだしたら『◯◯って、どういうことなの?』と積極的に質問してあげてください。そうすると、若手が先生のようなポジションになり、一時的に上下関係が入れ替わります。

相手の話題に興味をもって質問することで、常に年上が上で、年下が下という決まり切った上下関係を崩すのです。すると、若手にとって近づきがたい上司という人間関係ではなくなっていきます」(渡辺さん)

このとき忘れてはいけないのは、笑って相槌を打つこと。自分が知らないこと、興味のないことだからといって話題を変えるのではなく、教えて欲しい、もっと聞きたいという意志表示をしてあげましょう。そうすることで、相手から「話しかけやすい上司」と認識してもらえるはずです。

■3:「私もそれ苦手だったんだ。初めてにしては、よくやった方だよ!」

最初は誰でも失敗するものだと伝えよう
最初は誰でも失敗するものだと伝えよう

若手の部下や後輩が仕事でミスをしたとき、注意をしたら相手が機嫌を損ねてしまい、関係が悪くなってしまった経験はありませんか? 自分ではあまり厳しく叱ったつもりではなくても、相手はひどく落ち込んでしまうということも……。渡辺さんは、「最近の若手は失敗や挫折に弱い人が多いようです」と言います。

「そのため、仕事でちょっと失敗すると『自分はこの仕事に向いていないのでやめたほうがいいのではないか?』などと、過剰に自分を攻めがちです。そういうとき、若手に対して『落ち込んでる場合じゃない!』と叱ってはいけません。

その代わりに『私もそれ苦手だったんだ。初めてにしては、よくやった方だよ!』という言葉をかけてあげましょう。これを言うと、若手は仕事が上手くいかなかった原因が、自分の適正のせいではなく、経験不足にあると考えることができます」(渡辺さん)

仕事が思うようにいかず、悩んでいる若手は多いはずです。そういった悩みを抱えた部下に対して、能力や適性のなさを責めるのは、相手に追い打ちをかけるようなもの。部下が失敗をしたのなら、自分も最初はできなかったと優しく声をかけてフォローしてあげましょう。また、部下のほうから仕事の相談をしやすいような、日々の空気づくりも大切ですね。

■4:「これでお互い同じぐらいかな?」

会計時はフェアな関係を伝える言葉がベター
会計時はフェアな関係を伝える言葉がベター

組織に上下関係はあって当たり前。とはいえ、年長者と年少者にはそれぞれのマナーがあります。

飲み会の会計は年長者が払って当然という年少者の態度は問題ですし、ならば等分で割り勘かといえば、上司や先輩の立場からすると気が引けるところでもありますよね。「年下の人は『年上にやってもらうのが当たり前』と思っていたり、『年上に迷惑かけてばかりいる』と恐縮していたりしがちです」と渡辺さん。

「そういうときに、やんわりとフェアな関係を伝える言葉が『じゃあ、これでお互い同じぐらいかな?』です。例えば、飲み会の会費などで『あなたは3,000円で、私は課長だから5,000円。これでお互い同じぐらいの負担かな?』と言ってみましょう。

それだけで相手は、過剰に『上司に多く払ってもらって申し訳ない』と思わなくなります。また、上司(年長者)が全額奢ってくれて当たり前と思っているような若手に対しても、一般的に何がフェアとされているのかを教えることができるので、おすすめです」(渡辺さん)

上司と部下という上下関係の考え方は、世代や育ってきた環境によって異なります。ですが、お金の問題に限らず、自分たちの関係性ではこうするのがフェアだと示してあげるのは上司の役目。「こうするのが当然だ」と決めつけるのではなく、上記のセリフのように、やんわり提示することもポイントです。

■5:「私は◯◯ってやり方なんだ。あとは自分でアレンジしてみてね」

アレンジしやすいやり方を提案するとうまくいく
アレンジしやすいやり方を提案するとうまくいく

職場で部下や後輩に仕事を教えたりアドバイスをしたりする際、どのように指導していますか? 言ったとおりにやりなさい、と教えても従わない人はいませんか?

こうした指導中のやり取りも、年下の相手との関係に大きく影響します。渡辺さんは「仕事のアドバイスをするときに『こうしなきゃダメ!』と押し付けると、若手は鬱陶しいと感じることがある」と説明します。

「最近は若手のほうがスマホやタブレットなどを駆使した働き方をよく知っています。ですので、年上が『これがベスト!』というやり方を押し付けることが、本当にベストとは限りません。

そういうときには、自分のやり方を一例として『私は◯◯ってやり方なんだ』と紹介したうえで『あとは自分でアレンジしてみてね』と言ってみましょう。そうすると、若手にとっては、仕事に対する創意工夫の余地が残されたまま、アドバイスももらえるということになります」(渡辺さん)

もし職場の部下や後輩に、いくらやり方を教えても素直に指示を聞いてくれない、という人がいたら、一度言い方を変えてみるのはいかがでしょうか。実はほかにもっとよいやり方があるのかもしれません。相手から「こうすると効率がいいから」などという意見が出れば、自分や職場にとってプラスになることでしょう。

ちなみにトーク力を上げたいときは、タモリさんがいいお手本になるそうです。

「即興トーク力がずば抜けていると感じるのは、タモリさんです。昔、番組内でタモリさんがゲストの芸能人に『髪切った?』とよく言っていました。これは、人は自分自身について語るのが大好きという性質を利用した、トークのテクニックなのです。計算高い感じを一切見せず、感覚的にこれをやっているタモリさんの言葉には舌を巻きました」(渡辺さん)

まだ親しくない相手と話すとき、話題選びに困るという人は少なくありません。会話の糸口をつかむ上記のテクニックは、どんな人が相手でも応用可能です。

自分自身のことは自分が一番詳しいもの。そこで、まずは相手を観察して、ファッションや持ち物、家族などについて質問してみましょう。その中から相手の食いつきの良い話題がきっと見つかります。

会話において大切なのは、相手への気配り。年長者だからこそ出せる大人の余裕で、年下の相手に気持ちよく話をさせてあげれば、会話が弾み、人間関係もうまくいくはずです。本記事の一言を参考にして、年少者から親しまれる人になりましょう!

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渡辺龍太さん
アドリブトークの専門家
(わたなべ りょうた)欧米の即興トーク術「インプロ」の専門家として、ビジネスマン向けの会話力の指導やインプロに関する書籍を執筆。放送作家でもあり、テレビやラジオ、CMなどの構成のほか、新聞や雑誌への寄稿も行う。著書に『1秒で気のきいた一言が出るハリウッド流すごい会話術』(ダイヤモンド社)などがある。
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この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2018.10.23 更新
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WRITING :
上原 純