食べ方マナーはよくマナー本などで目にしますが、いざ外食中に出合う料理は、バラエティーに富んでおり、見た目も形も工夫されています。それゆえ、ちょっとフォーマルな席で「これ、どうやって食べればいいの?」と内心焦ることはありませんか?
そこで本シリーズでは、意外と知らない・人に聞けない食べ方マナーをお料理の種類別にお届けしています。今回は餃子やシュウマイ、春巻きなどの「点心」のそれぞれについて、きれいな食べ方マナーを、マナー講師・マナーコンサルタントの西出ひろ子さんに教えていただきました!
食べ方マナーの大前提!
まずは西出さんから、食べ方マナーを学ぶ前に知っておきたいことをお話いただきました。
「大前提として、そもそも食べ方は、絶対にこうしなければいけない、というものはありません。大切なマナーは、料理をつくってくださる方、運んでくださる方、食材などへの感謝の気持ちをもっていただくこと。
食べ方のマナーとしては、つくり手やお店が『こういう食べ方をしてほしい』というものがあれば、それを尊重すること。また、一緒に食べている人が不快にならない食べ方をすること。ただし、一緒に食べている人がどういうときに不快になるのかわからないこともありますから、基本は、男女などでその違いはあるかもしれませんが、その人の食べ方と同じようにして食べれば問題ないでしょう」
このことを踏まえて、餃子やシュウマイ、春巻きなどの点心について、それぞれ正当な食べ方マナーを教えていただきました。
餃子・春巻き・シュウマイなど「点心」の意外と知らない食べ方マナー
■1:焼き餃子
——ひと口で食べるべき? それとも箸で切ってふた口がいい?
「お皿に置かれている面を上にして、お箸で口に運びます。火傷しないように注意しながら、ひと口で食べることができるのであれば、ひと口で食べてOKです。それが難しい大きさであれば、ふた口で食べます。
箸で切ると中の具がでてきて、お皿が汚くなるのはもちろんのこと、皮を箸で切るのは、なかなか切れない場合がほとんどですから、口で噛み切るほうが、美しく食べることにつながります。噛み切った餃子は、お皿に戻しません。そのままお箸に持ったまま、ひと口目を食べ終たら、すぐにふた口目を食べます」
——醤油にどうやってつければいい?
「醤油は、その人のお好みでつけます。皮の先端に少量をつけ、こぼさないように口に運びます。特にふた口目の場合は、醤油が具のほうに流れ込む可能性があるため、つけすぎに注意しましょう。
こぼれる危険性のあるときには、取り皿や醤油皿を持って食べてOK。お皿を持つことに抵抗のある人は、懐紙を添えると上品です。懐紙も水分をはじいてくれる『りゅうさん紙』を中にはさんでおくとより安心です。間違っても手皿はしないように」
■2:水餃子
——ひと口で食べるべき? スープに浸っているものはどう食べればいいの?
「餃子の大きさにもよります。ひと口で食べられる大きさであれば、レンゲを小皿代わりとし、その上に餃子をのせ、お箸でひと口に食べます。ひと口で食べられない大きさの場合は、レンゲの上に餃子がのる大きさであればのせて、その上で、ひと口大にお箸で切り、口に運びます。水餃子は特に、中が熱々の場合があるので、口に運ぶときには、ゆっくりと熱さを確認して、火傷をしないように、注意してください。
もしも、レンゲにのらない大きなものであれば、お箸で切る箇所をレンゲの上にのせて切り、お箸で口に運びます。切った残りは、レンゲにのせてお箸で食べます。切った残りの具がスープの中に入ることもあります。スープは、利き手にレンゲを持ち変え、レンゲで食べます」
■3:揚げ春巻き
——ひと口噛むと皮がボロボロ落ちてきたなくなりがち…対処法は?
「本来は、お箸で持って、ひと口ずつ、噛んで食べます。しかし春巻きも、中が熱々で、口の中を火傷することがありますので、注意が必要です。そういう意味においては、一度、お皿の上で、ひと口大に切るほうが、火傷はしにくくなります。このとき、冷めてしまうと切れにくくなりますので、切るのであれば、熱いうちに切りましょう。切るのは、食べるひと口分ずつです。
お箸で切ると、お皿の上に皮がポロポロと落ちます。ときには、具もはみ出すことがあります。しかし、それは、仕方のないことです。お皿の上をきれいにしたい場合は、切った具の面に落ちた皮や具をつけて、一緒に食べます。
とはいっても、お箸できれいに切ることは難しいですし、切れない場合もありますから、噛み切る食べ方もマスターしましょう。噛み切ったときは、その残りをお皿に戻すことはしません。そのまま食べ切るまで、お箸に持って数口使って食べ切ります。皮が落ちるので、小皿を皮の受け皿として、お箸を持っていないほうの手に持ちます。
冷ますために少し時間をおくと、皮がしなるため、噛み切ったときに、皮がポロポロとこぼれることが少なくなります。好みの熱さでおいしく食べましょう」
■4:生春巻き
——手と箸どっちで食べればいいの?
「巻物系は、多くの具材を入れて、それらがこぼれないように、一緒に食べられるようにつくられています。また、手でもって気軽に食べられるようにもなっていますから、状況に応じて、手で食べても問題はないといえます。ただ、一般的に、お店でお箸があれば、それを使用して食べるほうが女性らしくエレガントです。
よって、食べ方もさまざまです。食べるときは、縦にして端からひと口ずつ、食べていきます。噛み切ったものは、お皿に戻さず、そのままふた口目、三口目と食べ進めるようにします。途中で飲み物を飲みたくなったときには、一度お皿に戻しても良いです。このとき、噛み切った側は、人様に見えないよう、自分向きに置くことがポイントです」
——タレの付け方にルールはあるの?
「タレをつけるときは、先端に適量をつけます。タレをひざの上にこぼさないように、頭の上から腰までをまっすぐにして、テーブルの上に上体がくるように腰から15度程度前傾させます。和食は、小皿を持っても良いですが、生春巻きは和食ではないので、持たないほうが正式といえます。
タレの付け方にも諸説あり、タレをスプーンですくってひと口分ずつかけていく、などともいわれています。しかしどれが正しいマナーだと一概に言えるものではなく、本場でも絶対にこうしなさいという食べ方の決まりはないというのが本当のところです。
避けたほうが良いことは、タレをつけすぎることです。食べ方のマナーで大事なことは、食材そのものの味を楽しむということにもあります。調味料をつけすぎず、その食べ物本来の良さを失なわず、食べ物と調味料双方を生かすよう、バランスよく調和させながら食べることがマナーといえます。マナーは、互いのウインとハッピーを創造するものですから」
■5:シュウマイ
——丸ごと食べるべき? 箸で切って食べるべき?
「熱々で出てきますので、口の中で火傷をしないように、一度、お箸で半分に切ってから食べると安心です。丸ごと食べて、熱くて口から出してしまうような事態にならないよう、気をつけましょう。
よほど大きなシュウマイは別として、一般的な大きさのものであれば、二等分にしたものをひと口ずつ食べます。口で噛み切らず、お箸で切ります。一般よりも大きなジャンボサイズの場合は、二等分にしたもののひとつを、ひと口大に左から切って食べます」
——蒸し器に入っているものはみんなで食べるの?
「蒸し器に入っているもので、共有して食べるときには、そのテーブルで一番目上の方が取ったら、順に取っていきます。自分の立ち位置を把握し、遠慮しないで取っていきましょう。あなたが取らないと次の人が取ることができずに、かえって迷惑をかけてしまいます。取ったものは、自分の取り皿の上に置き、そこで切ります」
■6:小籠包
——レンゲの使い方が分からない! また、猫舌だから熱い汁が出てくるのが苦手。
「この場合のレンゲは、小皿代わりとして使用します。利き手が右手の人は、レンゲを左手に持ち、小籠包をその上にのせます。レンゲの上で、小籠包を圧し、熱い汁をレンゲの上に流します。火傷をしないように、レンゲの上で少し冷ましてから食べると安心です。
レンゲに満たした汁は、レンゲを右手に持ち替え、先端を口に運び、流し込みながらいただきます」
■7:パオズ(包子)
——手で食べてもいいの? 何口くらいで食べるのがいい?
「手で食べてかまいません。その際の注意点としては、熱くて手を火傷しないように。食べ方は、大きさにもよりますが、まずは、半分に割ります。そして、一方をお皿の上に置き、持っている半分をさらに半分にして右手でいただきます。左手に残っているものをすぐに右手に持ち替えて、それも食べます。お皿に置いた半分も同様に食べます。
半分に割った段階で、その半分をひと口で食べられる大きさであれば、ひと口で食べたほうが、具がこぼれるリスクがなく、美しく食べることができます。大きいものは、さらに割っていくしかありません。かぶりついて食べるのは、女性らしさに欠けますので、おすすめしません」
それぞれのメニューによって、微妙に食べ方が違っていましたが、基本は冒頭で西出さんがお話されたように、そもそも食べ方は、絶対にこうしなければいけないというものはないということを念頭に置きましょう。
その上で、今回教えていただいたことをさりげなく実践することで、その場はきっと心地良い空気になるのではないでしょうか。もちろん、美味しくいただくことも忘れずに!
西出ひろ子さん
マナーコンサルタント・美道家
(にしで ひろこ)マナーは相手の立場にたつ「相手ファースト」という真心マナー®とおもてなし礼法®を伝える第一人者。和食、洋食などの食べ方のマナーの書籍やテレビ出演など多数。企業での人財育成やコンサルティングをはじめ、NHK大河ドラマや映画などで、多くの俳優や女優たちにマナー指導もおこなうマナー界のカリスマ。海外でも、プロトコル、エチケット、日本のマナーなどを指導している。その教えを学びにすでにマナー講師として活躍している人々などが世界中から訪れ、マナー講師の育成指導もおこなっている。近年は、マナー評論家・マナー解説者としてのメディア取材や出演依頼も多数。フリーアナウンサーの高橋真麻さん推薦『運を味方につけるプリンセスマナー』(河出書房新社)など、著書・監修本は国内外で80冊以上。
http://www.hirokomanner-group.com
この記事の執筆者
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