平均寿命がどんどん長くなっていくにつれて、健康寿命が注目されています。誰でも、いつまでも健康に長生きしたいと思うものですよね。

しかし、いくら体が元気だったとしても、脳が元気じゃないと健康的な生活には結びつきません。では、70歳を超えても脳の機能を維持、またはアップさせるにはどうしたらいいのでしょうか?

今回は精神科医の保坂 隆先生に、脳を老化させない習慣を朝夜に分けて5つずつ教えていただきました。まずは朝習慣から。以下の5つはどれも簡単に取り入れられるものばかり。早速チェックしていきましょう!

簡単にできて続けやすい「脳を老化させない朝習慣」5選

■1:早起きして布団の中で準備運動をする

早起きして布団の中で準備運動を。

「早起きは三文の徳」ということわざがあるほど、昔から早起きはいいことだとされています。そしてそれは脳にとっても同じこと。実際に昼間や夜よりも朝のほうが仕事の生産性も良くなるそう。「早寝早起きが、人間が本来持っている生活リズム」だと保坂先生は言います。

しかし、いくら早起きがいいといっても、起きてすぐに行動し始めるのはNGとのこと。起きたばかりの脳には酸素も栄養も不足しているそうです。では、どのように起きればいいのでしょうか?

「脳をフル回転するため、布団の中で行える簡単な準備体操を行ってください」(保坂先生)

教えていただいた準備運動はこちら。

(1)仰向けに寝たままの姿勢で腕を軽く伸ばし、10回ほど手首から先を振ります。
(2)寝たままの姿勢でゆっくり膝を立て、その状態で膝を大きくゆっくり回します。左回りと右回りを10回ずつやりましょう。
(3)ゆっくりと起き上がり、四つんばいになります。手足を布団に対し直角に立て、視線を前方上に向け、息を大きく吸いながら胸を前に突き出すようにして背中を反らします。
(4)四つんばいのまま息を吐きながら首を下げ、自分のおへそをのぞき込むように背中を丸めます。
(5)(3)に戻り、(4)と交互に5~6回繰り返します。
(6)四つんばいのまま背中を伸ばし、深呼吸をしながら首をゆっくり左右に大きく振ります。自分のお尻をのぞくようにしましょう。
(7)四つんばいのままできるだけ姿勢を低くし、全身の力を抜いて10秒ほどその姿勢を保ちます。

「この準備運動をすると血のめぐりが良くなり、脳に十分な酸素を送り込むことができます。準備運動にかかる時間は10分ぐらい。時間がない人は(1)(2)だけでも効果的です」(保坂先生)

いきなり起きるのではなく、布団の中で脳を活性化してから起きるようにするだけで早起きの徳はさらに広がります。

■2:朝食にバナナシェイクを飲む

最新の研究によると、脳がフル回転するのは食事をとってから2時間以上経過してからということがわかってきたそう。つまり、仕事や勉強に挑むときには、始業時間から逆算して2時間前までに朝食をとったほうが良いのです。

しかし、朝食を摂らない人も多く、その理由としては「朝が弱くて起きられないから」と回答する人が大半だとか。「朝食も摂らない状態で脳が効率よく動いてくれるわけがない」と保坂先生は言います。さらに、朝弱い人は、他の人よりも血中ブドウ糖濃度と体の体温がともに低いことが多いそう。

「低体温(35℃台)の人の原因のほとんどは生活習慣。体温が最も低くなるのは夜明け前とされており、体温が下がると血行の悪化、新陳代謝の低下、疲労回復の遅れなどの症状が出ます。食事を摂ると体温を上げてくれることにもつながります。

朝に少しでも早く脳を活性化させるためには、糖分と良質のタンパク質を摂取する必要があります。ちゃんとした朝食がどうしても摂る時間がない人にオススメなのはバナナです。バナナと、卵、牛乳、ハチミツを適量ずつミキサーに入れてつくったシェイクを飲む習慣をつけましょう」(保坂先生)

さらに朝食は便秘改善にもいいそう。

「人間の体は食物が体内に入ると腸の動きが活発になり、便意を催すようにできています。これを胃腸反射と言います。この胃腸反射は朝食後に最も強く起こることが知られています。便秘は脳にも悪影響を及ぼし、緊張や情緒不安など、脳もストレスを抱えた状態になってしまいます」(保坂先生)

朝食を摂るだけで低体温症予防になるなど、メリットは満載。簡単なシェイクをつくるだけなので、負担なく続けられますね。

■3:朝風呂(朝シャワー)で体温を上げる

朝風呂で体温を上げて、朝から活動的な脳に!

お風呂は夜入る方が多いですよね。しかし、脳の活性化させたいのであれば、朝風呂を習慣化させるといいそう。前述した通り、朝は体温が低く、血流も鈍くなっています。体温を手っ取り早く上げる方法として入浴はとても効果的なのです。

「朝風呂の温度は普段よりもぬるめに設定し、まずは2~3分腰まで浸かり、徐々に全身を湯に浸していきます。ゆっくり時間をかけて入浴することで全身の血流が良くなり、脳に大量の酸素とエネルギーが運ばれていくことになります。

朝はゆっくり浸かる時間がない人は、シャワーだけでも大丈夫です。シャワーは40℃くらいを、徐々に足から体、そして頭からというように順番に浴びてみてください。

ただし、ひとつ注意点が。朝風呂するとき、水や高温は絶対にNG! 水は体温をさらに下げてしまい、高温は寒い時期にはヒートショック(血圧や脈拍を大きく変動させ、脳梗塞や脳出血の原因になるもの)の危険につながるからです」(保坂先生)

お風呂の時間を朝に回すことで早寝早起きにもつながります。ゆっくり湯船に浸かる時間をできるだけつくって朝から脳をフル回転させましょう。

■4:新聞や雑誌の内容を音読する

読書が脳にいいことはみなさんには周知のことですよね。読書でも、読み方を工夫すると脳はさらに活性化してくれます。その読み方とは音読、つまり声に出して活字を読むことだそう。

「活字を目で追っていたはずなのに気づいたら内容が一切頭に入っていなかったということはありませんか? この状態は脳がサボっているということ。読書の効果を100%得るためには、音読が効果的なのです。

声に出して読むためには、漢字の読み方や文章全体がもつ意味、そして単語の正しいイントネーションなどを理解していなければいけません。さらに黙読の場合、情報は『目→脳』という一方通行ですが、音読をすると『目→脳→口(発声)→耳』という複数の感覚器官を使うため、活性化する脳の領域は広くなります」(保坂先生)

では、朝のどのタイミングがいいのでしょうか?

「朝、顔を洗って脳をシャキッとさせた後がベストでしょう。朝食については前後どちらでも構いません。時間は10~15分程度で十分です」(保坂先生)

15分以上続けると脳が疲労を起こし、かえって働きが鈍ってしまうそう。効率良く仕事へシフトできるように、音読の習慣をつけていきましょう。

■5:通勤中に寝ないようにする

通勤中の電車では寝ないように!

現代人は忙しい人が多く、通勤時の電車内にはよく居眠りをしている人が目につきます。しかし、脳を活性化させるためには眠ってしまってはダメなんだとか。その理由を保坂先生に聞くと、「朝風呂や朝食を摂って活性化した体や体内時計が居眠りによって乱れてしまうからです」とのこと。

しかし、起きようと頑張るために立っていても睡魔にはなかなか勝てませんよね。そこで保坂先生のオススメの脳の活性化につながる電車での過ごし方を伺いました。

「同じ車両に乗り合わせた人のプロファイルをしてみるといいでしょう。プロファイルとは、具体的な根拠に基づいて論理的に発想を広げていく作業のこと。『前の男性はスーツではなく、カジュアルなジャケットを着ているから堅い仕事ではない』というように、『〇〇だから、おそらく△△』というように考えてみるのです。プロファイルには観察力と想像力が必要なので、眠気など簡単に吹き飛ばすことができますよ」(保坂先生)

また、4つ目の項目で出た読書はどうでしょうか?

「読書では、小説やハウツウもののように簡単に読めるものがオススメです」(保坂先生)

少しの睡眠で頭がスッキリすることもありますが、朝の時間はNGとのこと。通勤時間を有効活用するには、気軽に取り組めることがよさそうですね。

朝は忙しいもの。しかし毎朝30分早起きするだけで脳は大きく活性化されます。保坂先生によると、「『これを続けていると呆けないぞ』とか『若返るぞ』などと自己暗示をかけると、脳がそれを信じてくれるんですよ」とのこと。

上記の習慣を少しずつでも意識して実践することで、脳だけでなく体質にもうれしい変化が表れるでしょう。いつまでも若々しく元気な脳でいるために、明日の朝からぜひ始めてみてください。

保坂 隆さん
精神科医
(ほさか たかし)慶應義塾大学医学部を卒業後、同大学の精神神経科に入局。東海大学医学部教授、聖路加国際病院精神腫瘍科部長などを経て、現在は保坂サイコオンコロジー・クリニック院長、聖路加国際病院・診療教育アドバイザーとして活躍している。多くの著者がり、『1日1分!生涯現役の脳をつくる方法』(三笠書房)が発売中。
保坂サイコオンコロジー・クリニック
この記事の執筆者
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WRITING :
藤野綾子