正統の系譜、銀座サバティーニが復活!

新しいサバティーニは、以前の旧ソニービルから数寄屋橋の交差点を渡ればすぐ。窓からは有楽町の夜景も見える

1914年に創業したフィレンツェ本店はミシュラン・イタリア版初年度にあたる1957年度版から掲載されており1970年代には2つ星にまで上り詰めたことがある。

イタリアに3つ星が誕生したのは1986年度版のマルケージが史上初だから、その当時2つ星といえばイタリア最高峰。フィレンツェのサバティーニはヴェネツィアのハリーズバーや、ミラノのサヴィーニらと並んでイタリアで最も格式の高いレストランであり、ポール・ニューマンやアラン・ドロン、ニクソン大統領、マドンナやスティングなども訪れたことがある。

サバティーニが銀座にOPENしたのは、東京イタリア料理ブームに先駆けること遥か昔の1981年。以来フランス料理からイタリア料理へと銀座の勢力図が変遷してゆく様子を見続けてきた貴重な生き証人でもある。

フィレンツェ本店と変わりないサービスを提供

温前菜の「フィレンツェ風トリッパ(右)と白インゲン豆のトマト煮込み、ランプレドットと黒キャベツのインズィミーノ(左)」
こちらが名物の「サバティーニ風スパゲッティ」トマトベースのシンプルなパスタは食べ飽きない。これはコースなのでポーションは少なめ
イタリアの秋の味覚、白トリュフをふんだんに使った「白トリュフのリゾット」はこの時期の定番

リニューアルOPEN直後に訪れた銀座サバティーニはフィレンツェ本店と変わらない重厚な空気感と、時間を感じさせる威厳が漂っていた。

前菜は熟成させたホンマグロにボッタルガとキャビア、ゆずのヴィネグレットソースのカルパッチョ。続いて登場したのはトスカーナ色を強く打ち出した温かい前菜「フィレンツェ風トリッパと白インゲン豆のトマト煮込み、ランプレドットと黒キャベツのインズィミーノ」(¥3,000)だった。

これはいうまでもなくフィレンツェの冬を感じさせる内臓料理だが、あくまでも軽く仕上げてある。本家同様、銀座サバティーニでも伝統のゲリドンサービスは引き継がれており、名物である「サバティーニ風スパゲッティ」(¥3,000)は開店以来のスタッフでもある79歳の超ベテラン・イタリア人サービスマン、プリモ・トンバ氏自らが仕上げてくれる。

これはパンチェッタ、タマネギ、パッサート・ディ・ポモドーロ、バジリコ、パルミジャーノ、唐辛子、最後に卵黄を加えてマンテカーレして仕上げるトスカーナでいうアッラ・ルスティカ「田舎風」のクラシックなパスタ。

トンバ氏が鮮やかな手つきでパスタをさばく様を見ていると、銀座イタリア料理史を直に目撃しているような気分になる。

味わいはというと本店よりはややライトな印象だがやはりサバティーニ本店の伝統をしっかりと踏襲し継承している。

「白トリュフのリゾット」「和牛サーロインのソテーとペポーゾ」のあと、最後のドルチェでトンバ氏が再度登場。やはりゲリドンサービスの「クレープシュゼット」(2名で¥4,000)では、コアントローとオレンジの酸味で爽やかに料理を締めくくってくれた。

オープニング以来の超ベテラン、プリモ・トンバ氏(左)とヴィルジリオ・バルディ・シェフ(右)

この夜は会えなかったが、銀座サバティーニでは創業以来のシェフ、ヴィルジリオ・バルディ氏が昔と変わらず現役で厨房に立つ。

銀座イタリアの料理史をよく知る2人の超ベテランの料理とサービスは、一朝一夕では身につけられないリストランテの伝統そのものである。

老舗好き、伝統好き、温故知新のイタリア料理を嗜好するものにとっては、復活した銀座サバティーニはイタリアの格式高い老舗料理店で食事しているかのような、そんな心地よい気分を味あわせてくれるはずだ。

この記事の執筆者
1998年よりフィレンツェ在住、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。旅、料理、ワインの取材、撮影を多く手がけ「シチリア美食の王国へ」「ローマ美食散歩」「フィレンツェ美食散歩」など著書多数。イタリアで行われた「ジロトンノ」「クスクスフェスタ」などの国際イタリア料理コンテストで日本人として初めて審査員を務める。2017年5月、日本におけるイタリア食文化発展に貢献した「レポーター・デル・グスト賞」受賞。イタリアを味わうWEBマガジン「サポリタ」主宰。2017年11月には「世界一のレストラン、オステリア・フランチェスカーナ」を刊行。