おせち料理のなかでも、「お煮しめ」を手づくりするという方は多いのでは? 定番の煮物料理のひとつなので、他のおせち料理よりはつくりやすいところがありますが、ちょっとした調味料の種類や加減で、家庭によって味や食感が変わります。
「お煮しめ」をつくろうとした場合、どんなことがポイントになるのでしょうか。おうち和食研究家で野菜ソムリエプロの井上憲子さんに、最高においしい「お煮しめ」の条件を伺いました。
「お煮しめ」が縁起の良い料理とされる理由
お煮しめは、煮汁がなくまるまで「煮しめる」という意味の煮物料理のひとつであり、おせち料理のひとつに数えられます。山や海の幸などの旬に獲れた食材を集めて、ひとつの鍋で煮ることから、一族が仲良く、末永く繁栄するようにという願いが込められているといわれます。
おせち料理のお煮しめは、普段の煮物とどのような違いがあるのでしょうか。
「お煮しめで使う具材自体は、根菜を中心とした普段の煮物とさほど変わらないと思いますが、それぞれに縁起の良い意味合いを持たせるのが特徴です。
例えば、れんこんは穴が開いていることから『将来の見通しが利くように』、里芋の仲間である八つ頭は『人の上(頭)に立てるように』という具合です。また武具に見立てたものも多く、干し椎茸の含め煮は“黒い漆塗りの陣笠”に形が似ているところから『陣笠しいたけ』、こんにゃくの煮物は切り方を変えて“馬を御する手綱”になぞらえ『手綱こんにゃく』と呼ばれます」
最高においしい「お煮しめ」の5つの条件
縁起の良い「お煮しめ」は、ぜひ普段の煮物よりも力を入れておいしくつくりたいものです。そこで、最高においしい「お煮しめ」をつくるために必要な条件を5つ、井上さんに挙げていただきました。
■1:具材にしっかりと味が染みている
「お煮しめは、煮汁を“煮しめる”お料理。しっかりと煮汁を染み込ませて、味が感じられることが一番の条件といえます」
■2:具材の食感が活きている
「やわらかすぎず、かたすぎず、それぞれの具材にちょうど具合の食感というものがあります。それらの食感が生きていることは、おいしいお煮しめの重要な条件といえます」
■3:煮崩れしていない
「梅の花の型に抜く『ねじり梅』にしたニンジン、里芋などは煮崩れやすい具材です。美しい形はお祝いの席ではとても大切といえます」
■4:きれいにムラなく醤油の色に煮上がっている
「見た目の点では、色合いも大切です。ムラがなく、濃すぎず、薄すぎず、醤油のきれいな色合いが出ていると美しいですね。地方やご家庭によっては淡口しょうゆを使い、薄付きになるようにして、食材の色を生かすこともあります」
■5:飾り切りや彩りなどが美しい
「ニンジンのねじり梅や絹さやで彩りよく盛られていると、よりおいしく感じると思います」
最高においしい「お煮しめ」をつくる5つのポイント
お煮しめをつくるには、すべての材料を切り、たけのこやこんにゃくは下ゆでなどをしたあとで、だし汁、酒、砂糖、醤油、みりんなどの調味料と共に、すべての具材を鍋に入れて煮る、というのが一般的な方法です。
この工程のなかで、次の5つを押さえてつくると、最高においしい「お煮しめ」の条件を満たした出来栄えになると井上さんは話します。ぜひ実践してみましょう!
■1:具材の大きさを均一に切りそろえる
「それぞれの具材を切るときに、大きさをそろえることで、火通りも均一になります。これにより、味の染み加減や食感がそれぞれちょうどいい具合にすることができます」
■2:アクは丁寧に取り除く
「煮ている途中で出るアクは、できるだけ丁寧に取り除くことがとても大切です。すっきりとした味に仕上がります」
■3:調味の順番は砂糖から
「醤油を先に加えてしまうと、甘みを含みにくくなります。醤油は必ず、砂糖より後に入れるのがコツです。すべての調味料を合わせた出汁で煮含めるという方法もあります」
■4:落としぶたを使う
「落としぶたを使うと、煮汁が対流し、効率よく煮ることができます。また具材が鍋の中で踊るのも防ぐことができるので、煮崩れ防止にもつながります。煮しめのよくある失敗例として、火通りが心配で、煮ている最中に鍋の中を混ぜすぎて、具材が煮崩れてしまうということがあります。落としぶたをすれば、かきまぜる必要もなく、煮崩れの心配も少なくなります」
■5:火加減に注意する
「火が強すぎても、具材が踊ってしまい、煮崩れの原因になります。常に火加減には気を配りましょう」
最高においしい「お煮しめ」の条件を知り、つくり方のコツを知った今、おせち料理に「お煮しめ」をつくる準備はできました。ぜひ材料をそろえて、丁寧に気を配りながら、見た目も味も食感も最高の「お煮しめ」をつくり、大切な家族の健康と幸せを願いながらみんなでいただきましょう。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 石原亜香利